(第15章)日記

(第15章)日記
 
少女を誘拐した犯人と思われる男に自宅に行く前に
T-エリクサーワクチンの接種を終えた
烈花、ジル、鋼牙、クエントは直ぐに現場に駆け付けた。
既に彼の自宅付近は立ち入り禁止区域に指定されており、
多数のBSAA隊員が法術が込められた
対魔獣ホラー用の武器を両手に構え、厳重に警備していた。
鋼牙、ジルは先に彼の自宅に入った。
「ザルバ!ホラーの気配は?」
「今のところ無い!」
「多分、陽を避けて影を伝って外へ逃げたのかも?」
「かも知れん!だが油断は禁物だぜ!」
「そうだ!あのBSAAエージェントを襲った魔獣ホラーは?」
「あいつは魔獣ホラー・メルギス!」
「以前!奴と魔戒法師が新しい魔導具の号竜で
一度だけ封印した事がある下級ホラーだ!!」
「だが、T-エリクサーのせいで
肉体耐性や攻撃力が強化されているかも知れませんね!
しかも通常攻撃はきかない様ですし……」
「カオリ社長のT-エリクサーの実験体に利用されたのかも……」
ジル、鋼牙、クエント、烈花は最初のBSAAエージェントが
襲われたあの暗い廊下に辿りついた。
クエントは先頭でヘッドライトを付けた。
ヘッドライトの先には惨たらしい惨劇があった事を伺わせる
大量の赤い血痕が壁、床、天井に付着していた。
「うわー酷いなー」
「どうやら綺麗に平らげたようだ!」
4人は暗闇の中にメルギスが潜んでいる可能性を考えつつも
周囲を見渡し、慎重に先へ、先へ進んで行った。
すると目の前の壁にパスワードを入力する機械があった。
クエントは直ぐに周囲を探した。
ジルも後に続いて探し始めた。
烈花も2人に習って何かを探し始めた。
鋼牙は床に置かれていたメモを拾った。
メモには『4243』と書かれていた。
「これはなんだ?」
「見つけましたね!パスワードです!
あの機械に入力すれば中へ入れる筈です!」
「そっ!そうなのか?」
鋼牙は首を傾げつつも慣れない手つきでパスワードを入力した。
するとプシューと空気が抜ける音と共に扉が開いた。
「こんなからくりがあったなんて」
烈花は興味津々で機械とパスワードのメモを交互に見た。
そして4人が中に入るとどうやら四角い隠し部屋らしい。
部屋の奥には何故か割れたカプセルがあった。
「まさか?メルギスがここから逃げ出した?」
「如何やらトムさんは科学者の様ですね」
「科学者と言う事は御月製薬のM-BOW(魔獣生物兵器
の研究に深く関わっているんだな。」
「だがメルギスは意外に凶暴だ!両手から電撃を放つ!
力もそれなりに強い!
とてもではないが一個人の手に負える相手じゃないぞ!」
「トムの日記?」
烈花は机に置いてあったトムの日記を手に取った。
その横で鋼牙、ジル、クエントは彼の日記を見た。
 
「2020年。7月16日。
バーク博士とアッシュ博士がここに来る。
例のプラントE44についての研究を聞きに来た。
 
2020年。7月17日。
御月製薬の上層部の命で例の極秘研究所に
新型ハンターの特性を調べる為に若い女性の被験者を捕える。
そして届けた謝礼として100万ドルをもらう!
やったぜ!後はプラントE44だ!
 
