(第57章)悪の両極

(第57章)悪の両極

尾崎が
「でも!町はおろか文明だって壊滅させる力が!」
と言い掛けた時、ニックが
「おい!人が倒れているぞ!覇王だ!!ギドラなのか?
でも大丈夫じゃないかな?
だって仮に覇王がケーニッヒでも、今体内のエネルギーは弱まっている!だろ!」
ゴードン大佐は
「とにかくすぐに彼を救出するんだ!」
と大声を上げた。
大きなモニターには、血まみれで倒れている覇王が映っていた。
そして、覇王は東京の崩れかけたビルの瓦礫の山から救出された。
教組は話を続けた
「怪獣は『悪の両極』によって変わる事もある!」
すると沙羅は興味深々で
「それって?」
と聞いた。
教組は
ディアボロスつまりルシファーと、サタンだ!」
沙羅は
「それ知ってる!ルシファーって言う強く美しい天使
が天国から地獄に堕ちてサタンになったんでしょ?」
教組
「よく知っているな!でも本当はルシファーとサタンは別人だ。
ルシファーは女性的で美しくて、人間を盲信、熱狂させて妄想を起こさせ、現実から引き離す。

逆にサタンは男性的で醜く、幻想から引き離す。破壊の恐怖で人に疑いの心を起こさせ、命令する。
唯物主義に人を陥れる。その中間にいるのが我々人間なのだ!」

偶然観光に来ていたイスラエル人とパレスチナ人の子供達が
「もうそろそろ互いに話し合おうよ!これじゃ!僕達の国と同じだよ!」
と言った。沙羅は教祖が言っていた事が理解出来ず首を傾げながら考えていた。

真鶴に帰還する途中の轟天号内の医務室のベッドの上で覇王が起き上がろうとすると尾崎が
「まだ!寝てろ!」
と彼を止めた。覇王は
「俺の本当の姿は……」
と言い掛けたが尾崎は
「大丈夫さ!例えお前が何であれ!危害は加えない!
戦友だからな!」
と笑いながら言った。覇王は尾崎に耳を貸すように頼み小さい声で
「分かっていない!俺はケーニッヒギドラだ!」
尾崎は
「それじゃ!……小美人が言っていた事は?」
覇王は
「本当だ。彼女が人間に対して嘘を付いたためしがないならな!
俺の正体が分かった以上!人類にとって倒さなくてはいけない存在だろう?今なら確実に殺せる!」
するとその声を聞いていたゴードン大佐が
「駄目だ!それは轟天号艦長の俺が許さない!お前が例えケーニッヒギドラだとしてもだ!
お前にはまだやるべき事がある!」
覇王は
「美雪に会う事か?」
ゴードン大佐は頷いた。その時、尾崎がボソッと
「ミ二ラ……自立したな!」
覇王は
「強くなりそうだ!」
ゴードン大佐は
「親子そろってタフだな」
ニックとグレンは
「全くだ!」
と同時に言った。
その後、轟天号は無事、真鶴の学校のグラウンドに着陸した。
轟天号のハッチが開いた途端、グラウンドから拍手や口笛大歓
声が聞こえた。アヤノ、ジェレル、グレン、ニック、やっと歩けるようになった覇王、
尾崎がハッチから出て来ると、杏奈が駆け出し、尾崎に抱き付いた。
一方ゴードン大佐は桐子と言う女性隊員を持ち上げていた。
杏奈はとうとう堪忍袋の緒が切れたかの如く、ゴードン大佐に食って掛かった。
覇王は
「よっぽど!我慢していたんだな!」
その後、覇王はニックとグレンに支えられ、歩きだした。
病院に着くまでの間、大佐と杏奈の2人は激しく言い争いをしてい
たが、やがて病院の前まで来ると、X星人の総攻撃の時にもらった
銀色のカメラを杏奈はバッグから取り出し、無言でゴードン大佐の手に押し付け歩き去った。
「やれやれまるでゴジラだな!」
とグレン。
「彼女が?」
とニック。
「歩き方がまるでそっくりだな!」
と覇王。

(第58章に続く)