(第41章)ゴジラは人類の敵か味方か?

(第41章)ゴジラは人類の敵か味方か?

ジェレルは
「普通じゃ考えられない……何かのテクノロジーじゃないのか?」
翔太は
「昔のオキシジェンデストロイアみたいだな……」
しかしニックは
「まるで正反対だって!」
とすかさず英語で突っ込んだ。

痙攣を起こした友紀と山岸は口から微小デストロイアの破片を大量に吐き出したので、
ベッドや床や壁は血の様に真っ赤に染まった。
それから友紀と山岸はしばらく咳込んでいたが、
やがてすっきりした顔で看護婦や医師達の顔を眺めていた。
祥郷医師やカートー医師、プーラ医師はすぐに山岸と友紀の精密検査を行った。
その結果、体内にいた微小デストロイアは全て死滅していた。
「死滅しただと??まさか??医学的に考えられない!!」
と驚きを隠せなかった。
他の患者も今までの症状が嘘のように全快に向かっていると言う。
真鶴の病院の研究所のラボで、美雪や神宮寺博士、男女のFBI捜査官は、
Gメ―サー室前の隔離廊下にいた医師達の
「突然患者が全快した」と言う報告を受け、
あまりの出来事に驚きを隠せない顔をしていた。
その時、研究所のラボの病室のベッドから赤ん坊の泣き声が聞こえた。
デストロイアの子供が何を感じたのか、ただ大声で泣き叫んでいた。
一方別のベッドで寝ていた優香の頬にも涙が伝い、静かに泣いていた。
美雪はそんな優香の頬から流れた
涙をハンカチで拭いながら
「憎い相手なのに……悲しいのね……」
とつぶやいた。
優香は美雪の声を聞くと一層目頭が熱くなり、
涙が溢れ出し止まらず、嗚咽を漏らした。

八重洲の巨大なクレーターから3体のゴジラがフラフラ立ち上がった。
そして倒れたビルの瓦礫の山から緑色のデストロイアの本体が現れた。
緑色の本体のデストロイアは逃げようとするが体内の
オキシジェンデストロイアを完全に中和されてもはや虫の息だった。
やがてデストロイアは力付き地面に倒れ、二度と動く事は無かった。
凛は倒れたままデストロイアの最後を見届けた。
海へ帰ろうとするゴジラとジュニア、ミ二ラに向かって凛は
自分が今まで疑問に思い続けた事を言った。
ゴジラ……あなた達は人類の敵なの?」
3体のゴジラはふと立ち止まり、ゆっくりと振り向いた。
ジュニアとミ二ラは心配そうにゴジラの顔を見た。
ゴジラは首を左右に振った。
さらに凛はあふれ出る思いで
「じゃあ?味方なの?」
しかしゴジラは再び首を左右に振った。
凛は
「何故?町を壊すの?」
ゴジラは驚いた様に目を丸くした。
ジュニアは複雑な顔をして、ミニラを見た。
ゴジラは、大雪が降り積もった壊れかけのビルや、
建物の瓦礫の山に写っている自分とジュニア、ミニラの影をじっと眺め、
上を向いて夕日が完全に沈むまで吠え続けた。
それからジュニアとミニラを見る
と背を向けて海へ去って行った。
ジュニアも悲しそうな顔をするとミニラと共に海へ去った。
凛は
ゴジラ……ミ二ラ……ジュニア」
とつぶやき意識を失った。

―数時間後―

地球防衛軍「特殊生物病院」の研究ラボの一室では、
女性FBI捜査官がレポートをパソコンのメールで書いていた。
内容は以下の通りである。
「日本の八重洲を始め、世界各地を襲った新型の『デストロイアウィルス』
の大流行により、大勢の人々に死者が出た。
ミュータント兵の覇王圭介さんと美雪さんの娘である
『音無凛』は何故か瓦礫の山から地球防衛軍の乗組員達により発見され、
現在治療を受けている。
命に別条はないようである。
ウィルスを媒介した緑色の怪獣は死亡していた。
その直接の死因は何かのワクチンによるものである。
その後、そのワクチンは国連の物理学者の伊集院博士並びに
スタッフチームが製造したと判明したが、誰が使用したかは不明。
またデストロイアとTVレポーターの間に生まれた子供を私は同僚と共に実際この目で見た。
しかし美雪さんとミュータント兵の覇王圭介さんの関係と同様、
詳しい情報は地球防衛軍の最高機密扱いになった。
またそのTVレポーターの出産に立ち会った医師や看護婦達もマスコミには一切口をつぐんだ。
『凛さんと同様に対テロ対策センターの関係者が監視する予定』としか聞いていない。
またある情報筋からアメリカの地球防衛軍の関係者から
日本の地球防衛軍本部の波川司令官にデストロイアウィルスを一掃する為に封鎖した
東京を早朝に最新の冷凍メーサー爆弾による『絨毯爆撃作戦』
が行われる可能性があるとの情報を得た。
そして私の同僚はすぐにその爆撃作戦を辞めさせるようにアメリカの地球防衛軍に厳しく警告した。
何故ならデストロイアに感染している人間も同時に一掃されるからである。
しかし幸いにも誰かが大気中に散布した
『対デストロイアウィルス』のワクチンにより全てのデストロイアウィルスは死滅した為、
計画されていた『東京絨毯爆撃計画』は中止され、東京封鎖も解除された。
その後、その事実はすぐにアメリカのCIAにより全てもみ消されている。以上」

書き終えるとそれはワシントンのFBI本部に送信された。
その隣にコーヒーを持って来た男性FBI捜査官は窓を眺めた。
女性FBI捜査官もつられて窓の外を眺めた。
大雪の白銀の世界が黄緑色のデストロイアの血で染まり、
黄緑色の雪に交じって細いデストロイアの赤い破片が降り積もっていた。
それは幻想的で美しかった。

(第42章に続く)