(第10章)強面保安部隊隊長と愉快なびっくりチキン


びっくりチキンを車の排気口にぶっ刺したらうるさすぎた!!

(今日のおまけ)HCF保安部隊員マッド達隊員のイタズラの元ネタ。

 

(第10章)強面保安部隊隊長と愉快なびっくりチキン

 

アッシュ博士は一通り銀髪の男に説明すると隣のベッドで眠っている

ロシア人女性を指さした。そのロシア人女性は20歳位で特徴は。

彼女は横向きに胎児の様に丸まって眠っていた。

銀髪の男には美人のロシア人女性の顔が見えた。

茶髪のロングヘアーにキリッとした細長い茶色の眉毛。

大きな高い鼻。美しいピンク色の唇。

そして美しい女神のような肌と整った顔立ちをしていた。

やがて目を覚ましたのかうっすらと瞼を開けた。

彼女の瞳は美しい榛色をしていた。

「はい!」とロシア人女性は話しかけてきた。

「えっ!はっ!はいっ!」と銀髪の男は顔を真っ赤にした。

「貴方もここに来たの?」

「はっ!はいっ!私はその・・・・色々あって・・・・。」

「貴方のおかげで赤ちゃんも無事!ありがとっ!!」

「おっ!おっ!あっ!それはどうも!どうも!」

銀髪の男は若い女性と話し慣れていないらしく。

顔や耳を真っ赤にしてとても恥ずかしそうにしていた。

するとロシア人女性は自己紹介をした。

「私はエレナ・ハリスよ!」

「私は銀浪次郎です!」

その時、突如、ウィーン!ウィーン!と警報器の警告音が鳴り始めた。

続けてアポロの女性アナウンスが聞こえて来た。

「地下のBOW(生物兵器)飼育室にて再び試作中の昆虫型BOW(生物兵器

スーパープレイグクローラーの暴走を感知!!女性飼育員スウェーデン人の

アンナ・ヘン二ーが無断でスーパープレイグクローラーのコンテナに侵入!!

現在、スーパープレイグクローラーと交尾中!!

またコンテナや外の周囲の空気から昆虫のものと思われる性フェロモン物質を感知!

人間にも作用する模様。アッシュ博士は直ぐに『新型T-エリクサー(仮)』

のワクチンを持って現場に急行して下さい!!繰り返します!」

「全く困ったBOW(生物兵器)だ!

こんな訳の分から無い暴走なんて私は知らんぞ!とんだ問題児だな。」

アッシュ博士は苦笑いを浮かべつつもすぐに「新型T-エリクサー(仮)』

のワクチンの入ったケースを持って、医療チームを集めて現場に向かった。

それをベッドの上で寝ころんだまま次郎は

あっけに取られた表情で全ての出来事を知った。

とにかく一度に色んな事が起こり過ぎて正直なんて答えたらいいのか分からなかった。

間も無くしてエレナも徐々に何が起こったのか理解すると

何故かフフフッと笑い出した。

「またあのスーパープレイグクローラーが騒ぎを起こしている!!」

「スーパープレイグクローラーって?まさか昆虫の事?交尾って……」

「読んで字の如くよ私のお腹の赤ちゃんもね。」

「まっ!まさか?昆虫人間の子供?」

「ええ、でも見た目は胎児と変わらないわ!!『R型』と同じ。」

「そっ!そうかあっ!」と次郎は無理矢理納得した。

そして『R型』と言う子供が気になったがせっかく拾ってもらった命だ。

深入り過ぎて今度こそ殺されたら本末転倒だ。

触らぬ神に祟り無し。『R型』の事はあえて触れなかった。

それから長い間、自分達を見てくれる数人の医師や看護婦は残っていた。

しかも数人の医師も看護婦も新しい入院患者の受け入れの為の準備に

忙しく足音以外ほとんどしなかった。完全ではないがほぼ静かだった。

長い間、平和な時が流れていた。

その間エレナは暇潰しに次郎にスーパープレイグクローラーと出会った話をした。

それはいつものBOW(生物兵器)の世話をする

飼育係としての何気ない話から始まり。

やがてプレイングクローラーと自分がコンテナの中で交尾を始めた話に入った途端に

次郎はまた顔を真っ赤にして大慌てで

「ストップ!ストップ!」と声を上げて話を止めた。

エレナは「えっ?」と言った表情をした。

「これから凄くいい話なのに・・・・・・」と不満を漏らした。

「甘い匂いがして気が付いたらコンテナの中に入っていたと?」

「そうよ!凄く甘い匂いで頭がぼーっとなったの!

きっとあのスーパープレイグクローラーが出していたのよ!きっと!

