(第55章)復活の日

(第55章)復活の日

3体の怪獣はデスギドラの火砕流撃弾を食らい、
とうとう体力が限界に達し、体中に激痛が走り、その場を動けなくなった。
美雪の意識も絶望と不安と恐怖の逆境の中
「何か行動を起こさなくては?」
と考えていた。しかし考えても絶望と恐怖や不安が頭から離れず、
どうすればいいのか全く見当がつかなかった。
その時、美雪の首にかけていた十字架のインファント島のお守りが強く発光した。
あまりの眩しさに両目を覆った。
ミニラは動けない状態のまま
「人類はたくさん存在しても……一人の人間はかけがえの無い存在だ!」
デスギドラは
「その根拠は?」
ミ二ラは
「僕の友達の子供は一人しかいないんだ!」
デスギドラは
「友達とは何だ?」
ミ二ラは
「僕の大切な人……僕と同じ様に大切な仲間がいる……」
デスギドラが笑いながら
「怪獣がたった一人の人間を大切にする?意味が分からんぞ!
人間は『生命』と『死』と言う『見えない力』から目をそむけて、
ただ『目に見える物質』だけにすがりつき、
『常に自分を偽り』続けながら存在している!
彼らを本当に守りたいとでも思うのかな?人間に恋するケーニッヒと同罪だな……迷妄に堕ちたものよ」
デスギドラは動けないミニラに執拗な攻撃を始めた。
ゴジラも応戦しようとするがその場を動くことができず、
その様子を見ている事しか出来なかった。
ゴジラは怒りの唸り声を上げてもがくがどうしても体の激痛で力が抜け、身体は動かなかった。
とうとうミニラの悲痛な助けを求める声が聞こえた。
その時、ゴードン大佐が
「冷凍メ—サー発射!3体の怪獣を全力で援護せよ!」
と号令をかけた。
尾崎は冷凍メ—サーのスイッチを押そうとした。
しかしデスギドラは轟天号の攻撃をいち早く察知し、
素早く轟天号に向かって火砕流撃弾で先制攻撃を仕掛けた。
尾崎は火砕流撃弾を危うくかわしたが先端のドリルをかすめた。
その間、ゴジラとケーニッヒの目の前に強い光が差し込んだ。
そしてぼんやりとプテラノドンの様な影と人間の影が一瞬だけ見えた。
ゴジラ
ラドン……」
ケーニッヒは
「美雪?」
再び強い光の中に10円玉位の大きさの虹色の3つ首の竜の様な胎児の発光体が現れると
「ア…イ…ス…ル…モノ…ミ…ラ…イ…ヲ…マ…モ…リ…センソウヲ…オワラセテ!」
その幽かな声はゴジラとケーニッヒ、ミ二ラにも聞こえた。
幽かな声を聞いた3体の怪獣はまるで力を得たかのようにこれまで一番強く大きな吠え声を上げた。
心臓の鼓動が「ドックン!ドックン!」と高鳴り始めた瞬間、大きな爆発が3カ所で起こった。
その緑色の爆風に煽られ、デスギドラはそのまま遠くへ弾き飛ばされた。
轟天号でジェレルは「東京で謎の爆発を3カ所!確認!」
ゴードン大佐は驚いた表情のまま「一体?……何があったんだ……」
アヤノは困った顔で「分かりません……」と返した。
3カ所の爆心地からは背びれから青白いギザギザの
翼の生えたゴジラと黄金の翼を広げたケーニッヒが立ち上がった。
後にミニラもフラフラと立ち上がった。
しばらくしてデスギドラは動揺しつつも邪悪な笑みを浮かべた。
「だが……家畜の女の魂はあともうすぐで私が抹殺して……」
と言って美雪の魂がうずくまっていたと思われる瓦礫の方を見た。
しかし美雪の魂はそこにいなかった。

真鶴の避難所の隅っこでは、先ほどまで予言がはずれて
大喜びしていたカルト教団達は、何故予言が外れたか理由を考えていた。
信者の間では
「まさか?彼女が『悪魔の子』をあそこまで変えるなんて……」
とか
「信じられない……」
とか
「ダミアンさえ手が付けられなかったのに……」
とさえ聞こえた。しかし教祖は
「恐らく彼女はカイザーの様な特別な力は持っていない……普通の人間の女性だ!」
すると信者が
「一体彼女にどんな力が?」
と言った。教祖は
「恐らく……我々に欠けている『愛』や『希望』だと思う!
ひよっとしたら彼女は『マリア』の様に『悪魔』では無く
『神』に選ばれた女性なのかも知れない……我々の行いを正すために……」
周りにいた信者達は納得した様子で教祖の言葉を聞いていた。

保護派のグループから特撮マニアらしき青年が立ち上がり、抹殺派と保護派にこう言った。
「『怪獣は醜い化け物だから、町を守るために抹殺して、
怪獣のいない理想の世界を作りたい!』と言う抹殺派の主な意見と
『一部の怪獣は地球や人類を守ってくれる!だから怪獣を保護
して怪獣と人類が共存する世界を作りたい!』と言う保護派の主な意見がある……
それぞれそれなりの理想はあるけど、ただ抹殺派のあなた達は硬直した理想像ばかり求めたがるから、
具体的な批判の意見を言えても、言うことは似たり寄ったりだ!
『怪獣映画はどうせ子供が見るものだから面白くない!』とか
『怪獣はただの醜い化け物で人間が作り出したエゴだ』とか。
もちろん『作り手のエゴ』だとか
『着ぐるみを使ったやり方は時代遅れだ』とかの意見は、
一部のファンやアメリカの監督のローランドエメリッヒさんにも言える事だけど……
とにかくもっと人の全く違う意見を、何と言えばいいのかな、要はもっと広い視野を持とうって事かな?
とにかく互いに非難してばかりじゃ不毛だと僕は思う!」
と言った。
一部のマニアも少し怒っていたが考え込んでいた。
抹殺派も保護派の人々も無言となり、
浩子や一部の人々のすすり泣く声だけが避難所の体育館に聞こえていた。

(第56章に続く)