(第46章)プリエール


⁴ᴷ【東方Vocalカラオケ】Prière -プリエール-【SOUND HOLIC】

 

(第46章)プリエール

 

鳴葉はだんだん何かを思い出しつつあった。

更に彼女はその先の穴を見た。暗くて何も見えなかった。

「チッ!」と舌打ちをした。気が付くと通路の奥にいた。

そして赤の血と錆に覆われた机の上を両手で騒がしい音を立てて叩き回った。

彼女は何かを目を皿にして探し回った。

続けて彼女はまた反対側の穴を見た。しかし暗くて何も見えなかった。

「チッ!」と舌打ちをした。気が付くと通路の奥にいた。

そして赤の血と錆に覆われた机の上を両手で騒がしい音を立てて叩き回った。

彼女は何かを目を皿にして探し回った。それからまた反対側の穴を鳴葉は見た。

穴の光景はー。鳴葉は右手で首を掴んで締め上げている

ヴァイオレッドを見て笑っていた。

「ヴァイオレッド!分かる?いつもいつもあのTV局の連中にい女として

小突かれて馬鹿にされて!胸やお尻を何度も握られたあたしの気持ちが!!

何を動く度に笑われてお尻や胸をいたぶられる。それを貴方達は笑い続けていた!!

親友だと信じていたのに!違うと!思っていた!!

あんたなんか!豚の中から生まれた豚女!!いるだけで!暑苦しいし!

ウザイし!キモイのよ!酸っぱい生ごみは湖に帰れ!!」

更に鳴葉は「ああ嘘でしょ?嘘だって言って!誰でもいいから!!」

そう叫び続けながら続けて穴の奥の先を見た。

鳴葉は首を掴んで締め上げているヴァイオレッドを見た。

すると彼女は研ぎ澄まされた肉切り包丁を取り出した。

見えなくなって暗くなった。鳴葉は次の奥の先の穴を見た。

もう自分の意志では止められない。誰か止めて欲しい。

心の中でそう願った。しかし誰も彼女の行為を止める者はいなかった。

次の奥の先の穴では。鳴葉は肉切り包丁を振り上げてヴァイオレッドの

胸部に深々と突き刺した。ブシュッ!と赤い血が噴き出した。

「うううううっ!ぎゃああああああっ!!」と甲高いヴァイオレッドの絶叫。

さらに鳴葉はヴァイオレッドを地面に叩きつけた。

さらに追い打ちをかけるようにヴァイオレッドの上に跨ると

彼女の背中を何度も何度も何度も肉切り包丁でめった刺しにした。

鳴葉は右腕を何度も何度も肉切り包丁を振り上げてヴァイオレッドの

背中をあっちこっち刺し続けた。ヴァイオレッドは泣き叫んだ。

両眼から涙を流して背中から大量の血を流して。ただただ狂ったように

「痛い痛い痛い痛い痛い!」と叫び続けた。

鳴葉はトドメにヴァイオレッドの金髪の前髪を掴んだ。

鳴葉は彼女の息の根を止めた。遂に何もしゃべらなくなった。

喉から大量の血が流れ草木を染めた。鳴葉は出入り口の近くの最後の穴を見た。

鳴葉は殺したヴァイオレッドの死体を白い袋に無理矢理詰めた。

彼女は死体の入った白い袋をボチャン!と水柱を上げ、トルーカー湖の水底に沈めた。

凶器の肉切り包丁も水の中に捨て去った。

更に手袋も湖の中に犯罪の証拠となる服も全て

何もかも脱いでトルーカー湖へ捨て去った。

そして自分の車に戻って行った。鳴葉は大声を上げて全速力で走り、扉を開けた。

彼女は細長い通路を走り抜けて『MAINTENANCE ROOM』を出た。

そして『500号室』の前の茶色の地面に座り込んだ。

鳴葉はあおむけに倒れて子供の様に泣き喚いた。

「あああっ!あああっ!失踪なんかしてなかった!!私が!私が!!

全て思い出した!私が殺した!殺しちゃった!あああっ!

うわああああん!あーああっ!うわあああん!!」

彼女の心に自分の犯罪の重さと後悔の念、全てが重く圧し掛かって来た。

しかし心は壊れる寸前で耐えられなかった。

彼女は逃れられない苦しみに絶望した。自分はどうすればいいのか分からなかった。

心は崩壊しかけた。更に鳴葉の目の前にはあの肉屋で遭遇した半分三角マスクの怪物

『ブッチャー』が立っていた。鳴葉は両手で頭を押さえて髪をむんずと掴んだ。

そして両瞳を閉じ、絶叫した。

「きゃああああああああああああっ!!きゃあああああああああああっ!」

やがて鳴葉は完全に意識を失った。そして彼女の目の前が真っ暗になった。

どれだけ長く意識を失っていたんだろうか?やがて鳴葉はパチパチと瞼を動かした。

やがて意識を取り戻して上半身を起こした。だがそこは。悪夢から覚めなかった。

裏世界にまだ鳴葉は取り込まれていた。

見ると横の視界に『500号室』と扉があった。

ああこの先の。何処にあるの?何処に続いているの??どうして?どこに?

