(第32章)所詮『カイザー』は井の中の蛙か?

(第32章)所詮『カイザー』は井の中の蛙か?

東京の凛が通う高校では、もうほとんどの生徒が下校していた。
山岸は、先生から貰った宿題を大きなカバンに詰めて
下校しようとしていた洋子の手伝いをした。
それで他に何か大きい袋を探しに行くのと、気絶した原田先生が気になった事で、保健室に向かった。
保健室では原田先生が額にガーゼを乗せてベッドで痛そうに唸っていた。
保健室の先生は
「どうしたんや?」
山岸は
「先生の具合は?」保健室の先生は大阪弁
「大丈夫や!ちょっと微熱があるけど!それ以上の異常はありまへん!」
山岸は保健室の先生に、洋子が宿題を持って帰る為に大きい袋が必要だと伝えた。
そして近くの棚に大きい袋があるからと言われそれを探した。
原田先生のポケットから写真が出ているのに気が付いた。
保健室の先生はその写真を眠っている先生にばれぬ様に引き出し、
写真を見た瞬間、大声をあげそうになった。
しかしあわやの所で口を塞いだ。
そして周りにばれぬようにそっとポケットに戻そうとした。
しかし山岸と洋子が現れ、あわてて床に落してしまった。
それを洋子が拾った。
白い紙には「原田の片思い」と書かれていた。
裏返して洋子は青ざめた表情で思わず写真を落とした。
山岸は
「洋子ちゃんどうしたの?」
そして何げ無く写真を拾った。
洋子はあわてて保健室から出ていった。。
山岸は写真を見て眉間にしわを寄せながら
「洋子ちゃん?」
裏返すと
「原田先生の?」
良く見ると「片思い?」と書いてあった。山岸は思わず
「えーっ!」と大声を上げた。
その声を聞いて原田先生が
「ハクション!」
とくしゃみをした。
山岸は
「洋子ちゃんも茶髪だったな……」
とつぶやいた。

中国の山脈を飛行する救助艇で美雪は医務室の凛に大声で泣きながらマイク越しに
「りーん!生きて!しっかりして!」
と呼びかけた。しかし彼女から返事は無かった。
美雪はクリーンウェアーとマスクを着用して凛の病室に入ろうとした。
尾崎はそれを見て両手で美雪をしっかり抱きしめて
「もう手遅れだ!君に出来る事は……」
しかし美雪は
「離して!まだ生きているわ!」
と必死に尾崎の手を振りほどこうと激しくもがいたが、病室から「ピー」と言う
電子音が聞こえると、美雪は力無く、その場に崩れ落ち大声で顔をうずめて泣き
出した。
尾崎は
「クソ!」
と大声で言い壁に拳を叩きつけた。
「どうして何も出来ないんだ!」
尾崎は
「すべてを支配させる力だと?ふざけるな!」
と何度も壁に拳を叩きつけた。
尾崎は
「所詮……俺達は井の中の蛙か?どうしてだ!ミュータントの運動能力を上回る
力や念動力で弾丸を超える力。なのに……何で何も出来ないんだ!何が全てを
支配する力だ!何が『カイザー』だ?!」
と言うと絶望した様に座り込んで両手を抱えて頭をかきむしった。
そして尾崎は
「もう……カイザーは限界なのか?」
と自分の手の平を見てつぶやいた。
近くで美雪のすすり泣く声が聞こえた。
「駄目だったのか?……」
とゴードン大佐。
「一体?何が?」
と密輸船の船長。
「これじゃもう……」
と杏子。
「そんな……」
とアヤノ。
その後、ゴードン大佐と尾崎、杏子やアヤノは会議室の様な部屋に集まった。
そしてジェレルが
「あの謎の砦のような建造物は数万年前に建てられたものと判明しました!」
と資料を配り始めた。
ゴードン大佐は
バガンゴジラ、ジュニアの行方は?」
ジェレルは
「およそ見当は付いています!バガンは取り付けた通信電波が届くか届かないか
分からない地下の奥深くを時速29キロで移動しています!」
ジェレルは大きな地図の山脈を指でなぞりながら
「そしてそのまま地下を進み続けると、バガンは謎の遺跡の真下にぶつかること
が分かりました!一方ゴジラとジュニアの行方は、恐らく地下の洞くつに落下し
たものと思われます!先ほどその2体のゴジラが落下した巨大な穴から大きな爆
音と噴煙が確認されました!そして飛び散った破片をCIAが回収して調べた結
果、地底湖がある事も分かりました。
小規模な地震が起こっていることから2体のゴジラはどこかの抜け道を移動して
いるのでは無いかと思われます。」
と説明した。

(第33章に続く)