(第13章)R型計画(後編)

(第13章)R型計画(後編)

 

例の軍隊の統制官型BOW(生物兵器)の開発コードは『R型』である。

素体は5歳の女の子の使用がHCFの超極秘会議で唯一ブレス保安部長を除く

全ての幹部達や社長を交えて腰を据えた議論の末に

「新型ハンター・開発コード『バグズ』」

と同様に決定した。それからこの超極秘会議に参加した

HCFのBOW(生物兵器)及びウィルス兵器商品サービス管理主任の

マイケル・ケイラーは過去に技術協力して製造させた特異菌を持つ

『E型・エヴリン』のように新型の10歳の子供型BOW(生物兵器

による暴走を抑制する完全に強力な安全装置システムの製造と

デザインについて話が超極秘会議の中で着々と進んでいた。

この強力な安全装置さえあればE型・エヴリンの様に戦闘以外の

無意味な攻撃や味方軍の兵士を傷つけぬようになる筈だと言う。

ただその為には何故?新型の子供型BOW(生物兵器)がすぐに暴走してしまうのか?

根本的な原因を突き止め無ければならないと言う。

そこであの計画が立案されたのは当然だろう。

この5年後に起こる『R型暴走事件』の原因となる

「E型事故の調査。そして子供型BOW(生物兵器)の欠点や問題点の検証実験と

『新型T-エリクサー(仮)(E型特異菌遺伝子有り)』

を使用した実戦データの回収と更なるデータの回収を目的とした

『R型計画』がスタートしたのだった。

既に決定書も出来ており各幹部もそれぞれサインとハンコを押した。

勿論、社長からも無事にGOサインを貰っていた。

幹部全員は『この計画が成功すればあのCIA(アメリカ中央情報局)

の男を満足させられるだろうと思っていた。

ちなみにそのCIA(アメリカ中央情報局)の男が言うにはー。

最近、イスラム系テロリスト組織やロス・イルミナドス教団の

残党共が集まったテロリスト組織、その他アメリカを脅かす北朝鮮の軍事的挑発も

テロリスト達の活発な活動を酷く警戒しているらしい。

そしてCIA(アメリカ中央情報局)とアメリカ政府側はそれらの

テロリスト達を全滅させてなおかつ軍事的挑発を続ける北朝鮮に対し、

新型ICMC大陸間弾道ミサイルや中距離ミサイルよりも強力な軍事兵器を保有していると誇示してなんとしてでもアメリカに対する軍事的挑発を抑制させたいらしい。

また他にもアメリカ政府の米民主党多数党内幹事と名乗る男が

我々HCFにコンタクトして来た。

彼の話によるとこの4年後に大統領予備選挙が行われるらしいのだが。

自分の選挙活動を執拗に邪魔をして来る

反メディア団体ケリヴァーなるものがいるらしい。

その団体はHCFの上層部にも一般世間の人々にもよく知られていた。

『とにかく迷惑極まりないうっとおしい団体』と言うのが

世間一般のほとんどの意見だった。

連中は数年前にニューヨーク市内の幼稚園を襲撃して

リーダーの若村と言う男とメンバー達が幼稚園児に対する暴言と暴力行為、無断侵入や

人権侵害の容疑で全員、逮捕起訴された。しかしその後、リーダーの若村氏の

精神鑑定の結果を不服としてメンバー1000人余りが聖ミカエル病院に殺到し、

抗議デモを起こしたせいで救急車がER(緊急救命室)に入れず多くの

患者の搬送が遅れた。更にメディアの情報によればそのせいで何人かの患者が

危うく死にかけたらしい。勿論、全員、州警察やFBIによって

メンバー全員業務妨害の容疑で逮捕されて起訴された。

また米民主党多数党内幹事もSNS(ソーシャルネットワーク)や

ツイッターで反メディア団体ケリヴァーの連中に悪質なストーカー行為を

かれこれ4年以上続けていたらしい。

彼曰く『これならパパラッチのスキャンダルの方が遥かにマシ』

だとツイッターで呟いていた。きっと本当なのだろう。

そして彼はそんな反メディア団体ケリヴァーを排除して欲しい

と言う依頼をHCFを受けてHCFの幹部達もそれを了承した。

そして反メディア団体ケリヴァーのリーダー若村を含むメンバー全員を

敵国と仮想し、新型T-エリクサー(仮)(E型特異菌遺伝子有り)』

と『R型』を使用した実践シュミレーションとE型特異菌を持つエヴリンの事故原因を

検証する被検体として利用する『E型計画』の初期案が出された。

そして具体的な計画は直ぐに今回の上層部超極秘会議で決定したのだった。

作戦決行は2030年の夏頃を予定した。ついでに例の女好きの金持ちの顧客からの

要望でプラーガ―タイプ4の研究開発もプラーガーと新型T-エリクサー(仮)

