(第3章)取引

 (第3章)取引
 
BSAA北米支部
マツダ・ホーキンス代表の言葉にジル、クエント、
烈花法師、鋼牙は無言で考え込んでいた。
しかし幾ら考えても誰一人答えを出した者はいなかった。
暫くしてマツダ代表は再び口を開いた。
「その事についてはいずれ各々の心の中で幻想か現実か答えを得るだろう。
まあー16年前の御月製薬の社長の御月カオリさんの結婚話を無理矢理、
他のBSAA隊員や職員に押し付けたりする
トールマン元BSAA代表と僕とは全然違うのは確かだけどね。
さあー話題を変えよう!」
マツダ代表は穏やかな笑みを浮かべた。
クエントは力無く笑った。
一方、何故か烈花は顔を赤くしていた。
続けてマツダ代表はこう言った。
「今回はジルとクエント、そして烈花法師と
冴島鋼牙の4名はそれぞれ二組となり、御月製薬の
新型ウィルス開発に関する調査を進めて貰いたい。」
「分った!」と烈花法師。
「理解した!」と鋼牙。
「久しぶりに腕が鳴るわね!」とジル。
「まさかジルさんや烈花法師と鋼牙さんと仕事ができるなんて夢の様です!」とクエント。
「そうそう、さっき復帰パーティでジルはBSAA隊員や職員から
耳にしていると思うのだけれど!」
「はい!秘密組織ファミリーの長にしてシモンズ家の現当主!」
「名前はジョン・C・シモンズ!
3年前にメトロポリタン美術館で会った事がある。」
「彼は真魔界で目撃されている!」
「彼は憑依されている!彼に憑依したホラーは
魔王ホラー・ベルゼビュート!奴は真魔界に住む
メシア一族の全ての魔獣ホラー達を統括する大君主だ!」
「とんでもない奴じゃないですか!」
「奴は強大な力と高い知能と能力を持っている。」
「それをまざまざと見せつける様な映像がさっき届いたよ!
あのアメリカ合衆国のエージェント組織『DSO』からね!
そしてある疑惑が浮上した訳だが。」
「それってまさか例のロス・イルミナス教団の残党が元大統領の
一人娘のアシュリー・グラハムさんを再び誘拐された事件とGウィルスに
感染したと思われる人間が暴れ回ったと思われる事件……
まさかとは思いますが」
「そう、彼らはアシュリーさんを道具として利用する為に誘拐し、
プラーガーの卵を再び植え付けて彼女が勤務する聖ミカエル病院を
アメリカ合衆国征服の拠点として手中に収めようとしたらしい。」
マツダ代表は目の前のスクリーンに映像を映した。
目の前のスクリーンに映像を映した。
そこはどうやらセントラルパークにある森の中だった。
「セントラルパークのテロ用防犯カメラですね」
森の中には黒いフード付きの服を着た数人の男達と
背の高い紫色のフード付きの服を着た男がいた。
また大きな木の板に十字架に架けられたイエスの様に磔にされた
金髪にオレンジ色のセーターを着て緑色のスカートを穿いた
アシュリー・グラハムらしき女性の姿があった。
背の高い紫色のフードを被った男は輪の中にいた
黒いフードの男に注射器を手渡した。
直後、いきなり轟音のような雷鳴が響き、八色に輝く
稲妻が注射器を手渡された黒いフード付きの服を着た男に直撃した。
頭上から八色に輝く稲妻の直撃を受けた
黒いフードの男は悲鳴を上げる間も無く崩壊した。
全員が驚き、振り返ると黒いスーツにネクタイをした若い男が立っていた。
恐らくジョン・C・シモンズで間違いないだろう。
彼は天に向かって右腕を上げていたので
さっきの八色に輝く稲妻は彼が放ったようだ。
またジョンの隣には両頬まで伸びた黒味を帯びた茶髪。
キリっとした細長い茶色の眉に榛色の瞳の若い女性もいた。
恐らく件のGウィルスに感染していると思われる人物だろう。
しかし感染しているなら人型を維持できない筈だが。
彼女は確かに人間の女性の姿を保っていた。
ロス・イルミナドス教団達は謎の女や
ジョンに対し、異常なまでの敵意を向けた。
そしてクロスボウ、ナイフ、オノ、カマ等それぞれの武器を構えた。
続けて紫色のフードを被った男はスペイン語
『殺せ!血祭りに上げろ!』と叫んだ。
彼の叫び声と同時に一斉にジョンと謎の女に襲い掛かった。
その瞬間、謎の女は顔面に
蠅の前翅と平混翅の形をした模様を浮かび上がらせた。
続けて謎の女は目にも止まらぬ速さでジョンを庇う様に先頭に立った。
謎の女の両手から鋭利な長い鉤爪が生えて来た。
