(第55章)輪廻転生のメリーゴーランド

(第55章)輪廻転生のメリーゴーランド

 

『静かなる丘』の遊園地。

シェリルの刑事の力でモーテルから遊園地へ送られたエアとエイダと鳴葉と

レッドフランドールが目覚めたのはアイスクリーム屋の前だった。

更にそこにシェリル刑事が現れた。

「貴方をここに飛ばしたのは。私のパパのハリー・メイソンがかつて行方不明になった

シェリルを探してこのアイスクリーム屋に書き残したメモがあったから。

つまり私のパパの残留思念と生きている私の残留思念を繋げて道を作ったからなの。」

「つまりここに父親が来た事があると?」

「そう言う事よ。それにパパは幽霊になっても私やリサと

常に連絡を取って情報を共有しているの。パパが持ってきた新聞。」

そう言うとシェリル刑事はアイスクリーム屋の

売り場上に新聞があるのを教えてくれた。

エアは手に取って読み始めた。エイダも鳴葉も新聞を覗き込んだ。

それはニューヨークタイムズの記事のようだった。しかも2つあった。

アメリカ大学のサークル『オズ』のメンバーの女子大学生。

『静かなる丘』で失踪。捜査するも手掛かり見つけられず。

10日前からアメリカの大学生の大学生の女性達が『静かなる丘』に

行ったっきり親や友人と連絡を取れずにいる事が警察の発表で判明した。

過去にも『静かなる丘』では多数の人々が謎の失踪を遂げている。

失踪したメンバーは以下の通り。

ブリキの木こり『有村麻子』。オズ『山岡・フィリップス・莉奈』

話す案山子(カカシ)『小杉莉子』。臆病ライオン『七羽亜優』。

ドロシー『山岡・フィリップス・詩音』のメンバーの5人である。

現在地元警察とニューヨーク市警は協力して引き続き、

彼女達の行方を捜査中である。また目撃情報も集めている。」

2枚目のニューヨークタイムズの記事にはこう書かれていた。

「ニューヨーク全米各地で父親による銃殺で一家心中が多発!

家族を殺した父親は次々と自殺。原因不明!!」

「これは一家心中のまさか?何か関係あるのか?」

「もしかしたら家庭内暴力かも知れないわね」とエイダ。

「嫌な事件・・・・・とても嫌な気分。」と鳴葉。

「それじゃあとはメリーゴーランドに教会!敵の本丸は目の前よ!」

シェリル刑事は斜め右上を指さした。

そしてどこかの暗闇の中にあっと言う間に消え去った。

エア、エイダ、鳴葉とレッドフランドールは改めてアイスクリーム屋を見た。

大きなアイスクリームのレプリカとアイスクリームのメニューボード。

冷やす為に小型冷蔵庫もあった。しかし他に特に何も無さそうだった。

4人はメリーゴーランドに向かって出発した。

するとさっきまでいなかった筈のクリーチャー達が暗闇から次々と現れた。

しかも肉屋で殺されたセクシャルスラーパーが4体同時に出現していた。

セクシャルスラーパーは豚のようなマスクに肥大化した両腕に革の袋で覆われていた。

四つん這いで地べたをはいずりながら

エアを無視して鳴葉やエイダの方へ向かって来た。

そして隙を付いて4体は次々と鳴葉やエイダに体当たりして来た。

エイダは両脚を踏ん張って転倒しなかった。

しかし鳴葉はそのまま転倒してしまった。

すかさずセクシャルスラーパーは鳴葉に向かって舌を伸ばした。

だが鳴葉は上半身を起こし、鬼神のような恐ろしい表情で

セクシャルスラーパーを見た。

彼女は両手でマシンガンを構えて、引き金を引き、ハチの巣にした。

あっさりとセクシャルスラーパー4体は仰向けに

倒れて血溜まりの中で動かなくなった。

しかし1体はだけ死んだふりをしていた。

鳴葉が接近した直後に上半身を高速で起こした。

流石の鳴葉も悲鳴を上げた。

異変に気付いたエイダが怒りの表情で何処から拾って来た

銀色の鉄パイプでセクシャルスラーパーを真横から叩きのめした。

セクシャルスラーパーは「ぐえっ!」と声を上げてそのまま本当に動かなくなった。

「もう悪いけど。変態男に同情できないわ!」

エアはエイダがいつもよりも感情的で起こっている事に気が付いた。

するとエイダはエアと鳴葉、レッドフランドールにこう説明した。

あの4体のセクシャルスラーパはセクハラする

弱い男の思念が具現化したものだと言う。

更にエアに助け起こされた鳴葉はあのセクシャルスラーパーはあくまでも

個人的な解釈だと前置きした。つまりあの異形の怪物は鳴葉がテレビ局のアナウンサー

として勤務していた時に同僚のアナウンサーの男性や男性司会者、スタッフによって

赤いスカートの中をスマートフォンでパンツを盗撮されたり、手を突っ込まれてお尻を

触られる痴漢行為に対する不快感や恐怖が具現化したものだとエアとエイダと

レッドフランドールに説明した。つまり彼らのような存在に精神的に追い込まれて。

あのブッチャー(殺人鬼)が産まれたのだろうと結論付けた。

でもあいつはもう怖くない。だから倒せた。

またストレイトジャケットフランやグローナス、ロンパファイヤー、クリーパーに。

ツーバックと次々とクリーチャーが現れたが

全てマシンガンや鉄パイプを振り回したり。

振り下ろしたりして次々と撃退して行った。

そしてアイスクリーム売り場から斜め右上にある

教会の入り口のメリーゴーランドを目指して先へ進んだ。

そして途中またもや3体のイツマデンがエアとエイダ、鳴葉の頭上に飛んで来た。

1体のイツマデンは「ゲームやテレビをいつになったら!返してくれるの?

