(第30楽章)封鎖されし道は自分で切り開くエチュード


(第30楽章)封鎖されし道は自分で切り開くエチュード

「ダメです!ご両親が歩む人生も私の人生も貴方の人生ではありません!
ましてやその一部ですらありません!貴方自身の人生です!」
「つまり貴方自身の人生の道を切り開くのもまた貴方自身なのです!」
「責任なんて……あたしは……あたしは……」
エミリーがうわ言の様に呟いた後、しーんと静まり返った。
「貴方が一番恐れているのは!父親や母親の言う事に縛られて
自分の意見を曲げなくてはいけないそんな弱い自分自身です。
エミリーはマツダBSAA代表に痛いところを突かれたのか押し黙った。
続けてマツダBSAA代表はこう言った。
「決めるべきものはちゃんと決めなければならないんです!
貴方が道なき道をちゃんと歩けるように」
「・・・・・・・・・・・分かりました・・・・・・・・・」
「エミリーさん!これだけは覚えてて下さい!
貴方の目指すべき理想はいっぱいあってもいいんです!
貴方が望み求めるがまま自分自身で選んで行けばいいんです!
後はそれを貫けるだけの勇気と希望があればいいんです!
良い結果にしろ、悪い結果にしろそれが貴方自身の人生ですから!」
やがてシャッと窓のカーテンが勢い良く開いた。
そして大きな窓にはあの金髪の眼鏡をかけた清楚な女子高生が立っていた。
彼女は美しい金髪で髪型は両頬まで伸びていて短かった。
しかもわざとなのか?バサバサの髪に金色の眉毛は太いゲジマユになっていた。
あと何故かワイシャツに黒いスーツを着ていた。
彼女の話によるといつもこの服装ではなくほとんどは両親にしつこく
身なりを指摘されて、赤いワンピースとスカートを履いていると言う。
また金髪も普通のサラサラの髪にしてキリッとした
普通の太い眉毛に無理矢理強制的に直させられる事もあったらしい。
彼女はマツダBSAA代表に日本の漫画を見せた。
それは英語で書いてあった。日本語のタイトルは『地獄先生ぬ~べ~』である。
彼女はその漫画に出てくる主人公のぬ~べ~事、鵺野鳴介が大好きだと言う。
なので時々、彼をリスペクトしてコスプレしてはクラスの同級生に見せていたと言う。
自分もぬ~べ~のように弱い者の立場になって
考えられる優しさと正義感が欲しかった。
と今まで両親や先生や周囲の大人達に言えなかった本音を
マツダBSAA代表に楽しそうに話して聞かせてくれた。
それは『自分の憧れた理想の大人像=ぬ~べ~』だと言う事。
更に自分はちゃんと勉強して高校の教師になる夢がある事を。
本名はエミリー・スタートと言うらしい。
「ありがとうございます!貴方のおかげで決心が着きました!
この子を産んで!育てて!高校の教師になる為の勉強をします!
自分は弱い者の立場になって考えられる優しさと正義感のある教師を目指します!」
エミリーはドアの窓を通してマツダBSAA代表に頭を下げた。
マツダ代表もその彼女の決意した表情を見てようやく安堵の表情を浮かべた。
「それから以前、こちらの施設に所属している
医師からの協力で。隠しててすいません。
貴方の血液をウィルス検査をした結果、実は危険なウィルスが検出されたんです!
ですが貴方の体内で休眠中ですので貴方自身に害もなければ周囲に害もありません!
しかしそのままでは余りにも危険なので医療施設にてウィルス治療を!
この事は無用なパニックを避ける為、秘密にして貰うようこの虐待シェルターの
施設の職員やスタッフ、医師、看護婦、貴方にはお願いします!」
「わぅ!分かり……ました!でも!それは?」
「ここでは話せません!詳しくはBSAA北米支部でお話しします!」
エミリーは訳が分からずそのままマツダBSAA代表の言う事に従った。
そしてBSAA北米支部の医療施設で詳しい説明を受けた。
どうやら自分の体内には新種の魚類現病ウィルスの
ジ・アビスDNAを持つGウィルスの変異株が検出されたらしい。
でもウィルス学にはずぶの素人のエミリーには良く分からなかった。
 
