(番外編)肝試しの怪

(番外編)肝試しの怪

夏の夕方、凛と友紀と洋子、山岸は、
幽霊が出る噂のある廃ビル前に立っていた。
凛は
「いよいよね!」
と言った。
山岸は
「でも!まだ暗くなっていないよ?」
洋子は
「うーん」
と考え込んだ。
凛は笑いながら
「なに?怖いの?」
すると山岸は
「いや……そういうわけじゃないんだけどさ……」
と困った様子で言った。凛はしばらく笑っていたが、
突然、何かを感じたのか険しい顔に変わった。
友紀は
「どうしたの?具合が悪いの?」
凛は
「皆はここにいて!」
と言うと一人で廃墟の中へ入って行った。
3人は
「ちょっと!」
と一緒に中へ入ろうとした。
しかし凛が厳しい顔で制止した。
そして十分後、
「ギャー」
と言う悲鳴が聞こえたかと思うと、
同じ学校の女子生徒数名が
ビルから飛び出してきて3人の前に息も荒く倒れ込んだ。
「何?何が起こったの?」
と友紀。
「ちょっと!ヤバいよ!」
と洋子。
「凛ちゃん!大丈夫かな?」
と山岸の不安の声が上がった。
1時間が経過した。
それでも凛は戻ってこなかった。
友紀は
「ちょっと!怪獣じゃないの?地球防衛軍に通報しなきゃ!」
と携帯を取り出した。しかし山岸は
「待って!まだ今はやめておこう!」
友紀は
「でも!」
とかなり焦っていた。洋子は
「あたし!様子を見に言ってくる!」
と歩きかけた時、
一人の女子が洋子の足を強く掴み
「駄目!コックリさんが!」
と訳の分からない事を叫んだ。
山岸は
「君達コックリさんなんかやっていたの?」
その女子が泣きはらした顔で頷いた。
するとまた廃ビルから
「ギャー」
と女性らしき悲鳴が聞こえ、
また「ガシャーン!」とガラスが割れる音がした。
友紀は
「ちょっとマズイよ!どうしよう!」
山岸は
「あの悲鳴!凛ちゃんかな?!」
と不安そうな顔で言った。
するともう一人の女子が
「違うわ!あたしのせいよ!あたしがコックリさんを怒らせたから……友達に……」
とただ取り乱した様子で泣き喚いた。
今度はガラスの壊れる音や男性の怒鳴り声が聞こえ、さらに野獣のような唸り声も聞こえた。
3人は状況が把握できず、混乱していた。
山岸は
「凛ちゃんの携帯は?」
友紀は
「駄目!さっきから何度もやっているけど……通じないわ!圏外だって!」
と言った。
洋子は
「圏外?ここは東京の街のど真ん中よ!」
3度ガラスが割れる音と野獣の様な唸り声が響くと、
今までの騒ぎが嘘の様に静かになった。
一人の女子高生を肩に抱えて凛がビルから出て来た。
3人は慌てふためいた様子で駆けつけた。
凛の身体は泥だらけで、靴にガラスの破片が幾つも刺さっていた。
洋子が何か言う前に凛は、そこにいた怯えきった女子高生を睨みつけた。
抱えている女子高生は気絶していた。
凛は癇癪玉が破裂したかの如く、数人の女子高生に向かって
「本物の悪霊なんか呼寄せて一体どういうつもり!コックリさんは不完全な降霊術なの!
なにが降りて来るのか分からないの!
動物や子供の霊もいれば悪霊だって!」
としばらくガミガミ怒鳴りつけた。

帰り道、洋子は
「あー怖かった」
友紀は
「肝試しより怖かったよね」
山岸は
「僕は凛ちゃんの顔が一番怖かったよ」
と言った。
その事件以来、学校の女子生徒達は二度とコックリさんをやらなくなったという。

ちなみに洋子はこの恐怖体験を凛と女子高生の証言を元に
「本当にあった怖い話」と言う番組に送り、それは一ヶ月後に放送された。
また、山岸はあの晩、部屋に泊まって行った凛から、
人に言えない恐怖体験を味わったという。

(番外編完)

これでゴジラの自作小説(シーズンⅢ)はすべて完結です。
では♪♪