(第35章)そして……裏切り者は怪獣になった……

(第35章)そして……裏切り者は怪獣となった……

 優香は網走厚生病院前で新しい情報をレポートしていた。
「犯人は人質を解放する条件として!分子生物学者の音無美雪
さんの身柄、また、地球防衛軍保有している幾つかの資料、
FBI本部に保存されているデストロイア事件、行方不明にな
った元地球防衛軍の覇王圭介少佐とケーニッヒギドラに関する
事件、中国で発見された謎の遺跡に関する事件の資料を全て渡
す事を要求して来ました!理由は一切不明です!」
 その時、数人の国連の関係者が現れたのでゆかりはマイクを
持ち、突撃取材を始めた。
「国連関係の方ですね?
犯人が人質を解放しようとする目的はなんでしょうか?」
すると国連の関係者は、レポーターが優香であることを知って
「実はものすごく言い辛い事が……あの犯人達はもう一つの条
件としてあなたも人質になって欲しいと要求した!」
 その突然の一言に、周りのスタッフや取材班は一瞬で血の気が引き始め、
激しい動揺と混乱の嵐が広がった。

 網走の病院内でテロリスト4人による立て籠り事件が発生す
る直前、友紀は蓮との言い争いを終え、廊下の角で泣いていた
が、人の気配を感じ、彼女はあわてて自分の部屋へ戻ろうと別
の廊下を歩き始めた。
 その途中、友紀はふと長野先生の言う事は本当なのかと
言う疑惑が頭をよぎったが、でも……もし本当だったらどうし
ようとの不安も広った。
 それから友紀は蓮の病室に入り、洋子が本当に宇宙人なのか
どうか確かめようと病室の机にある箱をいじり、データを自分
デジタルカメラで再生させたり、巻き戻したり、早送りをし
た。
 友紀ははやる気持ちを抑えつつも、洋子が宇宙人かどうか確
かめようと必至にビデオをいじった。自分がどうしてそんな事
をするのか自分でさえも良く分からなかった。

 4人のテロリストによる立て篭り事件が発生したと
地元の警察の通報を受け、パトカーで現場に向かう途中、ガー
ニャはなかなか止まろうとしないパトカーに苛々した口調で
「いいから止めるんだ!」
と大声を上げた。ジーナは
「どうしたの?」
と怪訝な顔で尋ねた。サミーは少し怒った口調で
「早く現場に向かわなきゃいけないんだ!寄り道している暇はないよ!」
しかしガーニャはようやく止まったパトカーを慌てふためいた
様子で降りながら
「それは分かっている!」
とだけ答えた。
 建物の炎と黒い煙や粉雪が舞う中、怪獣は、青緑の鱗が全身
逆立ち、8本の触手は宙でまるで石の様に動かなくなっていた。
 ガーニャは怪獣の熊のような両腕を見て確信し
「間違いない……サンドラだ……」
とつぶやいた。
 そのサンドラが変身したと思われる怪獣の身体に異変が起こった。
 全身の青緑色の身体は美しくも毒々しい青紫色に変化した。
それからクリオネの頭部から伸びていた8本の赤黒い吸盤付き
の触手は後ろに折れ曲がり、硬角化し、巨大な角になった。や
がてクリオネの頭部がワニの様な巨大な頭部に変化し、サーベ
ルの様な鋭い牙が生え、左右の脇腹のゴジラの背びれに似た翼
が背中に移動し、やがて互いに繋がり巨大な漆黒のマントに変わった。
ヒグマの様な両腕もさらに太くなり、巨大な爪はさらに鋭く長くなった。
 ジーナは唖然とした表情で
「あれが……サンドラなの?」
 サミーもただ茫然とその怪獣を眺めながら
「あれが……宇宙人のサンドラ?変化しているぞ!」
 ガーニャは心の中で思った。目の前にいる怪獣はかつての大
学の親友ではないのか。裏切り者の宇宙人である彼女は怪獣となった。
あのウィルスによって、姿だけでは無く恐らく心も。多分俺がいくら声をかけても!
もう届かないかも知れない。大学時代の思い出や俺を裏切った思いでさえも。悲しみの涙さえ、
もう枯れたのだろうか?でも心が少しでも残っていてくれれば!
俺には彼女が怪獣と簡単に割り切る事は不可能だと思う……
と複雑な感情が入り混じる中、突然ジーナの鋭く力強い声でふと我に返った。
ジーナは
「何考え事をしているの?早く現場に行かなきゃ!
早く乗って!それにガーニャあなたがしっかりしないで!この後どうなるのよ!」
ガーニャはショック状態のまま
「スマン……」
と小さい声で答えるとパトカーに乗り現場へ向かった。

 変異した怪獣サンドラは気が付くと、先程の激しい苦痛や激
痛が嘘の様に体が軽くなり、爆風で受けた全身の傷が一瞬で癒
え、全身に力が漲るのを感じた。彼女は生まれ変わったのだ。
 彼方でゴジラの威嚇する唸り声が聞こえた。怪獣は凄まじい
力に突き動かされ、疾風の様に駆けた。全身の筋肉が歓喜の声
を上げている。眼前にゴジラの姿を目の前に捉えた。サンドラ
ゴジラに体当たりを食らわせた。2体はもつれあいながら高
速道路がある橋を押しつぶし、瓦礫の山に倒れ込んだ。サンド
ラは溢れんばかりの力でゴジラの両手を押さえつけようとした。
ゴジラは必死に抵抗した末、サンドラの頬を鋭い爪で切り裂き、ようやく引き剥がした。
 やがて立ち上がったゴジラはサンドラを鋭い目で睨みつけた。

(第36章に続く)

今日の変更はここまでです!続きはまた後日に!
では♪♪