(第17楽章)組曲・転生されし悪霊と新しき神話物語。

(第17楽章)組曲・転生されし悪霊と新しき神話物語。
 
鋼牙はジルに向かって厳しい口調でこう言った。
「ジル!俺の知らない何処かの家やトンネル、特に心霊スポットなんか!
一人で絶対行くな!あんたの胎内はもう人間のものとは違うんだ!
つまりあんたの胎内は他の種の魔獣ホラー達や
こちら側(バイオ)の世界か別世界、あるいは死者の国から
強大な力を持つ賢者の石を求めていわゆる幽霊や悪霊達が
新たに肉体を手に入れて現世に復活する器になる!」
「ええ、確かに狙われたわ!心霊スポット動画をユーチューブに
投稿しようと撮影していたアメリカ人の男の子に悪霊が憑依して。
異変に気付いて駆け付けた私にいきなり襲い掛かって来てー。」
「ああ、奴はジルの胎内を利用して転生しようとしていた」
「転生は成功したわ!あの悪霊は憑依した若い男の子の身体を利用して
私を四つん這いにして強引に性行為をして転生の卵を転生させた。
それから私が産み落とした転生の卵を憑依した若い男を操って持ち出した。」
「結局、烈花が駆け付ける頃には転生の卵は持ち出されて逃亡してしまった。」
「それから3日間も烈花と地元の警察が協力して追っていたが見つからず。
4日後にニューヨーク郊外の森で発見された。
しかも地元の警察の発表では既にそのユーチューバーの男の子は死亡していて。
死後4日は経っていたわね。
更に遺体は何者かに襲われて出来たと思われる傷が多数あったようよ。
しかもそれが全て人間の歯型で遺体の内臓も非常に
激しく損傷していた事が検死で判ったそうよ。」
「恐らく力を蓄える為に憑りついた男の子の肉体から
転生の卵を孵化させる為に霊体を移動させた。
そして転生の卵は孵化して新しい肉体に霊体を転生させた。」
「あとは用済みになったユーチューバーの男の子の肉体を喰って力を蓄えていた。」
「つまり!カニバルね!最悪だわ!呪術的な意味で人間が人間を喰うなんて!」
「ああ、最悪だな!酷い話だ!」
「もう!あんな恐ろしい心霊体験なんてもう二度と御免よ!
もう!懲り懲り!疲れたわ!」
ジルはそう言うとうんざりした表情でラジオのスイッチを付けた。
「3日前にエジプトの首都のカイロのナイル河にあるナイル洞窟内にて
発見された石碑の文章の解読にほとんど成功しました。
どうやら確かに現在、発見されているどの宗教の神話とは異なる
新たな神話が記されているのが判明しました。
今回は特別の許可を貰い特別に石碑の文章を朗読します!
では!聞いて下さい!勿論、ラジオはそのままです!では!始めましょう!」
しばらくしてラジオのニュースのキャスターは石碑の解読された文章を読んだ。
そんな中、ザルバは心配そうにつぶやいた。
「うーむ!危険な呪文が混じっていなければいいが……」
「しっ!ザルバ!流れているわ!」とジル。
「静かにしてくれ!聞こえん!」と鋼牙。
「すまん!すまん!」と魔導輪ザルバ謝った。
ジル、鋼牙、魔導輪ザルバはラジオの朗読を無言で聞き続けた。
「遥か昔、青き龍王エロースは宇宙の卵となった。
やがて創造主であリ、全ての生命の女神『ジェル』によって
討ち滅ぼされし、悪魔達の霊球を全て砕き、宇宙の卵は孵化をした。
そして新宇宙が生まれた。新宇宙は旧き宇宙を壊した。
新宇宙では創造神ジェルとその両脇に狼と蠅の姿をした
時の流れと時空を支配する原初の男神ベル。
それとクモの姿をした原初の男神バルと
2つの男神と交互に交わり、生命を産み、育てた、
生命はやがて自然と人類となり、動物、植物、昆虫、原始の細菌や
機械生命体へとどんどん姿を変えて行き、賢者の石の力に守られ広がって行った。
そして地下の冥界と真なる魔界は3人目の夫の花の形をした
緑の千眼の大蛇アナンタが支え、冥界には赤き龍神セイタンが治めた。
セイタンは創造神に人類が合う資格があるかどうか試し、
それにふさわしいと判断した。
天上には創造神が住む月と生命を育て支える光を
与える為の太陽神ルキフェルが存在した。
創造神ジェルは夜と司どり、太陽神ルキフェルは昼と司った。
そして交互にこの世界の昼と夜を生み出した。
昼にはルキフェルがストークスと言う女性の姿に変えてしばし人類に助言を与えた。
一方、創造神ジェルはジャンヌと言う少女の姿に変えて、積極的に人類と交流し、
恋をして、人間の男と交わり、形なき霊達とも交わり、多種多様な神々を産み出した。
こうして創造と再生を経て新たな世界が誕生したのである。
とまで解読出来ました!他にも小さな石碑部分からは。
「月にいる創造神と一人目の夫のベルの娘のルナーケンは地上へ降り立った。
人間の男と結婚し、子供を儲けた。
子は大人となり、立派な若者となり、人類に害をなす外宇宙からの神々を