2020年。7月18日。
プラントE44はカプセルの中で順調に生育している。
しかも細長い蔓の姿だけである薬品成分を染み込ませた
水を栄養に与えればかなり大きくなるものだな。
後は金儲けの為に盗んだT-エリクサーと
プラントE44の植物細胞サンプルを
早速生物兵器のブラックマーケット(闇市場)に売る事にしよう。
その為にバーク博士とアッシュ博士に協力して貰おう!
T-エリクサーは冷凍庫の中だ!小さい物だ!」
 
その時、いつの間にか鋼牙が部屋の隅にあった
小さな冷蔵庫を開けて中を確認した。
しかし中は空だった。どうやら何者かに盗まれた様だ。
「ちょっと!」
「急に動かないで下さい!ビックリしますから!」
「あっ!すまん!すまん!」
鋼牙は罰悪そうに頭を下げた。
そして気を取り直し、4人はトムの日記の続きを読んだ。
 
「2020年。7月19日。
マズイ!御月製薬の連中にバレそうだ!マズイ!          
しかも先日に引き続き、私の隠し部屋を探られた形跡を発見したので
裏切り者がそのつもりなら相応の処置を取らねばなるまい!
とりあえずバーク博士とアッシュ博士に
裏切り者をいぶりださせるとしよう!
少なくとも自分以外信用出来るのはあの二人位だろう!
裏切り者め!このままでは済まさん!」
 
「あっ!オチ読めた!」
ボソリとジルがそう呟くとクエントが慌ててこう言った。
「ちょっと!メタ発言しないで下さい!」
その時、また一人、今度は烈花法師が近くにあった
ロッカーを何気なく開けた途端、いきなり口内に平凡パンチと言う
古い雑誌を無理矢理突っ込まれた
若い青年の死体がドサッと烈花法師の胸に落下した。
烈花さあああああああああん!だから一人でええええええええっ!
クエントは顔を青くして慌てて叫んだ。
どうやら死後、2日は経っているらしく冷たかった。
それから青年のポケットから免許書が出て来た。
「どうやらこの青年がトムのようですね」
「つめてええっ!どうやらそうらしいな」
「それにしても貴方達は本当に怖いもの知らずですね」
「当然だ!魔戒騎士や魔戒法師は
厳しい精神と肉体の修業と修練を積んでいる。
多少のことでは動じない。
まあーたいていの恐怖は克服していると言う事だ!」
「なんだか先行きが不安になってきましたね!」
クエントは心配そうに大きく溜め息を付いた。
「なあーこの床?割れていないか?」
鋼牙は木の床を指さした。
「まさか?あの割れたカプセルから?」
「大変!早く外部に知らせないと!」
ジルは素早く無線機を取り、外部へ連絡した。
鋼牙と烈花は其々魔導筆と魔戒剣を両手に構えた。
「まさか外部へ植物の蔓だけ逃げたのでは?」
「マズイ!このままではまたラクーンシティみたいに!」
「待て!鋼牙!烈花!ホラーの気配だ!」
「なにっ!」と鋼牙。
続けてヒュッと空を切る音と共に割れた木の床から赤い筋の付いた
茶色の細長い蔓が高速で飛び出して来たかと思うと
烈花法師の深い胸の谷間の皮膚に
蔓の先端の裏の注入器をペタリと吸いつけた。
「うっ!ぐあっ!」
「烈花!」
「烈花さん!」
「しまった!大変!」
やがて茶色の細長い蔓の先端の裏の注入器を通して
一定のリズムで膨らんだり縮んだりを繰り返した。
続けて傷口から暑い液体の塊を何度も注入し続けた。
烈花は次第に全身が暑くなり、両頬と深い胸の谷間、
両腕、上半身全ての白い肌を紅潮させた。
「あっ!はっ!くそっ!なんだあっ!暑い!暑い!ああっ!」
烈花法師は動揺しつつも甲高い声で喘ぎ続けた。
同時に彼女の魔導衣に覆われた柔らかい丸い胸は
徐々に早く一定のリズムで前後左右にプルプル揺れ続けた。
「ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!
ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!」
「烈花!しっかりしろ!烈花あああああっ!」
鋼牙は既に宝石の様に輝く茶色の瞳をうつろになり、
意識が朦朧とし始めた烈花に必死に呼びかけた。
 
(第16章に続く)