(第28章)『目に見えない敵』の襲撃!!

(第28章)『目に見えない敵』の襲撃!!

教祖は
ラグエルは『神の友』あるいは『光の世界に復讐する者』
旧約聖書外典のエノクの書に記述があるが、
エノクは天に上げられた程の人物だから
私の様な者にはエノクの真意は分からぬ!」
すると山岸が
「案外いい加減だな……」
と独り言のようにつぶやいた。
続けて教祖が
「月からの使者は美しいルシファーで、ラグエルのチェックをかいくぐり、
我々の傍にいた!『ミニラ』はハニエルと言う愛と美を司りキューピットの様な役割
を持っている!そしてルシファーには金髪の娘がいる!」
その時、山岸は
「それってまさか」
とつぶやいた。
教祖は
「そう!それが『ラジエル』と言う神秘の天使である!ラジエルは他の天使達が
全く知らない地上と天界の秘密を全て知り尽くしているのだ!」
と言った。山岸はいつしか強い興味本位で教祖の言葉に耳を傾けていた。
東京立川市の避難所で山岸は教祖に向かって
「じゃ?ゴジラジュニアは?」
と質問した。
教祖は
「分からぬ!あんな天使は見た事が無い!」
と答えた。
山岸は我に返ったように
「なら俺が付けてやろうか?」
と笑いながら言った。
教祖は突然怒り出し
「馬鹿者!天使に軽々しく名前を付けるな!」
と怒鳴られた。
山岸は縮こまって
「何だよ……人がせっかくピッタリな名前を付けてやろうと思ったのに……」
と一人言を言いながらギターケースを取り出した。
突然山岸は両手で口を押さえて激しく咳込み始めた。
両手を離すと白い粒の混じった血痰が付いていた。
山岸は
「何だこれ?」
と大声を上げた。
異変を察知したクリーンウェアーとマスクをつけた警備員が駆け付け、あわてて
無線を周りの避難民達に見られない様に静かに取り出し、小声で
「こちら!立川市の体育館の避難所!感染者です!名前は山岸雄介さん。
13歳です!彼の感染経路を調べてください!私を含めて多くの人が感染している疑いがあります!
直ちにここを隔離してください!繰り返します!」
山岸は激しい咳が止まらず、呼吸困難になっていた。
しばらくして別の警備員の無線から
「こちらデストロイア対策センター!品川のビルでデストロイアに襲われて
数時間後に発症した発端患者の山梨友紀さんと同じ高校に通っています!」
と返事が返って来た。
八丁堀付近の晴海運河で、運河の表面が3カ所青く発光していた。
それを見た直充は
「ここから八重洲にいるデストロイアに攻撃を仕掛けるつもりか?」
と大声で言った。
やがて爆発と共に巨大な水柱が立ち、
3体のゴジラは放射熱線を時間差で吐いた。

そして3体のゴジラは細い運河に進入して行った。
八重洲で暴れ回っているデストロイア証券取引所をまさに破壊しようとした瞬間、
ゴジラの放った放射熱線がその背中に直撃した。
さらにジュニアが放った放射熱線が後頭部に直撃し、
怒り狂って振り向いた瞬間、
今度はミニラが放った放射熱線が顔面に直撃して大爆発を起こした。
デストロイアは吹き飛ばされ証券取引所へ倒れ込んだ。
伊集院博士の研究所では、伊集院博士が
「私は物理学者だから……こんな話は信じるつもりはなかったが……
まさか本当にこんな事があるとは……」
と驚きとため息の混じった声でつぶやいた。
伊集院博士の仲間の物理学者達は
「一体この高校生は何者なんだ……」とか
「国連の物理学者の娘だそうだ……」等、色々話していた。
美雪も
「そうね……あたしも分子生物学者だけど……
私の身に起こるなんて想像も出来なかったわ……」
と素直に感想を述べた。

東京の八重洲証券取引所に倒れ込んだデストロイア
8枚の悪魔の様な翼を広げて瓦礫の山から立ち上がった。
怒りに燃えたデストロイアは狂ったように周りを見渡した。
しかし周りは静かでゴジラの気配は無かった。
デストロイアは翼をはばたかせて飛行を始めた。
尾崎、ゴードン大佐、及びミュータント兵は新・轟天号に乗り込んだ。
ようやく復帰したばかりのM機関の熊坂も乗り込んでいた。

彼がM機関の教官だったとき、部下のミュータント兵達が
X星人の統制官によって操られ、心ならずも彼らは
互いに死闘を繰り広げ、ほとんどがそこで帰らぬ人になった。
熊坂は傷だらけのまま東京の瓦礫から幸いにも救出されたが、
本人は大事な教え子を救えなかった自分を責め続け、しばらくうつ病になった。
そしてようやく復帰したのだった。

ところで新・轟天号は、真鶴や東京でのかつての度重なる
戦闘で激しい損傷を受けた為、船体の強度が非常にもろくなっていた。
その為、12年の歳月をかけ、人工スペースチタニウム(超合金)
を新しいパーツに作り直し、さらにデストロイア
ゴジラ対策の為、全ての兵器が火器兵器から冷凍兵器に切り替えられた。
両玄にはカドミウムミサイルを装備し、
ドリルの先端には通常のメ―サーの温度をはるかに下回る超冷凍砲を装備した。
各部には冷凍ミサイルランチャーを搭載、
また新たに船体を囲むように冷凍バリアを装備した。
これは冷気を纏ったバリアで、放射熱線や火器攻撃が本体に届く前に急激に冷却
して水蒸気に変え無能力化させるものである。まさに画期的なバリアを搭載した
新・轟天号は大雪が降る灰色の大空へ出動した。

(第29章に続く)