(第13章)僅かな手掛かり

(第13章)僅かな手掛かり

神宮寺博士の説明が終わると凛の護衛は
「彼女が他の男性との間に生む子供も『例の生物』の危険な
能力が見られる前に恐らく……」
するとアヤノは
「まだ18歳ですよ!!」
と大声で訴えた。
すると翔太は
「それじゃ……その子供の父親も?」
凛の護衛は
「まだ分かりませんが……何らかの『例の生物』
の作用が出る前に暗殺の対象となる可能性は否定できません!!
その場合は国連にも協力を要請します!!
これはサラジア共和国やバイオメジャーが
起こすテロを未然に防ぐ為でもあります!!」
このとき、会議室に国連の関係者と2人の地元の刑事が入って来た。
国連の関係者の一人が波川司令に何か耳打ちしていた。
波川司令は
「まさか……もうすでに……」
とつぶやいた。
ゴードン大佐が
「一体何が……」
と波川司令に聞くと
「音無凛さんが誘拐されました……」
と司令は答えた。

地球防衛軍の会議室で波川司令は
「誘拐されたのは午後5時頃で、音無凛さんは
同じクラスメイトの男性の家に遊びに行っていました……。
そこに覆面をかぶった数人の中国人らしい男達が家に
押し入り、同じクラスメイトの男性を眠らせてから
凛さんを誘拐した様です。唯一の手掛かりはその
クラスメイトが眠らされて倒れる直前に
1人の覆面の男の胸に貼ってあったバッジを強く握って剥ぎ取り、
手に持っていたようです」と説明した。
地元の刑事がコートからそのバッジが入ったビニール袋を取り出した。
尾崎がビニール袋の中身の例のバッジには良く見えなかったが
「TGRAT社」と書かれていた。杏子は
「それじゃ!!誘拐された凛さんはその会社のある所に居るんですね!!」
と聞いた。すると地元の1人の刑事が
「恐らく……間違いないでしょう」
と答えた。
山岸の家から拉致された凛は目隠しをされて、
どこかの研究所の狭い空間の部屋に閉じ込められていた。
凛は手足の縛られたロープを切ろうと両手を動かすが出来なかった。
すると中国語が聞こえた。
「……アメリカの遺伝子工学産業の生き残りの『レオパス社』が、
我々の拉致した例の実験体とG塩基のデータを横取りして、新しい
生物兵器を開発し、遺伝子工学の市場独占を狙っているらしい……」
するともう一人の中国人は
「いやいや……それだけじゃない!!我々が彼らと取引した
例のM塩基の支配技術とクローン生産技術のデータもだ!!」
「今我々の居所が知られては厄介だな」
「『闇の森の神』も危険かも知れ無い」と言う会話が聞こえた。
凛は
「何なの……生物兵器って?『闇の森の神』って……まさか?……」
とつぶやいた。
中国・上海にある海洋研究所では再び会議が行われた。
孫飛山は「第2実験は進んでいるか?」
しかし高新一は何故か黙っていた。
楊国花は少し顔を曇らせながら
「まさか?……実験は失敗に終わったの??」
と聞いた。
しばらくして高新一は
「いや……第2実験の結果が出るのはまだ時間がかかる」
とだけ答えた。
全員はしばらく沈黙して考え込んでいた。
やがて李仙竜が
「我々……X星人は大昔からあの『例の生物』や
『例の寄生生物』を大量に捕まえては生物兵器として利用して来た。
地球の生物達も同様だ!!そして『例の寄生生物』の遺伝子を利用し
たクローン生産技術と、M塩基の支配技術で、家畜用の『例の
生物』達を作り出し、その一部をより強い生物兵器として量産
し、他の惑星の宇宙人の軍事企業に売り付けていた訳だが……
その方法も壁にぶつかっている。だから『例の実験体』を生物
兵器として有効に利用したいと思っている。
『例の実験体』とクラスメイトの間に子供が生まれるかまだ分
からないが、数年前に実験体が覇王と美雪の間に生まれた前
例を考えると、子孫を残せる可能性は決してゼロじゃないと思う。」
と話した。

(第14章に続く)

では♪♪