(第21章)「行かなきゃ……」

(第21章)「行かなきゃ……」

美雪の家で凛は黒いフレンチブルドックのキャンディを抱きかかえた。
キャンディは凛の顔を見て心配そうに「クーン」と鳴くと、
凛をピンク色の舌でなめ始めた。
凛は
「もう!くすぐったいな~」
と言ってキャンディをカーペットの上に降ろした。

数時間後、山根優香の容体が急変した。
尾崎を始めM機関の部隊は万が一に備え、
武器を持って集中治療室の中に入り周りを囲んだ。
怪獣の鳴き声が聞こえた様な気がした。

同じ頃
「おかしいな……ここだった様な……」
とカメラを持って道を歩く1人のアニメオタクの少年がいた。
そして無言で歩いている凛に出くわした。
オタク少年は
「おーい凜ちゃん!」
と両手を振りながら呼びかけた。
凛は
「山岸君!」
と言ってそのオタクの方へ走って行った。

病院で怪獣らしき鳴き声がしてから30分が経過していた。
尾崎は唾を「ゴクリ……」と飲んで集中治療室のドアノブに手をかけた。
そしてドアを注意深く開けた。すると祥郷が注意深く謎の物体を両手で持ち、
大きな冷蔵庫に入れるところだった。
その物体は緑色で、カニのゾエア幼生に類似していた。
そして冷蔵庫のドアを閉めると尾崎に
「排出されるように出てきました。動いていませんが、生きています。
患者はもう……大丈夫です!彼女の体内からはミクロオキシゲンは
検出されていませんし……繭の残骸もしばらくすると自然に取れました。」
尾崎は
「一体なんなんですか?」
祥郷は
「さあ……詳しく調べてみないと何とも……」
と言った。やがて優香は集中治療室から一般の個室に移された。

港の道を歩いていた山岸は凛が走って来るとカメラをとっさにしまい
「いや~俺って方向音痴でさ~迷っちゃって~」
凛は思わず噴き出した。
山岸は
「悪い?」
と言った。
凛は
「少し歩こうか?」
と言った。

地球防衛軍では
ジェレルが
「3体のゴジラ近海で再び消失!海中に潜った模様です!」
ゴードン大佐は
「どうして奴はすぐに上陸しない?」
アヤノが
「まるで何かを待っている様な?」
ニックが
「まさか……デストロイアか?」

一方地球防衛軍では例のゾエア幼生の解剖が行われようとしていた。
しかしそのゾエア幼生は、
冷蔵庫から取り出されて突然目覚めると外へ逃げ出した。
地球防衛軍の病院内では大きな警報が鳴った。
尾崎やM機関が集まり始めた。
逃げ出したゾエア幼生はある個室病室に入って行った。
それは優香の病室だった。
そのゾエア幼生はまるで母親を慕うかのように優香に甘えて来た。
やがて安心した様に優香の隣で寝息を立てた。
そこにM機関のミュータント部隊が現れた。

凛と山岸は港町を歩いていた。
凛は潮風が吹いた海の方を見て突然
「感じる……」
とつぶやいた。
山岸は「何を?」
凛は
「3体のゴジラがあたしを待っている……」
山岸は
ゴジラが君を?」
凛は
「行かなきゃ……」
と言うと海の方へ走ろうとした。
山岸は
「ちょっとまって!海の方は危険だよ!」
と言って凛の腕を掴んだ。

(第22章に続く)