(第54章)最後の希望

(第54章)最後の希望

ゴードン大佐は
「こちら!艦長ダグラスゴードン大佐!応答せよ!」
と大声で言った。
しばらくノイズが続いていたが、波川指令が
「こちら!地球防衛軍司令官波川!応答せよ!一体??
どうなっているの!情況を報告せよ!」
と言った。ゴードン大佐は
「何と説明していいのか?」
と少し考えながら、状況を短く簡潔に説明した。
「つまり!あのデスギドラの同族は通常の兵器では殺せないんです!
それで!奴はこの東京に封印するしかないんです!
我々の人類の未来はあのゴジラ、ミニラ、ケーニッヒギドラに託されたんです!……
とにかく我々は全力でその3体の怪獣の援護をやります!
もう時間はありません!以上!」
というと無線が切れた。
波川司令は無言で無線機を握っていた。
自衛隊の直充は
「どうしたんですか?」
波川司令は
「いや……何でもありません!なんですか?」
直充は
「先程、ゴードン大佐から、
東京の惨事の状況を録画した映像が送られました!」
波川司令は
「分かった!すぐ行く!」
と返した。

デスギドラは
「あの家畜の腹を見てみろ!」
ミニラもゴジラもケーニッヒも美雪の意識の方に顔を向けた。
美雪の意識は
「何でみんなこっち見るの?殺される……」
と思った時、ふと自分の腹に金色の光を感じた。
美雪の意識は
「なに?でも温かい……」
とつぶやいた。
デスギドラは
「この女は絶対生きては返さんぞ!」

抹殺派の母親は息子が言った『大人達の分からず屋!』
と言う言葉に苛立ちを交えながらも冷静になろうと必死に
「あのね……黒ラブと怪獣は全然違うの!」
と言い聞かせようとした。
黒いフードを被ったカルト教団の教祖が動揺した様子で
「何故?世界を破壊しないのだ!それにあの怪獣は『死神』
であり!魔王サタンだ!」
とテレビでたった今立ちあがったデスギドラを指さした。
信者は
「彼は悪魔の子では無いのでは?」
教組は
「そんな筈は無いぞ!」
しかし別の信者は
「でも!予言を邪魔するゴジラ達と共に人間を守ろうとしている!」
教組は
「それでは?『イヴ』の祖先のあの女は何なのだ!」
信者は
「『聖母マリア』なのかも?」
教組は
「確かに『悪魔の子』から邪悪なオーラが消えつつあるわい!」
もう一人の信者は
「予言は外れたんだ!やった!」
と黒いフードを一斉に天井高く投げた。教組も怒ること無く冷静に
「それでは予言のどこが間違えていたのだ?」
と深く考え始めた。
そのカルト集団の様子を抹殺派と保護派の人々は唖然と見てい
た。浩子は泣きながら
「何してんのよ!」
と八当たりに怒鳴った。しかし彼らは全員、浩子の怒鳴り声を
無視し、飛び跳ねて喜んでいた。もはや完全に彼らの居る一角は別世界だった。

手足をじたばたさせて泣きじゃぐって反抗する子供を母親は必至に
「お母さんわね……ただ……」
となだめようとしていた。
しかし子供は大声で泣きながら
「大人達も大嫌い!母さんも大嫌い!動物と怪獣が全然違うなんて嘘だ!
嘘つきだ!同じだよ!怪獣だって動物だよ何も悪い事していないのに!」
とうとう母親は
「いい加減にしなさい!怪獣なんてね……怪獣なんて……」
そこまでしか続かず泣き始めた。
子供は泣きながら
「怪獣は僕の味方だよ!」
とだけ言うと立ち上がり、泣きながらトイレに走って行った。
また他の子供もつられて
「嫌い!」
とか
「母さんの分からず屋!」
「父さんの分からず屋!」
と言いながらトイレに走り去った。
両親達はそれを呆然と見送り、無言になった。
今度は父親が母親に食って掛かった。
「どうして!子供に気持を分かってあげないんだ!」
「いい加減その偏見をやめろ!」
とたちまち夫婦喧嘩となった。

(第55章に続く)