(第15章)UFOと謎の女

(第15章)UFOと謎の女

 マークは美雪の驚きに満ちた表情を見て笑いながら
「いや!有り得ない事じゃないさ!何故なら
ミトコンドリア・イヴ』は何も特定のアフリカにいた人物の
一人の女性を指す訳では無くて時代と共に変動するからね!
つまり現代に生きている女性の内、誰かが数十万年後の『ミトコンドリア・イヴ』になりうるんだ!
つまり仮に君が『ミトコンドリア・イヴ』の場合、君は女系を通じてたくさんの子孫に恵まれる訳だ!」
「じゃ?まさか?覇王君はY染色体アダム?」
「そういう事だ!良かったよ!元気になって!」
美雪は少し寂しそうな顔をすると
「面白い話をありがとう……でも……ジラやX星人…ミュータント達だって……」
と言うとしばらく無言になった。
マークも再び少し暗い顔になり
「一人にしてあげよう……」
と小さくつぶやくと部屋の外へ出て行った。

 地球防衛軍本部の「特殊生物犯罪調査部」。
 慌ただしく凛の部屋に入って来た蓮は
「大変だ!小笠原諸島の周辺で20体以上の怪獣の変死体が引き揚げられたらしいぞ!」
凛はそれに関する報告書をパソコンでまとめながら
「ええ……知っているわ!」
と答えた。
蓮は凛の深刻な顔を見て心配になり
「どうしたんだ……何があったんだ……」
と尋ねた。
彼女はあくまでも冷静を装い
「何でもないわ!」
と答えた。
「本当に大丈夫か?今言った怪獣の変死体の事か?」
凛は自分の心配事をわざと隠そうと今度は精一杯明るく振舞いながら
「いや!本当に……本当に何でもないから!」
と答えた。
蓮は納得こそしていなかったが
「分かった!この仕事を終えたら詳しく聞かせてくれ!」
その蓮の言葉を聞いた凛は何か言おうとしたが蓮はすぐに仕事の話を始めた。
「その怪獣の変死体が倒れている海底の岩に付着していた
肉片の鑑定で謎の毒素が検出されている!しかもその謎の毒素は
M塩基が作り出した特殊なタンパク質を分解する働きがある事が分かったそうだ!
おまけにG塩基も検出されている!その謎の毒素を持つ犯人がM塩基破壊兵器の仕業なら?
『小笠原怪獣ランド』の怪獣達も危ないんじゃないか?」
「実は……その20体の怪獣の変死体と小笠原怪獣ランドで保護されている
13頭の怪獣のDNA鑑定が行われたけどすべて一致しなかったわ!
それで小笠原怪獣ランドの関係者に聞いてみたら……
もう!すでにM塩基対策として遺伝子操作でM塩基の代わりに
G塩基を組み込んであって13頭の体内にM塩基は無いわ!だから大丈夫よ!」
「でも『M塩基破壊兵器』の研究開発用に遺伝子操作した可能性もありうるな……
ただあくまでも可能性だよ……ほら?以前、X星から来た
G塩基を持つアオシソウが小笠原怪獣ランドに漂着して寄生したって可能性もありうるからな!
勿論それが真実なら僕だって許せないさ!」
「確かにどちらもありうるけど……そう言えば!また新しい情報が入ったって聞いたけど……」
「実は東京港区で三角のUFOと共に宇宙人らしき女が目撃されたようだ!」
それから蓮は一枚の写真を取り出し
「しかも!その女の隣にX星人らしき人物も映っているだろ?」
凛はその写真を見ながら
「本当だわ!これがトリックじゃなければね!」
「この写真の鑑定は元FBI捜査官で宇宙人やUFOの専門家
の二人に頼んだから!絶対間違いないよ!」
と自信満々に答えた。
「もしかしたら?この人ならママの行方を知っているかも?」
「あとM塩基破壊兵器のありかもね!」
それから2人は自分の車に乗り込み、その怪しい女とUFOが
目撃された東京港区の現場へ向かった。

 友紀はパーティの準備の為に、買い物袋から幾つかの調味料
やビールや赤ワイン、牛肉のパックを取り出した。
 友紀は袋から玉ねぎやピーマン等の野菜の他に
赤い蓋の付いた調味料の瓶を取り出し、台所の机に置いた。
 洋子がその調味料の瓶のラベルを良く見ると、英語で
『バタム・ハニー』と書かれていたので友紀に興味本位で
「これ?何?海底の蜜?」
友紀は自慢したくて堪らない様子で
「あたしの家から持って来たの!試しに一口舐めてみたけど……凄く甘くておいしいわよ!」
洋子はその調味料の赤い蓋を開け
「どれどれ?」
と言いながらスプーンに茶色の蜜を取って一口舐めてみた。
「あっ!本当に甘くておいしいけど……なんか味が濃いわね……
余り入れ過ぎると気持ち悪くなるくなるかも?大丈夫かしら?」
「大丈夫よ!何回舐めても気持ち悪くならないわよ!おいしくて幸福な気持ちになるわよ!」
しばらく洋子はうーんと考え込んだ。
友紀は心配そうな顔で
「どうしたの?」
と尋ねた。
「実は……『バタム・ハニー』で思い出したけど……
ネットのブログに記事に『この蜜には中毒作用があるらしい』ってあっ
たのを見た事があるわ……本当かどうかわからないけど……」
友紀は笑いながら
「まさかぁ!ありえないわよ!」
しかし洋子は真剣な顔で
「他にも『この蜜を大量に摂取すると体質変化を起こす』とか書いてあったわ……」
友紀は思わず吹き出し
「体質変化?まさか?美人になるとか?
だったら健康にいいじゃない!実際普通の料理や飲み物に使われているし……
何か問題があればもうニュースになっているわよ!」
とあくまでも否定した。

(第16章に続く)