彼女は立ち上がった。しかし頭がフラフラしていた。もう!嫌だ!ここで!!

やがてキーイーツ!と音を立てて『500号室』の茶色の扉が開いた。

彼女はグズグズと泣き、鼻水と涙を両手で拭った。

それから立ち入り、『500号室』の中へ入って行った。

直後、目の前が真っ白になった。それは鳴葉の過去の記憶だった。

トルーカー湖でのヴァイオレッド殺害後の何ケ月か後。

鳴葉は自分の婚約者の男性とニューヨーク市内のテレビアナウンサーの仕事をしていた

頃に出会ったアメリカ人男性とマディソンスクエアガーデン駅の噴水前で会っていた。

そのアメリカ人の男は相変わらずボサボサの茶髪をしていた。

そして茶色の瞳で鳴葉を見ていた。するとアメリカ人の男のマイキーは

しばらく茶色の髪を掻き、両手に箱を持ってもじもじしていた。

鳴葉はそんなマイキーの次の動きをただ黙って待っていた。

やがて彼は鳴葉の前にバッ!と高速で箱を差し出した。

鳴葉が箱を開けると。その中に銀色の指輪が入っていた。

マイキーは「僕と結婚して下さいッ!!」と顔を真っ赤にして言った。

しかし鳴葉は何ケ月か前に親友を殺してトルーカー湖に沈めた事を思い出した。

その瞬間、彼女は強い罪悪感に襲われた。やがてそれは自らの心を締め付けた。

更に人を殺した事によって二度と幸せになれない。そんな強い強い絶望感に駆られた。

私は幸せになれない。救われない。もう人間としての一線を越えた。

これ以上迷惑はかけたくない。どうせ謝ってもきっと許してくれない!

彼女の本心だった。私は殺人鬼。私は人を殺したくない。ごめん。

鳴葉はマイキーに背中を向けた。その場でOK出来なかった。

彼女は精神を病んでいた。ニューヨーク市にと

自宅を何度も何度も往復する自分の一本道。

右左右左右と歩き回って口の中に薬を入れて。

繰り返し。逃れられない。いや嫌々。嫌々。

愛を全う出来ないなんて嫌!!愛を全うで出来ない!!

嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。

鳴葉はその先の真っ暗闇の細長い通路を下へ下へ下へと歩き、坂を降りて行った。

それはまるで自分の深層心理への奥へ奥へと進んで行くようだった。

この先に何があるのだろう?何があるのだろう?

首吊り死体になった自分だろうか?あの自殺した男の幽霊のように。

あるいは墓石と墓穴があるのだろうか??

鳴葉は誘われるように先へ先へと進み続けた。

鳴葉の目の前に白い扉が見えた。やがて彼女は白い扉を開けた。

そこはどこかの部屋。いやモーテルの表世界の部屋だった。番号は全く分からない。

そこは真っ白な美しい部屋だった。

部屋の右側に大きな四角いダブルベッドが置かれていた。

奥には洗面台とトイレが見えた。あとは木製の台とアナログテレビが置かれていた。

そこにギイーッ!と音を立てて青く輝く人型の生物が入って来た。

その人型の生物は青色の三角形の頭部は青い革に包まれていた。

頭部はつるりと綺麗で滑らかな皮膚であろう青い革は美しかった。

また服は着ておらず青い筋肉質な胸板と腹筋のある青い筋肉の腹部があった。

また人差し指、中指、薬指が繋がった奇妙な形状の付いたゴム手袋をしていた。

そして長靴は履いておらず青い足と5本の短い爪のある指があった。

鳴葉は最初は敵だと思い武器を構えた。

しかしその人型の怪物は彼女に身振り手振りで自分に敵意が無い事を伝えた。

それでも鳴葉は信用しなかった。それから人型の怪物は自らゴム手袋を脱いだ。

彼はかつて鳴葉に渡そうとしていた結婚指輪を見せた。

すると脳裏にマイキーの姿が浮かんだ。

そして彼は鳴葉が『静かなる丘』の街へ行って

失踪してしまった事を酷く心配していた。

更に彼女はニューヨークの市内で精神を病んで精神病院に

毎日通い続けているのも知っていたのでよけいに心配だった。

まさか?何処かの池や湖や海とかで入水自殺なんかして命を絶ってしまったら?

そう思うと彼は心配して眠れなかった。

急に連絡が取れなくなったのでマイキーは鳴葉の行方を追い求めて街中を探し回った。

しかしニューヨーク市内には彼女の姿はどこにもいなかった。

それから知り合いの友人に何人も何人も訪ねて行方を

毎日仕事の休みや休日を使って歩き続けた。しかし一行に彼女は見つからなかった。

鳴葉!クソっ!どこだ!どこにいるんだ??

鳴葉!君は何処に??しかしそれから何10ケ月後かその位経って

一人のアナウンサーの友人の男から鳴葉は『静かなる丘』へ行ったと言う話を聞いた。

彼はすぐに『静かなる丘』へ車へ向かった。仕事を辞めてまで。

ザーザーザーと言う豪雨とゴロゴロと言う雷の音を聞きながらマイキーは・・・・。

 

(第47章に続く)