(第17章)人間は努力する限り迷うに決まったものだ!!

(第17章)人間は努力する限り迷うに決まったものだ!!

東京の街を散歩していた覇王が丁度、日東テレビ局の前を通り
かかった時、女と男の言い争いが聞こえた。
覇王は
「こんなマスコミがウロウロしている所で言い争う2人はどん
な奴だ!!」
と思いながら、見ていると、それはダグラス=ゴードン大佐と
、たしか美雪の姉でジャーナリストの音無杏奈だった。どうや
らゴードン大佐は彼女の事を好きだったらしいが、今は数人の
女と大佐が付き合っているとか言う揉め事らしい。
杏奈に英語で
「私とその女どっちが大事なの??」
と言われて大佐はバツ悪そうな顔をして口ごもっていた。
やはり思った通り、言い争っている2人に向けて茂みの中から
カメラのシャッター音が聞こえた。
覇王は
「人間ってこんな些細な事でウルサイ生き物だな!!」
とつぶやくと、とばっちりを食らわない内に急いでその場を離れた。
 しかしその途中でまた例の黒いフードをかぶったカルト宗教
の集団に遭遇してしまった。
彼らはまたうわ言の様に
「おお……また会えた……ダミアンより強いオーラを感じる」
と訳の分からない事を言った。
覇王は苛立って
「あんなオーメンとか言う映画に出てくる悪魔の子など!!
俺から見ればただの平社員!!」
と冷たく怒鳴り散らして、走り去った。
黒いフードのカルト宗教は覇王が怒れば怒る程嬉しくなるらし
く、コソコソ走り去る覇王を指さしてはニヤニヤしていた。
やっと黒いフードの「カルト宗教」の集団から逃れて覇王は
「やれやれ……」
と安心して再びゲーテの「ファウスト」の続きを読み始めた。
途中、田町小学校の前に「怪獣災害を考える会」と言う看板を
見つけた。覇王は強く興味をひかれて体育館に入った。
そこでは、「怪獣災害を考える会」のと言う団体の代表の温水
浩子が「怪獣の怖さ」や「地球防衛軍自衛隊もCCIも政府
もまるで考えていない」等の批判を大袈裟に話していた。さら
モスラについて
「危険な化け物を退治しなければ私達に未来はありません!!」
と大声で言った時、突然少年と少女がイスから立ち上がり、
はっきりと
「違う!!」
と否定した。
代表の浩子は戸惑った様に口ごもった。
覇王も
「面白くなってきたな……」
と笑いながらつぶやいた。
少年の中條瞬は
モスラは化け物なんかじゃない!!」
と大声で言った。メンバーの一人がとまどった様に
「何で……」
と優しく聞いたつもりだったが声は少し怒っていた。
中條少年は
モスラは平和でいる事が大好きなんだ!!」
と訴えた。最近転校して来たと思われる少女の沙羅は
「どんなに巨大でも命があるんだよ!!」
とこの少女の方が少年よりかなり大声で言っていた。
どうやらこの少女は何かあって「命」に人一倍敏感になっているらしい。
代表の浩子は
「でも!!私はその大切な人の命をあの怪獣に奪われました!!」
と大声で返した。2人は黙ってしまった。
さらにメンバーは話しを続けた。
「ですからあの怪獣を一生許しません!!」
しかし沙羅が
「でも!!やっている事は結局は同じじゃないの??
何で軽く命を奪うの??」
と少しづつ泣き始めた。
中條少年も「そうだよ!!」
メンバーは
「1954年にゴジラは自分勝手な人間が水爆実験で誕生して
しまった!!だからあの忌々しい怪獣を倒す事で二度と過ちを
犯さない様に反省すべきだと私は思います!!モスラも可愛い
からと言って人畜無害と言う考え方は甘いと私は思います!!」
と大声で言った。途端に沙羅は
「そんなんじゃ!!まるでゴジラが疫病神見たいじゃないの!!
ゴジラを倒すなんて!!そんな自分勝手な考え方をゴジラに押し付けて!!」
と涙ながらに訴えた。周りの子供からも
「そうだよ!!」とか「おかしいよ!!」と次々に声が上がった。
それを学校の先生が「静かにしなさい!!」と叱った。
沙羅と言う少女は大泣きしながら体育館の外に走り去った。
覇王はその様子を心配そうに見ていた。

(第18章に続く)