(E型特異菌遺伝子有り』ウィルスを利用して植物とクモの遺伝子を

組み合わせる実験もほとんど成功して飛躍的に進んでいる事がHCFのBOW

生物兵器)及びウィルス開発研究主任のダニア・カルコザ博士は

モニター画面で表示された資料の写真やデータ記録を見せながら説明した。

モニター画面には植物とクモを掛け合わせたような合成生物の写真や

それに関するデータが表示されていた。

そしてダニア博士がひとしきり説明を終えると最後にHCFの上層部はダニア博士と

この超極秘会議に参加していなかった保安部長のブレス・マドセンを含めた

HCF上層部による『E型事故調査委員会』が設立された。

更に「4年後の検証調査を徹底的に行う」とHCF特研部災害対策委員会の議長

のザビエ・キングスレはここで宣言した。

それから超極秘会議が終わった後、ダニア博士は自室に戻った。

ダニア博士はまた金色の縁取られた黒色の玉座に座ってまた

目の前の大きなモニター画面を見た。

続けてモニター画面の電話アイコンのボタンを指で押した。

そして内線の『新型ハンター開発研究室』の電話番号にかけた。

やがて数回のコールの後、新型ハンター研究開発主任の

クリスタ・ワーグナ博士が電話に出た。

「もしもし?ダニア博士ですか?ふふっ!

実はスーパープレイグクローラーについての習性や知能を調べた結果。

更に学習テストを更に続けた際にスーパープレイグクローラー

簡単な言葉の理解のみならず人の言葉や文章さえも理解していました。

つまりスーパープレイグクローラーは急速に人間の知識も学習しています。

今では『旧約聖書』の文章の一部の意味さえも理解しています。

そして!ダニア博士!スーパープレイグクローラーは飼育室にいた時よりも

リラックスしています。更に前よりもかなり賢くなっています。

まだ人間の感情と思しきものは確認出来てはいません!

ただスーパープレイグクローラーは人間が持っている品物や衣服や

繁殖相手となる若い女性に強い興味を抱いています。

またスーパープレイグクローラーは生殖能力のある人間の女性と

そうでは無い人間の女性を本能的に見分ける能力があるようです。

特に20代から30代の女性に対して繁殖相手として興味を

持っている模様。報告は以上です。」

電話を切ったあとダニア博士は心配な表情になった。

「あれが外界へ出たら大変な騒ぎになるわね。」と。

 

HCFのセヴァストポリ研究所内のBOW(生物兵器)及びウィルス兵器中央

実験室内の恋人ストークスが生活している極秘の隔離地下室へ続く

一本道の廊下をエアは一人で歩いていた。

もう何時なのか分からないが多分、8時だと思う。

エアはストークスに会いにいつも通っている一本道をただいつも通り歩き続けていた。

何時頃。いや明日はあの魔女王ホラー・ルシファーとの決戦だ。

どうにかしてストークス姫を魔女王ホラー・ルシファーから守り切らなくては。

彼女は僕の大事な人なんだ。彼女を失ったらー。

多分、僕は生きて行けないと思う。彼女がいない世界なんて絶対に考えられない。

僕は。僕は。彼女の事が・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

その時、いつも通っている一本道のすぐ右側の壁に真っ赤に輝く四角い壁があった。

エアは何度も何度も同じように一本道を通ってきたが。こんな真っ赤に輝く四角い

壁は見た事が無かった。エアはその真っ赤に輝く四角い壁に近付いた。

次の瞬間、今度は一本道の床に真っ赤に輝く四角い物体が現れたと同時にエアは

まるで落とし穴に嵌ったかのように一気に落下した。

エアは思わず両腕を挙げたままストン!と全身がまるで

吸い込まれるように落下し続けているのを肌に触る風や髪のなびく音で分かった。

やがてドスン!と何処か金属の床に激しく尻もちを付いた。

そのせいでエアはお尻に激痛を感じた。

「いてぇっ!何だ?ここは?どうなってんだ??ここは???」

エアは目に火花が散ったのをしっかりと視認した。

それからしばらくは視界がぼやけていたがようやく視界がはっきりとして来た。

そこは四角いルービックキューブのような広大な異世界の空間だった。

エアは無線をすぐに使ったが何故か強力な電波障害のせいで

繋がらずただノイズ音が聞こえるだけだった。

エアはカメラを胸ポケットから取り出し、撮影しようとした。

しかしカメラは一切機能しなかった。他にも色々な電子機器を

試してみたがどれも使い物ならなかった。

「ここは何処なんだ?一体?ここは?」とエアは言った。

 

(第14章に続く)