(終章)人類を守ると言う事は?

(終章)人類を守ると言う事は?

それは尾崎が美雪の病室に見舞いに来る数日前。
美雪は覇王に
「本当に?地球防衛軍やめちゃうの?」
と聞いた。覇王は
「ああ……そう言う事になるな!」
美雪は
「どこに行くの?これから?」
覇王は
「さあ~決めていないよ!行く場所は分から無い!」
と寂しそうに返した。
美雪は
「そう……」
とぽつりと言った。
覇王は
「お前はこれからどうする?やっぱり!国連の分子生物学者と
して怪獣の研究をするのか?」
美雪は
「そうね……あたしには帰る場所があるのに……あなたには……」
と悲しそうな返事をした。
覇王は
「どうした?生気の無い返事をして?俺がいなくて寂しいのか?」
美雪はムキになって
「別に寂しくなんて!」
と言ったが覇王は
「いや!寂しいんだろう?俺も寂しいからな……
ところで一つ気になる事があるんだが」
と切り出した。美雪は
「何?」
と返した。
覇王は
「何故分子生物学者の道を選んだんだ?
俺が学んだことだが、いいか?
人類を守ると言う事はまず身近な人間を守ることから始まるのだ!
自分の両親!友達!同僚!そして……
君の次の世代の子供!
それが君には必要なんだ!
尾崎を俺もお前を誰よりも大切に思った!
だからX星人やデスギドラに立ち向かったんだ!
お前に本当に守りたい者はいるのか?」
少し厳しく言った。美雪は無言となった。
しかし覇王はふと穏やかになり
「まあ……人は努力をしている限り迷うに決まったものさ!
お前もそうなんだろう?」
そして覇王は
「そろそろ行こうと思う!説教くさい事を言ってすまない!」
しかし美雪は首を振った。覇王は
「だから……もし罪をつぐなって帰って来れたらさ!
結婚とかそういう柄じゃないんだけど……」
美雪は
「えっ?」
覇王は
「でも俺は誰よりもお前の事が好きで愛してる!
これからずっと!」
と言うと病室の外へ出た。
しかし美雪はベッドの布団を跳ねて起き上がり
「待って!」
と言うと振り向いた覇王を強く抱きしめ、泣きながら唇にキスをした。
覇王も抱き返しキスを返した。
覇王は
「またいつか!会おう!」
と言うと堂々と踵を返し、力強く廊下を踏みしめ、
威風堂々とエレベータ―の所まで歩いて行った。
そのうしろ姿を、美雪は泣きながら手を振り、
彼がエレベータに乗って見えなくなるまで見送った。
その翌朝、ニュースでは
「謎の黄金の光が空へ消えた」
と報道された。一部では
「ケーニッヒギドラでは?」
とか
「竜型のUFO」
だと証言する者もいたが真相は分からずじまいに終わった。
最後の思い出から我に返った美雪は仮設研究所の前で
無意識の内にそれを思い出し泣いていたが、涙を拭きながら
「こんな所で泣いていたら覇王に馬鹿にされる!あたしがしっかりしなきゃ!」
と自分に言い聞かせるように言うと仮設研究所のドアを開けて中へ入って行った。

(完)