アンナもそれを感じたからコンテナの中に入ったのよ!」

「つまり・・・・・スーパープレイグクローラーは昆虫特有の・・・まさか?」

「多分!性フェロモンか何かだとアポロは言っていたわ!」

「アポロって?」

「このHCFのセヴァストポリ研究所を管理するAI(人工知能)よ。

彼女が言うのだから間違いないわ!」

「そう言えば!そのアポロの声ってどこかで聞いたような‥‥…」

「えーと!なんだっけ?確か元STASのヴラヴォチームの後方支援メンバーで!

今はどこかの大学の先生でだったわね!名前はレベッカ・チェンバースだっけ!!」

「この声は。やっぱりそうか!そう言えばグローバルメディア企業が

人工知能の声をやってくれる人を新聞かネットかの広告で見た気がする……。

いや!一度だけ僕にもグローバルメディア企業から何年か前にオファーが。

名前は『アポロ』だったな。これも偶然か?」

「あのAI(人工知能)はグローバルメディア企業と

HCFの協力で開発制作されたの。とても優秀なのよ。」

「せっかくだから優秀な人の声を使いたかったのかな?」

「どうやら開発者によると1998年の18歳当時の声で

本人からちゃんと許可を得たとか?ネットであったわね!」

その時、急に医療室の病室の中に数人の黒服の青年達が飛び込んで来た。

黒服の青年達はよく見ると分厚いベストや網目の細目の灰色のシャツを着ていた。

黒服の青年達の姿はまるで鎧のようだなと次郎は後で気付いた。

右腕には『HCF保安部』刺繍が付けられていた。

黒服の青年達は両手で腹を抱えてゲラゲラと笑っていた。

すると看護婦や医師達はその姿を見るなり呆れていた。

やがてこっちの方にもスマートフォンの動画を

再生させながら黒服の青年達が歩いて来た。

するとベッドで横になっていたエレナは呆れて首を上下に振っていた。

「また保安部長の私物にイタズラしたでしょ?ねえ!マット!」

そのマットと名前を呼ばれた一人の黒服の青年はこう言った。

「ああ、今回は保安部長の車の排気口に5つの『びっくりチキン』を

ガムテープで固定して仕掛けたんだ!」

「それで!ブレス保安部長!!知らずにエンジンをかけて

HCFの私有地の私道を自宅の間、ずっとチキンの鳴き声がして!なあ!デニス!」

「へいへい!それがこの動画だぜ!」とデニスと言う名の黒服の青年は

嬉々とした表情でスマートフォンの動画を次郎とエレナに見せた。

次郎は「どれどれ」と言った表情で。

エレナは呆れ果てて首を左右に振り、大きくため息を付いた。

次郎とエレナはそのHCFの保安部隊員の黒服の青年達が

見せたスマートフォンの保安部長のブレス・マドセンの車に

イタズラをして見事成功した様子を撮影した動画を見ていた。

動画には恐らくHCFの私有地内の駐車場だろう。

例の黒服の青年達が彼が乗っていないブレス保安部長の

4WD車に慎重な足取りで接近した。

それから直ぐに4WD車の排気口に5つの『びっくりチキン』と言う

おもちゃを中に突き刺し、青いガムテープでぐるぐる巻きにしてしっかりと固定した。

それから素早く4WD車から離れて近くの物陰の柱に隠れた。

1時間後にブレス保安部長が現れた。

そして4WDの車の中に入り、車内でエンジンをかけた。

次の瞬間、エンジンが起動したと同時に予め仕掛けられた

『びっくりチキン』が排気口から流れる空気で鳴り始めた。

「ココココココココココココッ!」と。

間も無くしてブレス保安部長が乗った4WDが走り出すと同時に

HCFの私有地の駐車場内にまるで鳴き声では無く甲高いつんざくような

『びっくりチキン』達の大絶叫が響き渡った。

「コオオオオオオケエエエエエエエッ!

コケエエエエエエエエッ!コオオオオケエエエエエッ!!」

その瞬間、HCF保安隊員達の大爆笑の声が聞こえた。

「うっるせえええっ!うるせーな!あはははははっ!」

ブレス保安部長は4WDを運転して駐車場を10m程、走り続けた。

その間、あの甲高いつんざくような『びっくりチキン』の叫び声とも

絶叫ともつかぬ鳴き声が聞こえ続けた。

「コオオオオオオケエエエエエエエエッ!コオオオオオオオオケエエエエエッ!!」

しばらくして異変に気付いたブレス保安部長はエンジンを止め、4WDは停車した。

保安部隊員達は4WD車からブレス保安部長が

降りて来る前に全速力でその場から逃亡した。

 

(第11章に続く)