(第24章)異形の神

(第24章)異形の神

「遺伝子は出来るだけ多くの子孫を残そうとする。 リチャード・ドーキンス

午後7時25分。
轟天号の艦長室。
艦長であると同時に対テロ精鋭部隊のSPBの隊長である
ダグラス・ゴードン上級大佐は仲間のアヤノとジェレルの不可解な言動に頭を悩ませていた。
彼は、艦長室の椅子に座り、特殊生物病院の精神鑑定の精神科医
アヤノの会話のやり取りを記録したビデオを艦長室の目の前にある大きなモニターで見ていた。
「貴方は見たんですか?」
「あたしは。」
しばらくアヤノは黙っていた。
「でも貴方は」
精神科医が言いかけた時、不意にアヤノは口を開いた。
「貴方なら知っている筈です。」
「では異形の神とは何者でしようか?」
「全ての怪獣の創造主です。」
「異形の神はあなたに何を望んでいますか?」
「彼らの望みは単純よ。先生。
彼らは宇宙怪獣ギドラ族やバガン族。
そして僅か一握りだけ生き延びた人間やミュータント達の肉体を
利用して新しい子孫を残そうとしているの。
あのゴジラだって貴方達や怪獣達と戦う一方で自分の子孫を残す為に
メスのラドンと交尾して次の世代の子供を未来に託そうとするでしょ?
だからあたしは異形の神が望むように今、その子供を作る相手を探しています。
それで異形の神の望み通りに妊娠が成功すればあたしの胎内で
生まれた新しい命は、凶暴な怪獣や宇宙人達に襲われる恐怖、
そしてなにより放射能放射性物質に汚染される恐怖から解放されて、
誰もが幸せに自由に生きられる事でしょう。」
「異形の神とは外なる神の事ですか?」
「いいえ、違います彼らは旧支配者です」
「つまりクトゥルフ神話ですね」
「その通りです。先生。ただし、太古の昔に南極に飛来した『古のもの』とは別の存在です。
異形の神は高い知能があるの。
大戸島で大昔から海の怪物と恐れられている呉爾羅族もその異形の神の仲間です。
「では次の質問です。
貴方が頻繁に聞くと言う名状しがたい呼び声は貴方を呼ぶ声ですか?」
「はい、意味は全く分かりませんが」
アヤノは引き攣った笑みを浮かべたところで記録ビデオは終った。
その後、ゴードン上級大佐は精神鑑定の結果が書かれた報告書を読んでいた。
「精神鑑定の結果、様々な精神疾患の症状は
一切見られないので精神状態は良好だ。
だが、彼女の精神状態は何らかの特殊な状況に置かれている為に
一時的に妄想が生じているのでは無いかと思われるのでどこまで真実かは分からない。
少なくとも断眠や感覚遮断が主な原因とはいえない。」
さらに別の報告書にも手を付けた。
それはジェレルの精神鑑定結果が書かれた報告書だった。
ジェレルは過去にノスフェラトゥと言う宇宙人に襲われ、
以来アヤノが同じ宇宙人の仲間で自分を襲おうとするという悪夢に頻繁に悩まされていた。
現在、彼はアヤノや他の仲間と深く接する内に信頼関係が生まれ、
悪夢は全く見なくなっていた。
だが彼はノスフェラトゥとは全く別の妄想に取りつかれているらしい。
その記録ビデオには、茶髪の髪で日本人の丸い顔で鼻が高く、
なかなかのイケ面のジェレルと精神科医のやり取りが記憶されていた。
「貴方はアヤノさんが異形の神の信奉者だと?」
「はい、」
「アヤノさんが時々、異形の神に見えると?」
「間違いありません!だから言い様の無い恐怖に時々、駆られる時があります。」
ジェレルがそこで黙り込んだところでビデオは終わった。
精神鑑定の報告書には、以下のようにあった。
「精神鑑定の結果、様々な精神疾患の症状は
一切見られないので精神状態は良好だ。
ただ、最近、ジェレルさんと同じように、
急に目の前に廃墟になった東京の街が見え、
たまたま近くを通った他の人間達が怪獣の姿に見えたと
周囲の人間や地元の精神科医に訴える奇妙な現象が徐々に蔓延しつつある。
共通の主張は『異形の神』もしくは『旧支配者』。
そして廃墟の街の姿を摸した空想と現実の狭間の怪獣世界の存在を訴え、
有名な芸能人や一般の人々にもそのヒステリーは広がっている。
例えば有名な下着会社の社長の山梨友紀さん。
彼女は3日前から廃墟となった東京の姿を摸した
怪獣世界を通して自分の夫が 『異形の神』か『旧支配者』の姿に見えたと私に相談してきた。
ただしこれはマスヒステリー現象であり、ある程度、収拾がつけばいずれは収まる」
ダグラス・ゴードン上級大佐はジェレルと
アヤノの精神鑑定の報告書を読み終えた。
もうすぐ定年なのに困ったな。
彼は困った表情で白い短い髪をボリボリ掻いた。
そう言えば最近の雑誌を読んだが、
怪獣世界の正体が時空の亀裂と言う説は全くのデタラメだったようだ。
最近では死後の世界や精神世界と言う説が有力だと言われているが謎のままだ。

凛は山岸とのことをまだ思い出していた。
凛は急に起き上がり、凛の上にいた山岸に馬乗りになった。
そして胸元まで伸びたブロンドの髪を揺らし、腰を前後に大きく振り始めた。
凛はふっくらとした両頬を真っ赤に染め、口を大きく開け、甘い声を何度も漏らした。
凛と山岸の心臓は激しくドクドクと大きく鼓動していた。

彼女の両乳房はゆっくりと柔らかく上下に大きく揺れていた。
とても美しくて芸術的だと山岸は思った。
次第に凛の腰の前後の振りは大きく早く大胆になって来た。
凛は両目をつぶり下唇を軽く噛んだ。
凛は額にシワを寄せて獣のように唸った。
凛の腰はすでに目にも止まらぬ速さで前後に揺れていた。
とうとう凛と山岸は性的興奮が絶頂に達した。
山岸は「あああっ」と太い声を上げた。
凛と山岸は全身、熱くてたまらず汗をかいていた。
山岸はすっかり照れてしまい、顔を更に赤く染めた。再び熱いキスを交わした。
凛は、「また山岸君としたい!」心の底からそう思った。

小さな機械音と共に(解読完了)と言う表示が
パソコン画面に表示された。凛は我に返った。
解読された暗号文章がパソコンの画面に日本語で表示された。

(第25章に続く)