(終章)影が行く!

(終章)影が行く!

再び凛が通う高校の休み時間に洋子が
「その豆人間はね……」
と熱心に話していた時、凛は以前見たその話を思い出しながら
「確か……それ『サヤ豆人間』じゃないかしら?」
と訂正した。
洋子は
「そうそう!なんか最近そういうのを見ていないから
『何豆』だったか忘れちゃった!」
と笑いながら言った。
凛は
「『盗まれた街』は少し読んだ事はあるわ!
いくつか映画も見たわ!」
洋子は
「面白かったよね!」
凛は
「特に1978年アメリカのリメイクが一番良かったね!」
すると山岸が話に入ってきて
「でも最後は救われない話だったな~」
凛は
「あら?どうして?」
山岸は
「だって最後その豆人間の侵略が成功しちゃう訳でしょ?」
凛は
「それがいいんじゃない?」
と言った。
そこに原田先生が通りかかり
「何を話している?また変な噂を流すつもりか?」
と唸った。

洋子は気分を害した様子で
「そんな事していません!」
原田先生は
「変な噂を流したら容赦しないぞ!」
と大声を上げるとツンとした様子で歩き去った。
洋子は
「なによ……偉そうに!」
と憤慨していた。
それから、洋子は以前、山岸に話した廃ビル
にまつわる怖い話を凛に始めた。

東京の山根ゆかりの娘の山根優香の自宅。
尾崎と優香は息子の蓮の事で言い争いをしていた。
尾崎は
「自分の息子をいつまで拒絶するつもりなんだ?」
と怒鳴った。優香は
「息子が怖いの!」
尾崎は椅子から勢い良く立ち上がり
「いつまでそうしているつもりなんだ!」
優香は泣きながら
「じゃ!どうしたらいいの?」
と負けじと怒鳴り返した。尾崎は優香の両肩を優しく掴み
「自分のトラウマに向き合うんだ!」
優香は
「望んでもいないのに!何で!理不尽よ!不公平よ!」
と頭の中がパニックになり、その場に泣き崩れた。
その様子を自分の部屋のドアを少し開け見ていた蓮は
「母さんのいくじなし……」
と小さくつぶやくいてドアを荒々しく閉めた。

杏奈は地球防衛軍本部に向かう
ゴードン大佐を玄関まで見送っていた。
玄関には、迎えに来た黒のベンツに乗ったジェレルとアヤノがいた。
ゴードン大佐は
「これから中国の壊滅した
田舎町の調査にいってくるよ!何ヶ月かかかるかな?」
と少し笑いながら言った。杏奈は
「何か月でも!いつでもいいわ!」
と笑い返した。そして2人は別れのキスをした。
その様子をジェレルとアヤノが羨ましそうに見ていた。
ゴードン大佐は
「そんなに俺達が羨ましいのか?だったら結婚すればいいじゃないか?
楊国花は陳天来の子供を妊娠したみたいだし……」
と言った。
2人は顔を見合せ
「そんな……いきなり言われても……」
と困った顔でジェレルが言った。
ゴードン大佐は
「冗談だよ!」
と言うとベンツに乗り込んだ。
アヤノは顔を赤くして、2人に見られない様に必死に顔を隠していた。
やがてベンツは出発し、杏奈はそのベンツが見えなくなるまで見送ると、
テレビ番組収録のために日東テレビ局に向かった。
その途中、スーパーで買い物をしていたゴードン大佐の元彼女の桐子と工藤に出くわした。
桐子のお腹は大きく膨れていた。妊婦の様だった。
工藤の両手をつないでいる2人の子供もいた。
杏奈はその親子が買い物を終えるまで眺めた後、
急いで車を走らせ、日東テレビ局へ車で急いだ。

一方ゴジラ達は中国近海の海底で次の大きな戦いに備えて静かに眠りについていた。
上海の廃墟と化した田舎町では再びテレビで見たあの影が走り去った。

(完)