(第21章)暗闇

(第21章)暗闇
 
BSAA北米支部内のリネン室。
リネン室には壁に大量の血液と脳漿が円形に付着し、
僅かに一筋、床に垂れていた。
その大量の血と脳漿を撃ち抜かれたホルム医師が両手両足を
赤いロープで椅子に拘束された状態のまま遺体となって発見されていた。
鋼牙とマツダ代表も白い手袋をはめて現場に入った。
「どうやら何者かに射殺されたようですね」
「恐らくあのカブトムシの仮面の女性ではないだろうか?
つまりゾイ・ベイカーらしきあの女性。」
「可能性は高いですね。家族を死に追いやった
あの企業組織HCFに復讐する為に彼を襲ったのでしょう。
後で彼の医務室の部屋を調べて分かった事ですが
どうやら彼も助手のライザー医師も
HCFの産業スパイだと言う事が判明しました。
その証拠にある移送作戦の内容を要約したメモが見つかりました。
どうやら彼はHCFの例の女の子『E-001』の
移送作戦を指揮する隊長だと言う事が判明しました。」
「『E-001』はエヴリンの事か?」
「はい!彼が作戦に失敗した為、一般人のベイカー家が
バイオハザード(生物災害)に巻き込まれました。」
「彼のせいでベイカー家が??」
「助手のライザー医師は?」
「急用でグラテマラへ行った先で行方不明に。
どうやらBSAAの医療施設からホルム医師の手引きで
冷凍冬眠(コールドスリープ)状態の
『R型』を外部に持ち出したようです。
現在!ライザー医師を捜索中だよ!もしかしたら?
既にHCFの研究所に持ち去られた可能性がある。
彼もHCFの産業スパイだからね。」
「まさか?エヴリンやリサ・トレヴァーの様に」
鋼牙は『R型』がまたBOW(生物兵器として利用されるのを危惧した。
それはマツダ代表も同じだった。
「一刻も早く『R型』を取り戻さないとマズイな」
「そうだね。きっとあのカブトムシの仮面を被ったあの女性も
『R型』をBOW(生物兵器)として利用する
作戦内容に関する何らかの情報を掴むのも時間の問題ですね。
彼女の目的は家族を狂わせて命を奪ったHCFに復讐する事。
実際、そのHCFの産業スパイと思われる人物が
何者かに次々と殺害されています。
他にも3ヶ月前に別の組織の極秘研究所も何者かに襲撃されています。
そして極秘研究所内に保管されていたT-アビス系統の
BOW(生物兵器)と極秘研究所内で
働いていた研究員、職員、スタッフは。
ブルー・アンブレラ社・特殊部隊
我々BSAAの特殊部隊が駆け付ける頃には。
既に一人残らず皆、殺害されていたようです。」
「酷い話だぜ……」
「復讐……BOW(生物兵器)に家族を奪われた。
同じだな……あの暗黒騎士キバのバラゴと……」
「少なくともその犯人もいずれは我々の前に姿を現すでしょう。
もちろん彼女の復讐の邪魔などすれば我々、
BSAAに牙を向ける事も予想されます。
彼女には気付けて接触しないといけませんね。
BSAAのエージェントや各特殊部隊の隊長にそう伝えて置きましょう。」
しばらくしてクエントが鋼牙とマツダ代表の前に駆け寄って来た。
「ああ、クエントか?」
「彼を殺害した犯人の特定につながる手掛かりですか?」
「はい、その犯人が落としたと思われるメモを」
鋼牙とマツダ代表はクエントが差し出したメモを読み始めた。
「ホルム医師。
BSAA北米支部の医療施設の医師として勤務。目的は不明。
 