次々と討ち滅ぼし、侵略を退けて、人類のヒーロとなって行った。
その力は強くどんな外宇宙からの神々も太刀打ち出来なかったと言う。
またヒーロの側には常に自衛と防衛を司る魔神ヴィシュヌが存在し、
ヒーロを助け、信頼できるパートナーとしてあらゆる
外宇宙からの神々を協力して打倒していったと言う。」
「ふーん、まるでクリスとジルみたいだな」
「STARS時代とBSAA設立前の頃が懐かしくなっちゃった」
「どうやらまだ解読中の部分があるらしいな」
「続報が楽しみね」
車のラジオの朗読が終わったのでジルはラジオのスイッチを切った。
その時、ふと鋼牙がこうしゃべった。
「ルナーケン。奴は一度、あちら側(牙浪)の世界で俺が倒した。」
「そういえば奴はブエル、モロク、アスモディ、ダンタリアンと共に
ソロモンの小さき鍵に登場する悪魔の一体だったな」
「ああ、すでにこちら側(バイオ)の世界の男女のいざこざで
自殺しようとしたアメリカ人女性に憑依したが」
「賢者の石の力で強化されてかなり苦戦したな」
「でも!無事封印できたでしょ?」
「ああ、そうだな!」
間もなくして鋼牙とジルが乗る車は
BSAA北米支部地下のパーキングエリアの停車した。
ジルと鋼牙は車を降り、エレベーターに乗って
BSAA北米支部のビルへ入って行った。
それからジルは私服からBSAAの服に着替える為に、
一度、鋼牙と廊下で別れて自分のロッカーのある女子更衣室へ入って行った。
女子更衣室へ入るとジルは自分のロッカーの鍵を開けて着替えようとした。
しかし次の瞬間、胸部に燃えるような強い痛みが走った。
「うっ!痛い!痛いっ!イヤッ!イヤッ!洗脳なんかされたくないっ!」
ジルは顔面蒼白になった。
間も無くして全身の力が抜けてロッカーの前にへたり込んでしまった。
ジルは未だに顔面蒼白のまま深い胸の谷間を
青い瞳で覗き込み、恐怖で全身を震わせた。
脳裏にはかつてアルバート・ウェスカーとエクセラ・ギオネによってP30と言う
洗脳薬を投与する装置をさっきと同じ位置に埋め込まれ、長期投薬された事で
バイオテロを憎むジル・バレンタインの意識を保させたまま
洗脳してバイオテロに加担させたあの忌まわしい記憶が蘇り、激しく心を乱した。
そう、ジルの深い胸の谷間の中央の皮膚に金色に周囲を縁取られた真っ黒に輝く
正八面体の物体が浮き上がってきたのである。
すると危険を感じたルシファーがジルの脳裏から冷静な口調でこう語りかけた。
「落ち着くのじゃ!今ここで心を乱したら!力が暴走する!」
「心を乱したら!力が暴走するって?これなんなの?」
「どうやらあの魔神クリシュナが汝の身体を通り抜けた時に。
いや、重なった時じゃったか?いずれにしろその時に奴が与えたクリシュナの力の
一部じゃ!そう身体が張ったあの時に力の一部が汝の身体に入ったんじゃ!」
「じゃ?これは?どんな力なの?どれだけ強いの?」
「恐らくはクリシュナの本来の姿である
破壊神『黒天・ヴィシュヌ』の強大な力じゃ!」
「黒天?ヴィシュヌ?破壊から救済の神??」
「かつて黒天は万物の破壊を求める事で人々を救済しようとしていた。
しかしとある少年の観測の力によって人々の救済者クリシュナと
なったとヨグ・ソートホースから聞いた事があるのう!
それで!恐らくあやつは自分が第3の世界(真女神転生Ⅳロウルート)で
やろうとしていた『人々の救済の為の万物の破壊』を汝を利用して
間接的に果たそうとしていおるのじゃろう!勿論!
我は元々は混沌じゃが汝が中庸の道を求めるならば!
我は汝の意志に従い契約を果たそうぞ!」
 
一方、ジルの着替えを待っていた鋼牙は自動販売機の小さな
休憩スペースの椅子に座ってアクエリアスを飲んでいた。
しばらくして魔導輪ザルバは鋼牙にこう尋ねた。
「なあーその例の転生した悪霊は結局何者だったんだ?」
「俺もよく知らんがー。元々はアメリカではなくウクライナと言う国にいたらしい。
名前はー。確か?-。アンドレイ・チカチーロだ!」
「奴は人間達から『ロストフの殺し屋』とか
『赤い切り裂き魔』とか呼ばれていたらしい。
奴はこちら側(バイオ)の世界の1978年から1990年にかけて
主にロシア・当時のソビエト連邦社会主義共和国で5人の女子供を殺して
殺人罪を言い渡されたようだ。その後、銃殺刑で死んだ。」
「成程!そんな奴がジルの胎内を利用して新たな肉体を得て復活した!」
「しかもあいつは連続殺人鬼だぜ!」
「分かっている!放置しておくのは危険だ!特に賢者の石を持つ以上はな!」
「ああ、もしかしたら?魔獣ホラー達も彼を利用するかも知れないな!」
「それだけは絶対!避けないと!後々、面倒な事になるな!」
 
(第18楽章に続く)