(第22章)赤ん坊

(第22章)赤ん坊

凛はうわ言のように
「行かなきゃ……行かなきゃ……」
と何度もつぶやいた。
山岸は
「落ち着いて!」
と言って凛を押さえた。
凛は「消えた……」
山岸は
ゴジラがいなくなったの?」
凛は
「いや!この近くの海にいるわ!」
山岸は
「どうして分かるの?」
と興味本位で聞いた。
すると凛は
「本能的に惹かれあうみたい……あたしとゴジラ
山岸は目を丸くして
「それってどういうこと?」
と聞いた。
凛は
「なんでも無いの……ただ……」
山岸は
「ただ?」
と聞き返した。

尾崎が一人だけドアをそっと開け、
優香の傍で寝息を立て眠っているゾエア幼生に静かに近づいた。
尾崎が触ってもゾエア幼生は静かに寝息を立てていた。
目を覚ましていたゆかりは
「この怪獣……あたしの事を母親と思っているわ……」
とつぶやくように言った。
優香は
「でも?どうしてデストロイアからこのような怪獣が生まれたの?」
尾崎は
「分からない……一体どうなっているのか?」
と首を振りながら言った。
優香は
デストロイアは破壊だけが目的とは思えないわ……」
尾崎は考え込んだ。
やがてゾエア幼生が目を開けた。
尾崎はのけぞって冷凍メ―サーを構えた。
ゾエア幼生は天井に向かって何度も吠えた。
すると優香は
「お腹が空いているのね……」
とつぶやいた。
尾崎は
「どうして分かるの?」
「何となく……恐らくあたしには危害は加えないと思う」
「それは……だが相手は怪獣だぞ!」
「大丈夫だと思う」
その間にも怪獣はピーピー天井に向かって何度も吠えていた。
「餌は何だ?」
「分からない……でもまだ赤ん坊だから……」
「それでも何を食わせる?ベビーフードか?」
するとゾエア幼生は何かを探すようにシーツを嗅ぎ始めた。
「人間の赤ちゃんと同じかも……」
「そうか……この怪獣は人間のDNAも交じっているそうだからな……」
「これからこの生物はどうなるのかしら?」
「分からない……」
「助けてくれてありがとう」
と優香は尾崎に感謝の言葉を述べた。
尾崎は
「それはいいさ!」と照れくさそうに返した。
その後、尾崎は「危険無し」と判断して一度外に出た。
ゾエア幼生の様な怪獣は、監視カメラの映像から、人間の赤ちゃんと同じように
母乳を餌とすることが分かった。
優香の体が変化していた。
ちなみに監視カメラを見ているのは女性のミュータント兵のみである。
ただ何故?凶暴な怪獣からこのような人間的な行動をする
突然変異体が生まれたのかは謎に包まれたままだった。
尾崎達には
分子生物学者達が詳しい調査を今月中に始める予定だ」
とゴードン大佐から伝えられた。

(第23章に続く)