ライザー医師。
ホルム医師と同じくBSAA北米支部の医療施設の医師として勤務。
目的は不明。」
「そしてホルム医師は何者かに殺害されてしまい。
彼の助手のライザー医師はグアテマラで行方不明……ふむ」
クエントは両腕を組み、一人考え始めた。
「少なくとも彼を殺した犯人の心は復讐に
支配されている可能性が高いだろう。」
「だとしたら?説得して止めさせなければならんな」
「ああ、復讐や野望はいずれ個人の人生を。
そして命を破滅へと導くだろう。」
その時、クエントは鋼牙とマツダ代表にこう言った。
「あのーそれらの事件は私と『R型』のお母さんになった
烈花さんが担当して今後事件を追うと言うのはどうでしょうか?」
「成程。では『R型』の盗難事件は
烈花さんとクエントさんに任せましょう。
そして今回の御月製薬の不正の真相解明後、
直ちに二人に『R型』の捜索と犯人のライザー医師逮捕に
全力で当たって貰いましょう。
クエントさん!烈花さんにもそう伝える様に!」
「了解しました。ありがとうございます!」
「ただし。『R型』が原因でバイオテロ、もしくはE型同様の暴走により
バイオハザード(生物災害)が発生し、更に巨大なクリーチャーと化し、
周囲の人々に牙を向き、被害が拡大する危険性が確認された場合、
巨大クリーチャーとなった『R型』を完全に倒し、
それ以上の被害拡大を未然に防ぐ事。いいですね?」
「はい!分っています!私達があの子の生命を終わらせるんですね!」
「もちろん!それも君からしっかりと烈花さんに説明する様に!」
「はい!了解しました!」
 
その日の夜。
クエントとジルはニューヨークのとある
公園内で今夜、出現すると予想される
魔獣ホラーにしてM-BOW(魔獣生物兵器
メルギスの襲撃に備え、クエントはマシンガン。
ジルはハンドガンのサムライエッジを武装していた。
2人はちょっと雑談しながら公園内に潜むメルギスを捜索していた。
「少なくともあと1カ月以内にこの御月製薬の
不正を暴いて事件を解決させないと」
「何かあるんですか?」
「実は娘のアリスとトリニティの通う
幼稚園で親子の為のカラオケ大会があるのよ。
「何を歌うんですか?」
「日本のアニメのポケットモンスター
ロケット団よ。永遠に』と言う歌を歌うの。」
「確か?あれって男性と女性のデュエットじゃないと歌えないのでは?」
「それでね……実は今、こっそりと娘と一緒に
その人と練習しているんだけどね。もちろんお馴染のあの名台詞も。」
ジルはコソコソとクエントに耳打ちをした。
クエントは驚愕した表情をした。
「まさか?鋼牙さんも歌うんですか?
あの気難しそうな人が……凄い話ですね……」
「それはそうと。本当にメルギスはあたし達を襲撃するのかしら?」
「メルギスは賢者の石の力を持つ
新型のウィルス兵器T-エリクサーを投与されています。
御月製薬の社長の御月カオリさんは必ず私達の不正なウィルス兵器や
BOW(生物兵器)の捜査の妨害の為に
メルギスを暗殺に差し向ける可能性が高いです。
何故なら私の自慢の彼女のBSAAエージェントのアナコンダさんが!
御月製薬の北米支部の地下研究所の『ハイブ内』に侵入し!
不正なウィルス兵器やBOW(生物兵器
開発研究をしている施設の地図の入手。
さらにトムさんの日記とノートから得た
M-BOW(魔獣生物兵器)のハンターEYの開発情報。
トムとアッシュさんとバークさんのやり取りの文章。
そしてトムさんが密かに自宅で
培養していた試作のM-BOW(魔獣生物兵器
と思われるイレギュラーミュータントの
プラントE44の植物組織の分析結果。
究極の破壊の神の開発情報をまとめ。
御月製薬の社長の御月カオリとその周辺の交友関係が書かれた資料。
また御月カオリの出世と経歴の記録。
すでにそれらの物的証拠と状況証拠を集まり。
私が最初の報告書を作成し、バイオテロ評価委員会に提出しました!
そう!だから!明日の夜にでも我々BSAAエージェント!
鋼牙さん!コードネーム・アナコンダさん!BSAA部隊による
御月製薬北米支部の地下研究所『ハイブ』突入は時間の問題ですね!」
クエントは何故かうんと胸を張り、上機嫌に話した。
ジルは「そうね!」と笑顔で返事をした。
その時、不意にジルの表情が一変した。
「クエント!よけて!ホラーの気配がするわ!」
ジルが右側にクエントは左側に全力で走った。
続けて暗闇から真っ赤に輝く電撃弾が飛んで来た。
2人は左右に全力で走って回避した。
同時に大きな火花と共に地面に着弾した。
ジルとクエントはマシンガンとサムライエッジを同時に両手で構えた。
しかし暗闇のせいでメルギスの姿は見えなかった。
だが高速で移動する枯れた木の姿をした人影が一瞬だけ見えた。
「いました!メルギスです!」
しかし高速で移動している為、枯れた木の姿をした
人影はまた一瞬で暗闇に消えた。
「見えない!」
「そこです!」
クエントは暗闇に向かってマシンガンの引き金を引いた。
 
(第22章に続く)