(第23章)愛し合う二人

(第23章)愛し合う二人

大戸島米軍基地から少し離れた洋館内。
凛は、極秘指令保管庫で手に入れた、キャンサーカクテルと言う毒薬・
何者かに遺伝子操作で改良された昆虫のDNAデータ・
RNA(リボ核酸)分子機械のブルーアイに関するデータを整理していた。
他にもナハボ語の暗号文章で書かれた極秘ログ(記録)データを発見していた凛は
手の平サイズのパソコンのキーボードとカーソルを忙しなく動かし、ナハボ語の暗号文章を解読していた。
やがてパソコンは自動でそのナハボ語の暗号文章を解読作業を進め始めた。

その間、凛は3日前に東京にある自宅に山岸を招いて、彼と愛し合った事を思い出していた。
二人は上着や下着を全て脱ぎ捨てて、裸で凛の白い清潔なベッドの上に座っていた。
凛は両頬をピンク色に染めたまま何か囁いた。
それを聞いた山岸はメガネをかけ直し、ゴクッと喉を鳴らした。
そして彼は凛の大きな両乳房をじっと見つめた。
凛は少し笑っていた。
山岸はおずおずと口を近づけた。二人はベッドの上に倒れ込み、
山岸は彼女の両足を優しく左右に広げた。
「お願い。愛して。」
彼女は額にしわを寄せて気持ち良さそうにそう言った。
凛は山岸の両手をギユッと掴み、触れさせた。
山岸の手に柔らかい感覚が伝わってきた。
ベッドは僅かにギシギシと軋んだ。
凛は甘い息をもらした。山岸も凛の顔を見つめ、息を荒げた。

大戸島近海。
轟天号オペレーター室。
「なあ、最近、国連の分子生物学者達が、ギドラ族に関する面白い事実を
あの科学雑誌に掲載したのを知っているか?」
「ああ、ナショナル・ジオグラフィックだろ?」
「雑誌によれば、ギドラ族の仲間のグランギドラの幼体は1億5千年前に地球に飛来して」
「それ、俺も読んだぞ。キングギドラバガンの正体はシェイプシフターなんだぜ」
「へえ、あの色々な姿に変身出来る変化怪物か?」
「あとグランギドラは数多くの恐竜や翼竜を捕食して、原始的な細胞じゃなくて
原形質に変態させる能力がある事が分ったらしい。」
「ついでに月で発見されたケーニッヒギドラが残した青いゲル状の液体は青い原始細胞では無く。」
「やっぱり原形質の群れだろ?」
「そう!しかも多種多様の生物の原形質だ。」
「だとしたら?アオシソウに寄生されて誕生したノスフェラトゥ(デコイ)達も人間の死体に寄生する時はやっぱり宿主を原始細胞に戻すんじゃなくて、あらゆる死体の細胞を原形質に戻した後に宿主に模倣するのかな?」
「間違いないと思う」
「そういやジェレルはノスフェラトゥのコロニーの事を忘れていたよな。」
「そうだな、ロシア、カナダ、中国、日本の北海道に何万個のコロニ―が点在している。」
「最近じゃ、東京にも3か所もコロニーが出来たよな。ところでお前は何を期待しているんだ?」
とニック。
「まあ見てなって!」
グレンはモニターの監視カメラの映像を顎でしゃくった。
彼らは南極でゴジラの氷漬けを監視していたと同じように、
轟天号内の各乗組員の部屋を始め、様々な場所を監視している。
それは、最近増えつつある1年前の地球防衛軍のようなスパイ事件や、
怪獣を悪用した怪獣テロリストを監視する為である。
万が一、轟天号がテロリストにハイジャックされたり、
轟天号内の武器やその他の重大な極秘情報に関するデータが盗まれれば一大事である。
それに備えてニックとグレンは怪獣との戦闘が無い限りはこのような監視を続けているのだ。
アヤノがまるで何かの異変を察知したかのように急にベッドから立ち上がった。
その姿は何故か野性的でとても輝いて見えていた。
「おい、どうしたんだ?」
アヤノは何故か落ち着かない様子で部屋の中を行ったり来たりしていた。
「どうしたんだ?」
「なんだか落ち着かないな」
アヤノは部屋のある方向をただじっと見ていた。
「なんだろう?まるで何かを察知したみたいな。」
「確かあっち側の轟天号の鋼鉄の壁の先は。」
「大戸島の大海原さ!でも彼女はあの先で何が見たいって言うんだ?」

大戸島大学からモーテル風ホテルに戻った後、真鍋は
覇王と蓮の部屋でくりくりの可愛い目を輝かせ、MBI捜査官の蓮と覇王に色々質問していた。
例えばMBI捜査官は怪獣が絡んだ失踪事件の他にどんな怪獣犯罪の捜査をするのか?
この質問に対して覇王は丁寧になるべく具体的に答えた。
「怪獣を悪用したテロリストや犯罪組織の一斉検挙。
怪獣を密かに密輸しようとする密猟者の取り締まりも行う。」
「あとは比較的おとなしく人間に害を与えない怪獣を保護したりするよ。」

大戸島近海。
未知の病原菌に感染したガニメの群れを放射熱線で跡形も無く葬り去った後、ゴジラは洞窟を出た。
ゴジラは海中を泳いでいたがどうもフラフラしていた。やがてゴジラは泳ぐ気力を失い、
近くの岩場に腰を下ろした。
大切な核エネルギーを少々使いすぎたようだ。
すでに体内に蓄えた膨大な核エネルギーのほとんどは底を付いている。
人間達には信じられないかもしれないがつまり私は寿命が近いのだ
遅かれ早かれ私は寿命を迎え、肉体は消失してしまうだろう。
放射熱線は一度に大量のエネルギーを使うので寿命はさらに縮まる。
あのゴジラもせっかく仲間に出会ったばかりなのに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
だが、私が目の前で寿命を迎えたらあのゴジラも悲しむだろう。
人間達も悲しむだろうか?それとも喜ぶだろうか?
少なくともこれだけは言える。
我々ゴジラ族は永遠に生きているように見えて実は永遠では無いのだ。
既に私の息子も大勢の仲間も家族もいる。
だからこそ病原菌に感染された怪獣達を野放しにする訳にはいかないのだ。
奴らが私の息子や大勢の仲間を襲撃する危険性がある。
あのゴジラを襲ったメガヌロン達の様に。

(第24章に続く)