(第45章)被害調査

(第45章)被害調査

小美人は
「それもまた何かの因縁があるとして受け入れるしかありません……」
と答えた。凛の個室で凛と小美人の会話が静かに続いていた。
小美人は
「人類や怪獣達は生き続けます!生きている限り『心』と共にこの神話は続きます!
そしてそこに決められた結末は存在しません。
『破滅的な結末』か?あるいは『人類と怪獣が共存』する結末か?」
凛は無言となった。再び凛が口を開き
「『終わらない神話』もあるの?」
と質問した。
小美人は
「あるかも知れません……」
と言うと消えた。美雪はふと思い出した様子で
「そうだ!あなたが目覚める前に山岸さんから息子が凛ちゃん
にクリスマスプレゼントを……確か?貰ったっけ?」
と言うとあわててあたりを探し始めた。
凛は
「クリスマスプレゼント?何かしら?でもアニメオタクだから
きっとロボットだとか?ヒロインの人形だと思うけど……」
美雪は
「あった!」
と言う紙袋と赤いリボンに包またCDを取り出した。
凛は
「CD?アニメソングかしら?開けてみて!」
そのCDの入った紙袋を開けると中に小さなメモが入っていた。
そのメモには
「君の意識が戻ったと聞いたので!10時に一緒に!これが僕
の今の気持ちです!ひょっとしたら君もジュニアに対して同じ気持ちかも?」
と書いてあった。そして凛が時計を見るともうすぐ朝の10時を指すところだった。
メモを見た美雪は急いでCDプレイヤーに掛けた。
エレキギターのイントロが流れた。
凛が
「このアニメの曲!聞いた事がある!
確か……『1\3の純情な感情』だっけ?」
と言った。
やがてその曲の歌詞が流れた。
しばらくして美雪も尾崎の事を思い出し、目頭が熱くなった。
やがてその曲の歌が終わると凛は自然に涙があふれ、
山岸とジュニアの事を想い、ただただ泣き続けた。
美雪も尾崎の事を思い静かに泣いていた。

3体のゴジラや凛とデストロイアとの壮絶な戦いから一夜明けて、
国連や政府は東京の被害状況を把握する為、本格的な調査を始めた。
その調査員として、地球防衛軍のM機関の尾崎真一やダグラスゴードン大佐を始め、
分子生物学者の音無美雪や神宮寺博士、山根健吉、国連の物理学者の伊集院研作博士、
CCIの関係者達が集められ、『デストロイア被害調査グループ』は様々な調査に乗り出した。
まず東京の被害状況だが、やはり今年の夏から冬まで復興を進めていただけあって、
今回の戦いはかなり痛手となっていた。
殺された遺体の回収作業は別の調査グループが行った。
死者数の計算や倒壊され建物の数、被害総額と復興の予算を確保する準備、
その他色々な調査が行われた。
また国連のアメリカの分子生物学者達や古生物学者達も介入してデストロイアの調査を独自に行い、
急激な進化の主な原因として『厳しい寒さで急激に突然変異を繰り返した』とか
デストロイアが強くなった理由は地球温暖化により、
大気中の温室効果ガスに含まれる二酸化炭素の増加が原因』
とメディアや科学雑誌に自信満々で公式に発表していた。
ただしデストロイアの体内から発見されたG塩基の事には全く触れられていなかった。
一方『デストロイア被害調査グループ』は、
極秘に優香から生まれたデストロイアの子供と、
優香以外に緑色のデストロイア本体に襲われた女性について焦点に徹底的に調べ上げた。

地球防衛軍の特殊生物病院以外の病院でデストロイアの子供が誕生していないか、
またそれらしき子供の行方等を、あらゆる資料を出来るだけかき集め、調査を続けた。
調査の結果、多くの女性が緑色のデストロイアに襲われたと警察やCCIに通報している事が分かった。
その中の13人の若い女性はデストロイアに襲われ、命からがら逃げ出していた。
その時の恐怖体験を11人の女性達は涙を流しながら話した。
優香以外、デストロイアの子供が生まれたと言う情報は掴めなかった。
しかしデストロイアに襲われた13人の内、2人の女性からデストロイアの子供が生まれたと言う
未確認情報が流れた。
その為、『デストロイア被害調査グループ』
はすぐに真鶴にあるCCIの特殊生物研究所を訪ねた。
美雪は幾分神経質に研究所の中に入って行った。
ここはかつて美雪が隔離されていた場所だからである。
彼女が覇王圭介の子供を妊娠したと言うことで……
彼女はここを逃げ出し、飲まず食わずのまま、
CCIの内閣のトップ2人とその関係者に、秋風が吹く肌寒い中を、
病院の薄物のガウン一枚のまま裸足で追い回される羽目となった。
だからここは出来れば『行く』のも御免こうむりたい所だが、デストロイアの調査の為、
渋々そこを訪れた。
出来れば二度とここへは足を運びたくなかったのに……
と心の底からそう思った。

(第46章に続く)