(第51章)蓮の苦悩

(第51章)蓮の苦悩

友紀は
「うーん!また貧血で倒れちゃいそうな……」
とつぶやいた。山岸は
「そうだね!……凜ちゃんは知らないけど……
FBI捜査官の人達が来て、先生たら!貧血で倒れたんだよ!」
と笑いながら言った。凛は恐らく救助艇で会ったあの人達だろうと思った。
凛は
「そうなの?先生って意外と打たれ弱いのね!」
山岸は「うん!ビックリするくらい!」
友紀は「あの顔とか傑作だったわね!」と
3人は長い間、笑いながらテレビを消すのも
忘れて話し込んでいた。山岸の部屋の3人は話題が尽き、
テレビに視線を戻すと最新のニュースが流れた。
日東ニュースキャスターの杏奈が
「次のニュースです!ゴジラ、ジュニアと謎の怪獣との戦いが
行われた中国の森から謎の発光体が確認されました!」
と言うとテレビ画面が変わり、中国の森を映し出した。
黄金、漆黒、暁色が混じった色の発光体が森の周りに点々と光っていた。
友紀は
「これ……まさか?」
凛は
「そんな!ありえないわ!全部消滅した筈よ!」
と思わず大声を上げた。
更に別のニュースの映像が流れた。
そこは先程の発光体が現れた現場近くの田舎町だった。
しかし様子がおかしかった。通りにはバス、車、自転車、オートバイ、
ニュース報道車、歩道の敷居が粉々に破壊され、無残な破片を周りに散らしていた。
ゴミ箱が、割れた窓ガラスと共に散乱していた。
建物の一部はバラバラになり、街灯らしきものが捻じ曲げられ、炎と煙が上がっていた。
友紀はその悲惨な様子を見て「一体?何が……ゴジラかしら?」
凛は言い知れぬ不安に駆られ
「分からないわ……でも違う気がする……」
とだけ答えた。
通りに漆黒、黄金、暁色の混じった影が走り去るのがテレビ画面に見えた時、
凛と友紀は一気に背筋が凍り付いた。
やがて画面が変わり
「この映像は数時間前に地元のテレビ局が撮った映像です!
その後、それを撮った地元テレビ局の人達の行方は不明です!」
と報道された。凛は
地球防衛軍やCCIはどうするのかしら?」
山岸は
「多分!調査をする為に中国に行くでしょ!」
と藁にもすがる思いで言った。
友紀は
「まさか日本に来ないよね?」
凛は
「分からないわよ……中国と日本は位置が近いから……」
と返した。

夏休みが終わり、凛が通う高校の教室から怒鳴り声が聞こえていた。
少し遅刻した山岸と友紀は、何だろうと思いながら教室に入って行った。
教室では蓮と凛が互いに喧嘩していた。そこに担任の原田先生が仲裁する為に入った。
しかし2人は原田先生を寄せ付けない程の殺気を放っていた。
蓮は
「お前もゴジラ族も!俺の父を殺したも同然だ!」
凛は
「違うわ!誤解よ!殺したのは……」
と言い掛けてすぐに黙った。蓮は
「俺の母親も同じだ!
父から生まれた俺が恐ろしくて!
怖くて!俺と向き合おうとしない!
俺は生まれるべきじゃなかった!
お前も同じだろ!」
凛は
「あたしは生まれた事を後悔していないわ!」
蓮は自分を指さしながら
「本当かな?自分が信じられるのか?こんな世界に生まれた事を本当に後悔していないのか?」
しばらく凛と蓮は互いに睨み合っていた。
クラスの全員は凍りつき……その2人の様子を眺めていた。
蓮は大声で
「クソ!何でもっと早く教えてくれなかったんだ!」
と言うと自分の机を蹴飛ばした。
凛は
「事実を教えるタイミングを間違えたのね……」
蓮は母親の顔を思い出し、泣きながら
「何で……俺の顔……見て笑顔を見せてくれないんだ……どうして?怯えた顔をするんだ!」
蓮は教室の真ん中に座り込み泣き崩れた。
凛はハンカチを取り出し、連の涙を拭いてあげようとするが蓮はその手を払いのけ
「触るな!」
と怒鳴った。
すると友紀がその様子を見て怒り出した。
「連君!人がせっかく親切にしてあげているのに!そんな言い方無いでしょう!」
蓮は友紀に向かって
「君には俺の苦しみはわからないんだ!」
逆に怒鳴り散らすと荒々しく教室のドアを開けて教室から出て行った。
教室は静寂を取り戻し、
原田先生は全員を席に座らせると皆に自習を言い渡し、
凛だけを職員室の呼び出し、その後蓮も呼び出して、喧嘩の原因を探ろうとした。
しかし2人は喧嘩の原因については一言も答えなかった。
それ以来、毎日学校に来るたびに2人の喧嘩が繰り広げられ、
とうとう職員会議沙汰になってしまった。
その後、蓮と凛の母親に
「今後の経過でどうしても態度を改めないのなら、残念ながら……どちらかを退学処分にする」
とかなり重い警告がされた。
美雪はすぐさま凛を呼び出し、蓮の事を話し合った。
「とにかく……彼は苦しんでいるのよ……友達にも先生にも
相談できないから完全に孤立しているのよ!それで一人で闇を
抱え込んでいるの!彼のお母さんもまだトラウマに怯えていて……笑顔が無くて悲しくて……」
と凛は言うと言葉に詰まって泣き出した。

(第52章に続く)

今日の変更はここまでです。
また明日載せます。
取りあえずシーズンⅢはあと3章で終わりそうです。
では♪♪