(第30章)再び小美人の警告

(第30章)再び警告

自分の寮でうたた寝をしていた覇王はまだ夢を見ていた。
土星である。そこでは強風があまりにも酷くほとんど何も見る事が出来なかった。
そしてその夢は、NYの一般市民が撮ったあの巨大生物の映像を見た時に脳裏
に浮かんだものだった。
赤い翼と4つ足の宇宙怪獣の体から強力な火球が飛び出し、
覇王は無意識に大声で叫んでいた。
「やめろおおっ!」
そしてその瞬間、無意識なのか分からないが美雪の顔が飛び込んで来た。
仮設研究所では昼寝をしていた美雪が覇王の夢の内容とよく似た夢を見た。
美雪は、赤い翼で4つ足の宇宙怪獣の火の玉から我が子を守る様に、無意識にそ
の火の玉と宇宙怪獣の間に割り込んだ。火の玉が直撃した時、
無意識か分からないが覇王の顔が飛び込んできた所で目が覚めた。
美雪は
「何なの……変な夢ね!」
とつぶやくとパソコンの画面に再び集中して仕事の続きを始めた。
地球防衛軍の寮で夢から覚めた覇王はバサッとまた布団を吹き飛ばし起き上がった。
荒い息を上げながら、体中から汗が噴き出てきた。
傍にいたグレンは何か言い掛けたが、覇王から激しく睨まれ何も言う事が出来ず
そそくさと歩き去った。
覇王はしばらく自分の寮で考え込んでいた。
「何で…ゴジラキングギドラの戦いが……あの2体の宇宙怪獣はどこかで見た
様な気がする……それにしても、なぜ2体が血だらけになって死んだ瞬間に美雪
の顔が飛び込んできたんだろう?まさか何か関係があるのか?」
しかしコカコーラを開けながら笑いだした。
「まさか?そんな訳ないな……」
すると頭の中で声がした。声の主は小美人だった。
「2度目の警告です!モスラに攻撃を加えないでください!もし行えばモスラはあなた方の
敵になります!私達はそれを望んではいません!
もしモスラに攻撃を加えればあなた方の敵になります!」
そして声は消えた。
覇王は
「そんな……」
とつぶやくと机に置いてあったリモコンで寮のテレビを付けた。
地球防衛軍の寮で覇王はテレビを見ていた。
五十嵐隼人総理大臣は国会の会議で
「インファント島の住民が大勢いるのに関わらず!
ミサイルの攻撃の準備をしたのはあまりにも安易で危険な行為だ!」
とCCI局長の野中を厳しく非難していた。
さらに五十嵐総理大臣は
「インファント島の戦いに使用された全ての潜水艦には最新の遠隔操作技術を導
入されている。それに今回は攻撃が延期されて、まだお互い死者が出ずにすんでいる!
4時間の延期後にインファント島攻撃作戦を行っても!やはり無意味だ!
この作戦をすぐにこの作戦の中止をロリシカ共和国の軍に伝えて!
『対怪獣本拠地攻撃法案』も廃止すべきだ!」と訴えた。
しかし野中は
モスラゴジラに家族や家を奪われた人達はゴジラ
モスラが退治されるのを望んでいる!特にモスラに町を破壊されたロリシカ共和国の住民達もだ!」
さらに野中は
「我々が避難船を送ったのにも関わらず避難しなかった住民が悪い!」
と反論した。五十嵐総理大臣は
「浅はか極まりない考えだ!」
とさらに厳しく非難した。場面が変わり街頭インタビューが映し出された。
アナウンサーの「インファント島攻撃作戦についてどう思われるか?」と言う質問に
対して住民の回答は
「怖いですよ!早く退治しちゃってください!」等、
小美人の警告をまるで無視した様な発言がほとんどだった。
覇王は生れて始めて自分のこと以外ではらわたが煮えくり返りそうな気がした。
もちろん
「酷いですよ!」
とか
「いくら怪獣退治が目的とは言っても住民を巻き込むのは良くない!」
と言った意見も出された。
動物愛護団体と怪獣保護を考える会は「インファント島攻撃作戦の中止!」と
「怪獣本拠地攻撃法案廃止すべし!」と書かれた垂れ幕やプラカードを掲げ、
デモ行進を起こしていた。
「とにかくやめろ!怪獣を殺せば動物虐待だ!」
と訴えた。これに対して「怪獣災害を考える会」は同じくデモで応戦した。
その様子をテレビで覇王は眺めているとニックが入って来た。
覇王は
「おい!聞いたか?小美人の警告を?」
ニックは
「ああ……どうやら先進国の俺達に対しての警告らしいがほとんどの人は空耳と
しか思っていないからまるで耳を貸さないんだ!」
覇王は
「そっか……物質主義に染まった先進国の人間達にはテレパシーは効果無しか。
見える物しか信じないからな……困ったものだ……」
と言うと立ち上がった。
ニックは
「どこに行くんだ?」
と聞いた。覇王は
「いや……ちょっと気になる事があってね……それに波川司令から美雪の護衛も
頼まれているので!失礼するよ!」
と言うと出て行った。

(第31章に続く)