逃亡を図った赤いセダンの事、俺アレックスは狩場にしていた
人気の無いバーの近くの東口の駐車場の入り口から飛び出し、道路へ出た。
ちくしょう!まさか!黄金騎士に見つかるなんて!
でもあのジル・バレンタインって言う女は見つけた。
しかも俺もかなり不機嫌だ!何故なら!
目の前の丸々と太ったしかも生きの良い人間を喰い損ねちまった!
しかも食事の邪魔をした黄金騎士はジルと言う女が運転する
BSAAの車で執拗に追ってきやがる!こんちくしょう!
それから赤いセダンとBSAAの車はそのままチェルシー地区の
曲がりくねった細道や裏路地、交差点を走り回り、カーチェイスを続けた。
それから赤いセダンに化けている俺、アレックスは
今の速度じゃ振り切れない事が分かり、一気にスピードを100キロまで上げた。
するとBSAAの車も止む負えず100キロまでスピードを上げて来た。
畜生!同じスピードできやがった!逃がさない気か!!
一方、BSAAの車内ではジルはハンドルを操作しながら大きな声でこう言った。
「あいつ!100キロまでスピードを上げたわ!」
「余りにスピードが速い!このままじゃ事故を起こすぞ!」
「でも止む負えないわ!このまま100キロで追うわよ!」
ジルの意見に鋼牙は不安に満ちた表情を見せた。顔はかなり曇っていた。
「分かった!頼むから交通事故を起こさないでくれ!」
「なんとか!努力するわ!」
すると鋼牙はジルの言葉にますます不安を募らせた。
魔導輪ザルバはやれやれと言った表情でこうつぶやいた。
「こりゃぁ~ジルが事故らないこと祈るしかないな!
鋼牙も祈るようにこう口走った。
「頼むから事故らないくれ!それと早くこのカーチェイスが終わって欲しい。
いつ事故を起こすか?こっちも肝を冷やしそうだ!
しかもパトカーに見つかったら……」
逃亡中の赤いセダンの姿をした魔獣ホラーであるアレックスは必死に
追跡してくる鋼牙とジルが乗るBSAAの車を振り切ろうと時速100キロで
チェルシー地区の道路を長い間、走り続けていた。
ちなみにチェルシー地区はマンハッタンを東西に走る西23丁目辺りを
中心に東端は5番地、西端はハドソン川、南端は14丁目、
北方は30丁目に囲まれた一帯を指す。そして様々な最新アートの発信源である。
いつもはのんびりとした感じの街並みだが、今は時速100キロで走る赤いセダンと
BSAAの車が道路のアスファルトをタイヤが擦る音でうるさく騒がしくなっていた。
逃亡中の赤いセダン車はアートギャラリーの店や
ファッション店が並んだ街並みを猛スピードで走り続けた。
BSAAの車も逃亡する赤いセダン車を追って後ろに
ぴったり張り付くように猛スピードで追跡を続けた。
2台の車は三角形のフラットライアンビルを
囲む道路を走り抜け、ジェームズファー郵便局を通過した。
それでも2台の車はチェルシー地区の道路をキキキキッと騒がしい過ぎる甲高い
音を立ててタイヤを激しくアスファルトに擦らせ、右左左右と道を曲がり続けた。
それを何度も繰り返す内に2台の車は何回も信号を無視し続けた。
いずれはパトカーに追いかけ回されるのは時間の問題だった。
アレックスもジルも鋼牙も懸念していたある出来事が丁度起ころうとしていた。
それは赤いセダンとBSAAの車が時速100キロでペンシルバニア駅の正面玄関の
直線道路を走り抜けた時、とうとうこのチェルシー地区を
トロールしていたパトカーに見つかってしまった。
その日、パトカーには坊主頭で黒い肌に大きな筋肉質な男の
ワン巡査と黒い短い髪に茶色の瞳に薄い灰色のひげが
口元の生えている体格ががっしりとした男のカプラン巡査が乗っていた。
そして2人は暴走する赤いセダンとBSAAの車を見つけると
すぐさまパトカーのライトを赤く照らし、うーうーサイレンを
鳴らして赤いセダンとBSAAの車を追跡した。
そしてすぐにカプランは車内からスピーカーを通して
「そこの2台の車停まりなさい!」と呼びかけたが案の定反応は無かった。
カプランは「チッ!」と舌打ちをした。
それから助手席に座っているワンにこう報告した。
「ダメです!反応はありませんよ!」
ワンは冷静な口調でこうカプランに指示した。
「よし!呼びかけつつも2台の車を追うんだ!」
「はい!スピード違反は許しません!」
カプランは気合を入れてパトカーのスピード上げる為にアクセルを踏んだ。
ワンは「くそっ!なんて速さだ!」と悪態をついた。
「最高時速100キロですよ!」とカプラン。
「カーチェイスにしちゃ!やり過ぎだ!ここはサーキットじゃねえぞ!」
「愚痴ばかりですね!」とカプランは笑った。
「お前程じゃないさ!」とワンは笑った。
2人の巡査が乗るパトカーは赤いセダンとBSAAの車を追跡を続けた。
BSAAの車の運転をしていたジルはバックミラーで
パトカーの姿を確認すると青ざめた。
「ああ!しまった!この車じゃ!」
「仕方がない!BSAAの上司方には後で怒られるとしよう!」
「怒られるだけじゃ済まないわよ!きっと!どうしよう……」
そんな風に慌てふためくジルをよそに鋼牙は涼しい表情をしていた。
それからBSAAの車と赤いセダンとパトカーはハインラインと言う
ニューヨーク市にある線形公園の真下の橋の下の道路を走り抜けた。
そこは丁度、チェルシーマーケットの2階のハイラインが通り抜けている道路だった。
パトカーの車内ではカプランが無線でニューヨーク市内を
トロールしているパトカーに報告した。
「現在!赤いセダンと黒い車は15丁目と14丁目の
チェルシーマーケットの下を通過しなおも逃亡中です!」
「全く!どこまで逃げるつもりなんだ!」
「知りませんよ!彼らに聞いて下さい!」
赤いセダンとBSAAの車を追跡しているワンとカプランが乗った
パトカーはチェルシー14丁目の道路を時速100キロで走り続けた。
幸いにもまだ怪我人は出ていない。しかし長期化すればいずれは事故を起こし、
一般人に死者が出るか怪我人が出る恐れがある。ワンは冷静にそれを分析した。
しばらく考えてワンはカプランにこう提案した。
「カプラン!パトロールしているパトカーを
最低でも30台集めろ!道路を封鎖する!」
「ですが相手は時速100キロですよ!危険です!」
「だから無人パトカーで道路を塞げばいい!」
「分かりました!」とカプランは直ぐに無線で周囲をパトロールしている
パトカーを手当たり次第に集める為、何度も繰り返し、
他の警官や婦人警官に呼び掛けた。
間も無くして30台のパトカーが集まり、14丁目の2台の車が通るであろう
細長い道路に無人のパトカーを2列に並べて道路を封鎖した。
 
(第31楽章に続く)