謎の女はたった一人で突撃して来た
ロス・イルミナドス教団の軍勢に挑んだ。
謎の女は鋭利な長い鉤爪が生えた右手を目にも止まらぬ速さで振り回した。
次々と黒いフード付きの服を着た数人の男達の
筋を正確に切り裂いて行った。
同時に首筋を切断された黒いフード付きの服を着た男達はそのまま首筋から
噴水の様に大量の血を流し、呼吸出来無くなって即死して行った。
更に両肩の皮膚が十字に裂けた。
そして大きな丸いオレンジ色の眼球が現われた。
一人残ったロス・イルミナドス教団のリーダーと思われる
紫色のフード付きの服を着た男は凄まじい怒りを見せた。
同時に残像が見えるかのような高速移動で
謎の女の目と鼻の先まで接近した。
沈黙したままロス・イルミナドス教団のリーダーの背の高い
紫色のフードを被った男のスピードを遥かに凌駕するスピードで移動した。
続けて右手から5本の長い鉤爪を繰り出した。
(恐らくプラーガーが寄生している
中枢神経のある脊髄を狙ったのだろう。)
右手から繰り出された5本の鋭利な鉤爪は男の身体を貫通し、
脊髄ごと彼の体内に寄生していたプラーガー
(後のDSOの分析により支配種と判明)を抹殺した。
そして紫色のフードを被った男は口から大量の血を吐いた。
紫色のフードを被った男はそのまま大量出血により、失血死した。
監視カメラの映像はそこで終った。
「この後、アシュリーさんは謎の女と
ジョンの手によって無事救出されたよ!
彼らがアシュリーさんを救出した理由は彼女がジル・バレンタインさんの
担当の精神科医だったからだそうだ!謎の女は身辺捜査をした結果、
彼の屋敷のメイドさんでフルネームは
メアリー・ロレーン・ウィスリーと言う名前だね。
普段、周囲にはメアリー・ウィスリーと呼ばれているようだね。
ジョン・C・シモンズはまだ現存している
Gウィルスの研究をしていたようだ!
しかし今回はアンブレラ社やウィルフォーマ社が出来なかった
Gウィルスの強化と完全制御の研究をしているらしい。」
「そんの。なんだ?Gウィルスって?」
「あのGウィルスは感染すると殺しても殺しても
予測不能な劇的進化を遂げて蘇り、無限に強くなるG生物に変身します。」
「殺しても、進化して!強くなるなんて……」
「そんな生物!聞いた事も無いぞ!」
「ついでにベルゼビュートは気に入った人間の女性に
自らの細胞で作り出した寄生虫を人間の全身の皮膚を
覆い尽すと言う方法で寄生させ、人間の血液、魂、肉体を残し、
人間の状態を保った超人として改造させる能力があるそうだ。
奴は自らの細胞で生み出した金属の性質を持つ寄生虫
『G』の力を閉じ込めているのだろう。」
「うわー、じゃ!
人間の知能も理性も残っているとすれば!厄介な相手ですね。」
「それから彼はBSAAと元老院接触してきてね!
彼は魔獣ホラーと人間の二種会談を行いたいとの事だ!
どうやらある取引がしたいらしい!」
「そうか、確か奴は千年前に未知の存在
だったレギュレイス一族を封印する為に
白夜騎士と協力し、自ら魔獣ホラーの軍隊を率いて戦った過去がある。
恐らく魔獣ホラーと人間にとって共通の脅威となる存在
『T-エリクサー』を開発する御月製薬が現われたからだろう。
「成程、今回の御月製薬が違法で開発している
新型のTウィルスの件ですね」
クエントは両手でポンと叩いた。
「二種会談はいつ?」
「今日の午後に行う予定だよ!」
「随分急な話だぜ!」
「そして元老院代表に冴島鋼牙氏と烈花法師。
僕達BSAA代表として
ジル・バレンタインさんが出席する事になっている。
どうやら僕よりもジルさんに出席して貰う方が重要らしい。」
会談は午後9時だから8時には指定の会議室に来るように!
但しなるべく人目につかない様、尾行されていないか注意してくれたまえ」
鋼牙、烈花法師、ジルはそれぞれ返事した。
「あのー僕は?」
 「君は元の仕事に戻っていいよ。
ああ、それと引き続き、御月製薬が現在、極秘に開発を続けている
新型ウィルス兵器Tーエリクサーを利用したM-BOW(魔獣生物兵器
についての詳しい開発状況と個体別の生態・用途等の調査を行い!
僕に随時、報告書を提出する様に!」
「了解しました……」
クエントは気が滅入りそうな表情で大きく溜め息を付いた。
 
(第4章に続く)