(第48章)見えない怪獣達

(第48章)目に見えない怪獣達

地球防衛軍の護衛の一人が自室で
パソコンのメールに文章を書いていた。
地球防衛軍最高機密文章」「音無凛に関する監視報告書」
「彼女の様子に特に変化無し!ギドラらしき高エネルギーが確認されたが詳細は不明。
凛は意識不明の重体であったが奇跡的に一命を取り留め轟天号に救出された。
またその間の記憶はない模様、今後も監視を続ける予定。以上」
メールはCCIや国連、地球防衛軍に送信された。

凛はしばらく母と同じ分子生物学者を目指していた。
徹夜で理系科目を美雪に徹底的に教えられ、凛は猛勉強をしたが、点はほとんど取れず、
色々な記憶術の通信学習等を試しても全く点が上がらず、いつも美雪に怒られていた。
その内、本人はすっかりやる気を無くし、
理系科目の猛勉強はもはやどうでもよくなり、
これまでの様に一日中友紀や山岸等の友達を遊びほうけ、
とうとうそれが祟り、理系のテストでは結局最下位記録を更新した。
それが原因で美雪との親子関係が険悪になり、いつも口論となった。
凛は唯一の言い訳として
「0点は一度も取った事は無いわ!」
と頑なに主張を続けていた。
とうとう美雪は
「あなたのあの若き天才学者の前世があったとはやっぱり思えないわ!」
と彼女の見苦しい言い訳にほとほと困り果て、溜息交じりに本音が出るほどだった。
しかし最後に美雪は苦笑しながら「でも……これが自然なのね……」
とつぶやいた。

凛はその後、分子生物学者の道はすっぱりと諦め、
近くのラーメン屋でアルバイトをして、
お金を貯め込んではすぐに使い果たす、だらしの無い生活を続けていた。
しかしやがてこのままではいけないと思い、ベビーシッターに興味を持って、その勉強を始めた。

ところで尾崎は精神的にまだ立ち直っていない山根優香の事
を心配し、彼は優香にプロポーズをして、優香と結婚した。
そしてM機関の間では「おしどり夫婦」と呼ばれるようになった。
ゴードン大佐は最近付き合っていた桐子にフラれ、その後、
杏奈との格闘の末、ようやくプロポーズをして結婚にこぎつけた。
凛の家にはよく彼らが来て、いつも賑やかになっていた。

デストロイア事件から数日後、
品川のあるビルで、デストロイアに殺された人々の合同の葬式が行われた。
本来は12月20日に亡くなった場合は通夜が21日に行われ、
告別式は12月22日になるはずだが、当時は品川の街中でデストロイア
潜んでいるという噂もあり、東京中が「目に見え無い敵」でパ
ニックになっていたので、ゆっくりと葬式さえ行えなかった。
ようやく数カ月して市民達は落ち着きを取り戻したので、
だいぶ遅れた4月20日午前に通夜があり、
午後から告別式が行われのだった。
その中に山岸と両親、友紀と両親や亡くなった7人の友達の両親も喪服で参列していた。
凛は告別式の後、公園のブランコの上で静かに友達の別れを惜しんで泣いていた。
そこに例の教祖と信者が通りかかった。
教祖は
「天使の子が泣いているぞ!」
と驚いた様子で声をかけたので
凛は
「御免なさい……友達の事で頭がいっぱいなんです!一人にして下さい!」
と丁寧に言った。その時、別の方向から
「おや?こんな所で会えるのは?奇遇ですね?」
と声が聞こえた。それはトオルだった。
凛は
トオルさん……」
教組は
「おい!天使の子を陥れる邪悪な蛇よ去れ!」
と怒りだした。トオル
「酷いですね……そんな言い方は無いでしょう?それに私が彼女をどう思おうと私の勝手ですよ!」
と冷たく言うと周りの部下に
「この人達をつまみ出しなさい!」
と命令した。体格の良い部下達はその教祖と信者達をあっさりと公園の外につまみ出した。
凛はその様子を唖然として見ていた。
涙はすっかり乾いていた。品川の公園でトオル
「やれやれ……困った人達ですね!とりあえずここで騒がれても色々迷惑なので!」
凛は
「でも!本当はいい人達で!色々説得したら許してくれるんじゃない?」
と言った。トオルは苦笑しながら
「何を言っても教祖が変わらなきゃ無駄でしょうね!」
凛は突然
「見えるんですか?」
トオルが驚いた様子で
「何が?」
凛は
「怪獣達の原生物が……」
トオルは少し二ヤリとしながら
「知っていたんですか?」
と聞き返した。凛は頷いた。
「実は僕には霊視能力がありましてね!」
トオルが凛の周りを見ると,
半透明の背中にハリネズミの様な棘だらけの甲羅があり、
4本足がある竜や4本の脚を持ち、右手に巨大なカマ、
左手に巨大な槍を持つカマキリの様なものが空中をスイスイ滑る様に歩い
ていた。さらにタコ様なものや、星の形をして4本の触手があるクラゲの様なもの、
プテラノドンの様なもの、背びれがあるトカゲの様なもの、モスラの様なもの等、色々見えた。

(第49章に続く)