(第19章)指輪

(第19章)指輪

深夜12時。
ゴードン大佐と尾崎は地球防衛軍の本部へ戻ったが、
覇王1人は何故か近くの宝石店の前に立っていた。
1人の外国人が茂みの中から双眼鏡で覇王をじっと観察していた。
覇王は気配を感じて周りを見たが、首をかしげながら宝石店の中へ入ると、
店員に
「指輪を探しているが、何かお勧めの指輪はあるかな?」
と聞いた。
店員は
「ありますよ!!この指輪はどうでしょう?」
と近くにあったショーケースの指輪を指さした。
覇王は
「えーと友達にプレゼントで……何と言うか」
と困った様に言った。
店員は
「結婚指輪ですね??」
と納得した様に言ったが
覇王は
「いや!!そうじゃなくて?!うーんただのプレゼントです!!」
と焦った様に言ったので店員は変な人と言う様に顔を見ると
「そうですか?なら!!これはどうでしょうか?」
と別の指輪を指さした。
覇王は
「それがいいです!!」
と返した。何故か自分がここにいるが気まずく、さっさと指輪
を買ってその場から逃れたい衝動に駆られた。
「これが恥か?」と苦笑しながら会計を済ませると、
その場から不自然に見えぬ様に急いでその場を立ち去った。
その様子を双眼鏡で観察していた外国人は無線で
「こちらサラジア遺伝子研究所本部!!例の謎の男、指輪を買
って行ったらしい。恐らく国連の分子生物学者に渡すものと思
われる」
と報告した。
同時に別の場所でも外国人が
「こちらバイオメジャー。どうやら指輪を分子生物学者にプレゼントする様だ……」
と報告していた。

深夜1時。
特殊生物自衛隊本部内の特殊生物研究所に何者かが厳しいセキ
ュリティーをかいくぐり、侵入して監視カメラを全て破壊して、
DNA貯蔵庫のゴジラのDNAサンプルと
新たに出現したケーニッヒギドラのDNAを盗み出そうとした。
その直後、3人の男が新たにDNA貯蔵庫に侵入してその何者かと鉢合わせた。
その男は英語で「クソ!!」と舌打ちした。

真鶴の海岸で捕獲されたミニラを調査する為に覇王と美雪、
尾崎、ゴードン大佐はの4人は早速真鶴の研究所へ向かった。
車の中で覇王が
「何かゴソゴソ聞こえなかったか?」
と聞いた。尾崎は少し不機嫌そうに「別に」と返した。
覇王はその正体を掴もうとして車内を見ようとするが、
「怪獣災害を考える会」や「動物愛護団体の一部の過激派」を始め、
外国からも「環境保護圧力団体」と名乗る謎の活動家達が現れ
、彼らの激しい抗議運動から身を守る為に、普通の軽自動車の
後部座席にギュウギュウに詰め込まれたので全く身動きが出来
なかった。ちなみにその3つの団体は地球防軍、自衛隊
CCIのトラックや軍の車が通りかかると必ずわらわら集まって批判や不満をぶつけ始める。
 2日前には「怪獣災害を考える会」と「動物愛護団体の一部
の過激派」や「環境保護圧力団体」の活動家達の間で、怪獣の
保護か抹殺をめぐって、互いに小石を投げ合い車のガラスが数
枚割られ、大きい石が関係者に当たり数名が大怪我をする事件が起きていたので、
なるべく地球防衛軍の隊員だと分からないように車はカムフラージュされている。
 美雪の話によると真鶴の海岸で捕獲されたミニラは、放射熱
線で脱走しない様に、あらゆる防止策として宇宙超合金のスペ
ースチタニュウムで出来たカプセルに入れられていて、水槽の
中には体内の核分裂を制御する為にカドミウムや抗核バクテリ
アを投与されているそうだ。その効果もあってか現在ミニラは
幸いな事に水槽の中ですやすや眠っているらしい。
美雪は話を続けて
「怪獣を捕まえた後に制御する装置は十分ではないので最低限
の設備で間に合わせているの…」
と付け加えた。
 覇王が車の窓をふと見ると、東京で見たような古びた巨大倉
庫のドアや壁に「怪獣闇市」とか「モンスター・ブラックマーケット」
等の怪しい壊れかけた看板が掛けてあるのが数枚見えた。
覇王は思わず苦笑してしまった。
やがて車はとある研究所に着いた。「関係以外駐車禁止」と大きく書かれた門をくぐり、
地下の駐車所に止まった。車から降りると2人の研究員が迎え入れた。
2人の研究員は一人一人自己紹介をした。
眼鏡をかけた女性研究員がいかにもマイペースな口調で自己紹介を始めた。
「始めまして若菜知世です。心臓外来専門の医師です。」
続いて2人目の男性研究員が自己紹介をした。
「始めまして柳田理科雄です。理系作家でしたが私のゴジラ
関する科学的考察の『空想科学読本』を読んで下さったCCI
の関係者に本物を科学的に研究してみないかと誘われて参加しています。」
それに続いて美雪、覇王、尾崎、ゴードン大佐が自己紹介を終
えると4人は研究所の広いスペースに案内された。
そこには最新の研究設備が置かれ、その先には「関係者以外立
ち入り厳禁」と書かれていた。
4人は入る前にボデイチェックを受け、武器は全て一時的に没収された。
そして2人の研究員と共にその先のエレベーターに乗り、降りると6人は長い廊下を歩き始めた。

(第20章に続く)