(第30章)凛!絶体絶命!

(第30章)凛!絶体絶命!

中国の山奥を飛行していた救助艇の医務室に寝ていた
凛はこれまでで一番激しい激痛に襲われた。
医務室の外にいた美雪はあわてて
「凛!待っててすぐに医者を呼んでくるわ!」
と言うとすぐに医師を探しに廊下を走った。
医師達が駆けつけ、クリーンウェアーとマスクを着けて中に入って行った。しか
し全く手がつけられなかった。
森の奥に避難していた住民の一人が、上空に強い光が何度も見えるのに気付いた。
もう一人の住民がその強い光の後にキノコ雲らしきものを見た。
そして何度も住民達が見ている内にとうとう一人が
「水爆だあ!上海に水爆が落ちたぞ!俺は死にたくないぞ!」
と大声で言うなり、走って森の奥に消えた。
すると他の住民達も「大変だ!」
「本物だぞ!」
「逃げろ!死の灰が降って来るぞ!」
と口々に大声で言いながら走り去ったので、皆大パニックになり、死に物狂いで
森の奥に蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。大怪我をして動けない住民達を
残して逃げ出す医師達を見た患者はあわてて
「待て!置いていくな!」
と必死に車いすを動かして後を追おうとしていた。そんな中、友紀はビデオカメ
ラを起動させた。
森の奥の方へ逃げる群衆の中に父親らしき影が見えた。
友紀は
「お父さん!」
と大声で言うとその群集の後を追ったがたちまち見失ってしまった。
友紀は息を切らせながら近くの木に腰を降ろした。
「一体?何が起こったの?」
と混乱した様に言った。
首にかけていた小さな鏡が黄金に発光していた。
友紀が立ち上がると黄金の発光が消えた。
しかし座っていた方向に鏡を向けると再び強く発光し始めた。
友紀はその方向に向かって、黄金に発光する小さな鏡を頼りに走り始めた。

凛が通う学校の校長室では二人が英語で山岸に質問をしていた。
山岸は英語は苦手だったが言いたい事は大体は分かった。
それに隣に通訳がいたので不都合はなかった。
その外国人の一人が
「実は私はFBI捜査官です!音無凛さんの誘拐事件に
ついていろいろ聞きたい事が……」
山岸は
「でも……警察に事情は話しました!」
と言った。しかしもう一人の女性のFBI捜査官は
「それではその音無凛さんに何か変わった事は?」
山岸は
「いや……何もありません……」
すると男の捜査官が
「本当に?」
山岸は
「凛ちゃんは……最近うちのクラスの友達に辛く当っていて、僕にはとても優し
かったと言うより……ものすごい愛情を持っているというか?」
「成程……分かりましたご協力ありがとうございます!」
と言うと2人の捜査官は帰って行った。
女性のFBI捜査官は携帯電話で
「分かりました…無事その子は保護されたと……それで彼女は病気?謎の建造物
を発見したから調査の為に中国へ飛んでくれと?」
男性のFBI捜査官は
「何だって?」
女性FBI捜査官は
「ご無沙汰の仕事よ!」
と言うと車に乗り込みながら
「中国の森に飛んで行って欲しいって。
飛行機はもうすでに手配されているわ!」
FBI捜査官の男は「了解!」
と言うと車を発進させた。
そして飛行機に乗って中国に向かった。

中国の山脈を飛んでいた救助艇では、美雪が呼んだ医師達がクリーンウェアーと
マスクをかぶって病室に入った。
しかし凛はすでに意識を失い危篤状態だった。
その姿を見た美雪は泣きながら尾崎に
「お願い!凛を助けて!」
と大声で言った。
尾崎は
「分かった……」
と言うとクリーンウェアーとマスクをつけ病室に入って行った。医師達は心肺蘇
生の為に電気ショックを掛けた。
しかし意識は一向に戻らず、むしろ寄生した生物が反応したため、中止せざるを
得なかった。
尾崎は
「下がっていてくれ!」
と医師達に向かって言った。

(第31章に続く)