(第40章)M塩基とG塩基の正体!

(第40章)M塩基とG塩基の正体!

天井を突き破って現れた暁色の舌の様なものが米軍やミュータント兵の攻撃を受け、
天井の穴に引っ込んだ直後、「バーン!!」と言う大きな音がした。
驚いて全員が振り返ると先ほど凛と友紀が入って来た
ドアが丸ごと吹き飛ばされ、近くの壁に当たって地面に落ちた。
その壊れたドアから大量の埃と共に、
津波の様に暁色のアメーバが部屋になだれ込んで来た。
「嘘だろ?」
とカプライ。
「とにかく逃げるぞ!」
とゴードン大佐。
遺跡の調査チームはあわてて来た道を戻り、唯一の脱出路であるエレベーターに
向かって迷路のような廊下を逃げながら後ろを振り返り、ミュータント兵や米軍
はメ―サー銃で応戦した。
しかしそのアメーバの津波の様な勢いは止められず、
まだ執拗に獲物を追い詰めていた。
凛の護衛は友紀と凛の手を掴み英語で
「もう少しだ!がんばれ!」
と声をかけた。
ようやく分厚い扉の様なものが見えた。
その直後、天井で「バリバリ」という音が聞こえた。
全員その分厚い扉に向かって全速力で走りながら天井を見上げると、
厚い超合金の天井にヒビがクモの巣状に徐々に広がっていくのが見えた。
ゴードン大佐は
「ヤバい!」
と大声を上げると、扉を開ける為のスイッチを拳で叩き付け押した。
凛の護衛は徐々にクモの巣状にひび割れが広がりつつある天井を見上げ、
襲ってくる暁色のアメーバに向かってレーザ銃で応戦していたニックに向かって
「まずい!天井がもうすぐで崩れるぞ!」
と言った。
ニックは
「早く開けてくれ!状況は悪くなる一方だ!」
するとゴードン大佐の
「開いたぞ!」
という声が聞こえた。
全員その開いた扉に向かって全速力で駆けこんだ。
そのうしろを暁色のアメーバが津波のように押し寄せて来た。
暁色のアメーバがあと1mの所まで迫って来た時、無事全員扉の中に入り、
ゴードン大佐と凛の護衛はドアを閉めた。
その直後、激しい爆音と共に、怪獣同士が争う唸り声が聞こえたかと思うと、
逃げ出した部屋全体が地震の様に激しく揺れた。
さらに爆風で激しくドアが風船の様に膨らんだ。
やがて部屋はシーンと静まり返った。友紀は仄かに夢を見ていた。

特殊生物病院の診察室の待合室のソファーに友紀は一人で座っていた。
その隣に青年が座っていた。
青年は外国のフットボール選手の様な体格で、顔はとてもハンサムだった。
青年は友紀の顔を見て、ニコリと笑いながら
「君?元気?」
と話し掛けてきた。
友紀は少し戸惑った様子で青年の顔を見ていたがしばらくして
再び青年は
デストロイア事件?知ってる?」
友紀は少し曇った顔で
「ええ……」
と返した。青年は
「僕はちょうどその時に生まれたんだ……両親の顔はあまり覚えていないけど……
ママはJBSテレビのレポーターなんだ……そしてあの時、デストロイアに襲われた……
君の友達も襲われたの?」
と言った。友紀は
「ええ……」
その青年は
「そうか……」
すると外から看護婦の声が聞こえた。
友紀は
「じゃ!行くね!」
と言うと診察室に入ろうとした。
その青年が小さな声で
「ユ……キ……」
とつぶやく声が聞こえた時、頬に強い痛みを感じ、
友紀は仄かな夢から無理矢理、現実に引き戻された。
友紀は
「イタッ!」
と大声を上げて起き上がった。
すると目の前に凛の顔があったので心臓が飛び上がる程、
驚きあわてて起き上がった。
凛は
「何の夢を見ていたの?」
友紀は
「白馬の王子様の夢」
と答えた。
2人が周りをよく見るとあちこち大小様々な岩がゴロゴロ転がっていた。
その大きな岩の間から小さな鞄の様なものが見えた。
凛はそれを出して見た。すかさず友紀は
「ちょっと待って!ヤバいよ!」
しかし凛はその小さな鞄を恐る恐る開いた。その小さい鞄の中には35cm位の
大きさのカプセルの様な物の中にゲル状の液体が入っていた。
その2つのカプセルの真ん中には小さな細い注射針が置かれ、
止血の為に使うゴムも置かれていた。
その小さなカバンの裏に小さなラベルの様なものも見つけた。
ラベルには「ピンク色の液体はMウィルス 青い液体はMウィルス抗体」
と書かれていた。
友紀は
「Mウィルスって?何んなの?」
凛は
「マゾじゃないし、恐らくM塩基かしら……」
友紀は
「それじゃMウィルス抗体はワクチンの事ね?ラベルに、Mウィルス抗体を持つ
生物存在の確率は何万分の一に満たないって。いつか聞いたカイザーの事かしら?」
凛は
「多分……」
と曖昧に答えた。

(第41章に続く)