(第20章)人化

(第20章)人化

雪がしんしんと降る東京湾が突然3ケ所で青白く発光し始めた。
そこから海がもり上がり、海を破ってゴジラとミニラとジュニアが咆哮を上げな
がら出現した。八重洲まで後退したミュータント部隊は、
体勢を立て直す為に地球防衛軍の本部に戻っていた。
そんな中ジェレルが「上陸の恐れあり!一般市民の避難誘導を!」
カンナは
「了解!」
と返した。
波川指令がスピーカーで
「銀座付近の公園で本体の緑色のデストロイア出現と報告あり。
住民の一人が連れ去られた模様!至急出動してください!」
M機関全員は
「了解!」
と返事すると武器を持ち、クリーンウェアーとマスクを着用したあと、装甲車で
吹雪の中、銀座へ出動していった。
数時間後、優香は目を覚ました。天井に何かで完全に拘束されていた。
周りを見渡したが誰もいなかった。
優香は助けを呼ぶ為に大声を張り上げ様とした瞬間、言葉を失った。
何故なら目の前にあの緑色のデストロイアが現れたからである。
デストロイアは優香の顔をまじまじと眺めると、長い口を伸ばして近づき、吠えた。
優香は思わず顔をのけぞらせた。
デストロイアはそれ以上の事はせず、すぐに顔を引っ込めた。
デストロイアの緑色の体を眺めながら優香は
「自分は殺されるのではないか?」とそればかり考えていた。
優香は突然下腹に焼けるような激痛を感じた。
その瞬間「バン!」と大きな音が聞こえた。
優香が出来るだけ首を曲げて建物の入口を見ると、
ドアを開けて尾崎を始めミュータント部隊が突撃して来るのが見えた。
尾崎は空砲を何回も鳴らし、デストロイアの気を引こうとした。
作戦は成功し、デストロイアは彼女から離れ、壁を伝って床に降りた。
同時に尾崎達は一斉に緑色のデストロイアに冷凍攻撃を仕掛けた。
しかしデストロイアは冷凍攻撃を巧みにかわすとたちまち外へ逃げだし、暗闇に消えた。
尾崎は彼女を注意深く壁から引きはがした。
彼女の背中には糊に似た粘着性の物質がこびりついていた。
優香は恐怖ですすり泣いていた。
装甲車に乗せられ、地球防衛軍の病院へ搬送される途中、
優香は尾崎に
「痛い!……お腹が……」
と訴えた。尾崎は彼女の腹を見た途端大声で
「大変だ!何かが動いている!」
と周りの医師達に伝えた。
優香の腹が蠢いていた。
医師は冷静に、腹の中で蠢いている何かに向かって応急処置として
小型のGメ―サを注意深く浴びせかけた。
やがて彼女の激痛は治まった。
その後、医師達は優香の腹の中にいる何かを注意深く取り出したあと優香は病室に運ばれた。

美雪の家で凛は長いこと自分の部屋に閉じこもり色々考え事をしていた。
凛は身体を丸めながら
「あたしにとって怪獣やゴジラって?どういう存在なんだろう……」
とつぶやいた。しかしすぐに続けて言った。
「結局はただの人殺しよ!ゴジラデストロイアも!でも……パパも元はそうだ
った……でもあたしを産んでくれた……」
そこへドアの方から黒いフレンチブルドックが入って来た。
凛は
「キャンディ……もしあなただったらどうするの?」
と言いながらキャンディを抱きかかえた。

地球防衛軍の病院の廊下で尾崎は医師と何かを話していた。
「あの被害者の体内にいた生物は?」
医師の祥郷は
「いや……取り出せたのは組織の一部で、本体は無理でした……」
尾崎は
「どんなものですか?」
祥郷は
「…繭か蛹、または卵みたいなんです。」
と答えると病室に案内した。
尾崎は集中治療室にいる優香を見た。
そして医師は
「それから伸びた触手のような物がヘソの尾みたいに患者の体につながっていて、
切ろうとしてもとても硬く、ハサミやGメ―サーでもビクともしないんです」
尾崎は
「取り出す方法は?」
祥郷は
「今色々試していますが……子宮ごと切除すればあるいは」
尾崎は
「そんな」
そして2人はクリーンウェアーとマスクを付けると集中治療室に入った。
祥郷は
「どうしても取り出せなかったので一度手術は中止しました。
現在……彼女の容体は安定しています。今なら開腹手術も可能でしょう」
彼女のお腹を見たとき尾崎は驚きのあまり言葉を失った。
彼女のお腹は病院に搬送された時の倍に膨らんでいた。
さらに時々、彼女のお腹は蠢いていた。
祥郷は
「その組織を調べた結果、人間のDNAが検出されました……」
尾崎は
「それじゃ!デストロイアが人間になっていると?」
祥郷は
「恐らく…」
と答えた。

(第21章に続く)