(第50章)離脱と同化

(第50章)離脱と同化

サンドラは洋子と長野先生、レベッカを長い間睨みつけていた。
洋子と長野先生は警戒した表情で彼女を睨みつけていた。
レベッカは恐怖に怯え、ただサンドラを顔面蒼白のまま見ていた。
そしてサンドラは片手を洋子と長野先生、レベッカに向かって持ち上げた。
蓮は
「やめろおおっ!」
と大声で怒鳴り、レベッカ、洋子と長野先生を助ける為、走り出そうと床を蹴ろうとした。
その時また蓮の脳裏に
「助けて……」
と声が聞こえた。
凛にも同じ声が聞こえた。
ガーニャ火炎放射機を投げ捨て両手を広げサンドラと蓮と洋子、レベッカの間に割って入り
「やめるんだ!サンドラ!もう!復讐は終わりにするんだ!」
と大声で言った。
凛は、凍りつき砕け散った氷の破片の間から黄金に輝く自分の小さい鏡のペンダントを見つけた。
その瞬間、サンドラの表情が険しくなった。
突然、「ガリガリ!」と壁を擦る音が聞こえ、
サンドラは背中に繋がれていた紫色の触手に引きずられ、また外へ出ようとした。
そこにガーニャが「サンドラ!」と走り、彼女のヒグマの様な手を掴もうとした。
しかし長野先生や蓮、サミー、ジーナに押さえ付けられた。
ジーナは
「駄目よ!2人を見たでしょ!」
サミーは
「今!彼女に触れたら殺されるよ!」
FBI捜査官の男は
「落ち着くんだ!何か別の方法があるはず!」
しかしガーニャはサンドラを救おうと必死に抵抗し
「サンドラああぁぁっ!」
と絶叫した。
彼女は再び怪獣の頭部に取り込まれた。
ゴジラの咆哮が聞こえた。
怪獣はまるでそのゴジラの咆哮に起こされたかの如く目を開け、天に向かって大きく咆哮を上げた。
美雪と神宮寺博士は地元の警察から
「サンドラ!網走厚生病院に出現!テロリストは一人を除いて全滅!」
と報告を受けた。
美雪は
「……一人を除いて全滅って?」
神宮寺博士は
「原因は?」
すると地元の警官は混乱した表情で
「実は……サンドラが現れて……」
神宮寺博士は
「彼女が?どうやってですか?」
ガーニャ達から聞いた地元警官の話はかなり奇妙だった。
美雪は
「怪獣と宇宙人が一時的に分離した?」
FBI捜査官の女は
「そんな事がある訳……」
その時、彼女の携帯に元FBI捜査官の同僚から電話がかかってきた。
「もしもし?僕だよ!」
「本当なの?怪獣と宇宙人が離脱したって言う珍妙な話は?」
「本当さ!初めてのケースだ!」
「それで?今!彼女は?」
「また消えた!どうやら怪獣の本体に戻ったらしい!
ゴジラが来た時に先程まで静止状態だった怪獣が眼覚め動き出した!ここからよく見えたよ!」
と言うと画像が送られた。部屋があったと思われる壁に大きな穴、
そこから紫色の怪獣がゴジラに向かって歩き出すのが見えた。
「それから分離した宇宙人は仲間の2人に復讐したよ!
レベッカ容疑者だけは生き残った!」
その思わぬ言葉に彼女は驚きのあまり口を押さえ
「嘘……そんな事が……どうやって?」
「3人の内2人はヒグマの様な爪でかき氷にされたよ!」
「かき氷って?冗談でしょ!」
美雪は眉をひそめ
「かき氷??何の話?」
と聞いていた。
電話終えた彼女は
「……彼の話によると宇宙人と怪獣が一時的に分離して!
裏切り者の3人のうち2人に復讐してかき氷したらしいわ!
あなた信じられる??」
美雪は信じられず
「人間かき氷?」
隣で聞いていた神宮寺博士は
「かき氷?まさか?」

 優香と杏奈は、網走厚生病院のすぐ近くにの高い丘にある民宿に、
他の取材陣と共に避難していた。そこでも2人のレポーターは、
雪がちらつく中、防寒着に身を包み、丘の上から網走厚生病院の広場に現れた
サンドラとゴジラの戦いと街の様子をレポートし続けた。
優香は
「網走厚生病院の広場でゴジラと謎の巨大生物との戦闘が始まりました!
しかし網走厚生病院内の立て篭り事件は依然として膠着状態のままです!
人質の人達は大丈夫でしょうか??」
隣にいたスタッフが数枚の紙を優香に渡した。
杏奈にも優香と同じ様な紙を渡した。
優香は
「今!新しく入ったニュースです!地元の機動隊や国際警察、
地球防衛軍の怪獣犯罪調査部が突入を開始しました!
犯人の4人のテロリスト達は激しい銃撃戦の末、
容疑者一名を残して全滅したそうです!」
撮った映像をチェックしていたカメラマンがふと再生した映像を見ると、
網走厚生病院の占領されている50階付近の上空に細い線と人影らしきものが写り込んでいた。
50階の窓は割れていた。
不審に思ったカメラマンがあわてて画像戻すと、
まだガラスが割れていなかった。
続いて「パキン!」と小さくガラスが割れる音が聞こえ、人影と細い線が一瞬だけ映り込んだ。
それから人影は動かなくなっている紫色の怪獣の方へ向かい消えた。
別のスタッフは
「何だろう?錯覚かな?」
カメラマンは
「さあ分からない!」
と思わず首をかしげてその映像を何度も繰り返し見た。

(第51章に続く)