(第5章)闇の森の神(後編)

(第5章)闇の森の神

―(8月19日『木曜日』例の実験2日目)―

中国の上海海洋研究所の控室ではまたX星人と中国人が話し合っていた。
X星人の高新一は
「どうだ!!例の実験は進んでいるか?」
楊国花は
「はい!!順調に進んでいます!!」
と答えた。
高新一は
「それは良かった!G塩基の研究も少しつだが進んでいる。
我々は地球に住むゴジラを始め、モスラも20世紀末までM塩基で支配していた
。しかし21世紀に入ってから何故か不思議な事にモスラゴジラはM塩基で支
配できなくなったのだ!!しかも最近ではラドンも同じ様にM塩基での支配が不
可能になっている。
我々はその原因を調査する為、2年前に『例の甲殻類』とゴジラの戦いを、ス
パイ機で観察していた。それで何と言えばいいのか?我々の科学では理解できな
い事が起った。そして私は興味を持った。だから君達と交渉しにX星からはるば
る地球に来た訳だがどうかね?」
すると張強は
「CIA『アメリカ中央情報局』のデータベースをハッキングして手に入れた
G塩基に関する情報があります!!」
と言うとカバンから数枚のCD-Rとフロッピーの入ったカバンを開けてテーブ
ルに置いた。
そして張強は
「この情報をあなたがたに渡しますから、見返りにM塩基の支配技術と、生体兵
器を量産させる為に『例の寄生生物』を使用した高度なクローンつまり複製技術
に関するデータを頂くという取引をしませんか?」
と持ちかけた。高新一は少し考え込んでいたが
「わかった!!取引に応じよう!!但し一つ条件がある!!」
すると楊国花は
「どんな?」
と聞いた。
高新一は
ゴジラ等のG塩基を持つ生体兵器の開発に、中国と共同研究という名目で協力
する事だ!!」
と答えた。
楊国花は
「分かりました……協力しましょう…」
高新一は
「それとあともう一つ『例の寄生生物』のサンプルはとても危険で、猛毒で人体
にふれると激しい幻覚作用があり、狂い死にする事があるから取扱いは十分に注
意したまえ!!」
と言った。中国人三人は背筋が凍りついて無言になった。

―8月20日『金曜日』例の実験3日目)―

中国・上海からさほど遠くない山奥の森にある巨大な古い砦のような遺跡の中、
中国人達は広いホールのような場所を調べていた。以前、中国人のスパイが見つ
けた、『闇の森の神』の存在を示す手掛かりとなった黒い竜の絵と長い漢文の文
章を1人の中国人が読んだ。
中国人の一人が天井を懐中電灯で照らすと、大きな三体の竜の絵が、まるでこの
穴に飛び込むような形で描かれていた。
中国人のスパイ達が前もって設置していたライトが一斉に付けられた。
遺跡の中は丸い円状に大きく広がっていた。
中国人達が改めて円状の遺跡のホールの周りをまじまじと見た。
壁には何万年も使われなかったと思われる巨大な機械らしき物が埋め込まれてい
た。よく見るとその中には幾つものカプセルがあった。他にも埃まみれの機材ら
しきものが見つかった。
中国人は
「ここは何かの実験所なのか?」
とつぶやいた。
1人がその機材に触れたとたん「ビーッ」とけたたましい警報らしきものが鳴っ
た。
中国人全員は驚いて銃を構えた。
しかし何も起こらなかった。
するとこの機材から女性らしき音声が聞こえた。
「こちらX…星…実験所!!漏えい事故発生!!『寄生……生物』が!!」
中国人達はなんだか訳が分からずその女性の声をぼうせんと聞いていた。
女性の声が続いた。
「……地下の研究所!!封鎖します!!」
「地下の研究員も隔離します!!……汚染拡大!!」
とまで聞こえた時、ガラスの割れる音や絶叫がして音は止んだ。
中国人達は
「何なんだ……ここは……遺跡じゃないのか?」
とつぶやいた。
もう一人が
「一体何の研究がされていたんだ?……」
しばらくして中国人達は激しく動揺しつつもホールの中心部に巨大な掘削機を設
置した。
それは動き始めると地面を巨大なドリルで削り始めた。
一人が
「この下はどうなってるんだ?」とつぶやいた。

(第6章に続く)