ゲームやテレビをいつになったら返してくれるの?

ゲームやテレビをいつになったら返してくれるの?

ゲームやテレビをいつになったら返してくれるの?」

と何度も何度もしつこく叫び続けた。

1体目のイツマデンは急降下して両腕を伸ばして

8対の鋭利な鉤爪で大人のエアやエイダや鳴葉に飛び回りながら切りかかって来た。

2体目のイツマデンは「携帯!スマートフォンを返せ!

いつになったら返してくれるの?

携帯!スマートフォンを返せ!いつになったら返してくれるの?

携帯!スマートフォンを返せ!いつになったら返してくれるの?

携帯!スマートフォンを返せ!いつになったら返してくれるの?

携帯!スマートフォンを返せ!いつになったら返してくれるの?

いつまで?いつまで?いつまで?いつまで?いつまで?いつまで?」

2体目のイツマデンも急降下して甲高い声でひたすら

壊れた機械のように叫び続けながら両腕を伸ばして8対の鋭利な

長い爪で切り付けてエアと鳴葉、エイダを攻撃した。

更にエイダには両腕で抱き着いて口で顔全体を覆い、鼻と口を塞いだ。

エイダは呼吸が出来ず苦しそうにモゴモゴと声を上げ続けた。

しかしエイダ隠し持っていたサバイバルナイフでイツマデンの

オレンジ色の背中に深々と突き刺した。イツマデンはキーツと甲高い声を上げた。

そしてフラフラと宙に戻り、甲高い声でこう叫び続けた。

「いつまで?いつまで?いつまで?いつまで?いつまで?いつまで?」

イツマデンは遠くの暗闇へ飛び去って行った。

エイダは僅かにコホッ!コホッ!コホッ!と

咳をするととても悲しそうな表情になった。

そして遠くへと飛び去って小さくなっているイツマデンをいつまでも見送った。

2体目はエアのハンドガン数発によって墜落して息絶えた。

最後の3体目は鳴葉は申し訳ないと思いつつも生き残る為に

イツマデンに向かってマシンガンの引き金を引き続けた。

やがて最後のイツマデンはうつ伏せにコンクリートの床に墜落して息絶えた。

「さぞや無念だったんだろうな。とても怒っていたのだろう。」

「でも!同情は出来るけど殺されるのはまっぴらごめんだわ!」

「先・・・へ・・・進みましょう!こんな悲しい悪夢早く終わらせないと!!」

それからようやく鳴葉、エア、エイダはメリーゴーランドのところまで辿り付いた。

するとメリーゴーランドの少しだけ錆び付いた1m程の高さの銅の門の

中央に白いメモが張られていた。エアは手に取って読んだ。

「日本(ここだけ黒く塗りつぶされている)女子大学生サークル『オズ』。

今日はメンバー4人で『静かなる丘』の教団と神の謎に迫る!!」

(その先はメンバーが殴り書きで残した文章のようだ)

知るべきじゃなかった!知らないべきだったのよ!!教団が!!

反メディア団体ケリヴァー!!ズタ袋の男と女達!!あの悍ましい光景!!

私達メンバーのほとんどは!!あいつらに連れられた!!

知らない方が幸せだったのよ!知ったら不幸になってしまった。

どうしよう!どうしよう!」

「知らない方が幸せだったか?」とエア。

「確かにその通りな事もあるわね」とエイダ。

「ねえ。これ?ビデオカメラ??」と鳴葉は少し錆び付いた門の

鋭った先端に長いひもで吊るされていた。彼女はビデオカメラを取った。

そして3人はキィーツと音を立てて門を開けた。

4人は門の先へ進んだ。そして右側の看板にはー。

「ハッピーメリーゴーランドの入り口」とあった。

しかもまるで営業中のように明かりがともっていた。

「営業中?じゃないわよね?」と鳴葉。

「うーん?罠か?」とエア。

「でも!他に入り口が無いと思う。罠だと分かっていても」とエイダ。

「先へ進むしかないわね」とレッドフランドール。

それから4人はメリーゴーランドに続く道をどんどん進んで行った。

4人は乗り場の受付の黄色の建物の横を通り抜けた。

続けて4人はメリーゴーランドの階段を早足で昇った。

そして門を通ってメリーゴーランドの中へ入った。

メリーゴーランドには赤い不気味な模様に頭部と背中に

三角形の角が生えた13頭の馬が互い違いに並んでいた。

間も無くしてガタン!と言う音にゆっくりとメリーゴーランドは動き出して

回転し始めた。同時に楽しげな音楽な鳴り始めた。

「ズンチャッチャ♪ズンチャチャチャ♪ズンチャッチャ♪」と。

「動いたっ!」と鳴葉。「ちょっと不気味ね」とエイダ。

それから既にエアはメリーゴーランドの中をぐるぐると回転し探索を始めた。

続けてエアも鳴葉も探索を始めた。

間も無くしてエイダと鳴葉は13頭の馬を調べてみた。

しかし結局は特に気になるものは無かった。

一方、レッドフランドールはメリーゴーランドの周りを見ていた。

するとメリーゴーランドの周囲は螺旋を描くように茶色の錆で覆われた壁と

時々、赤い錆の壁の一部が所々に見える場所がある大きな壁と細長い穴が見えたり

しているのを繰り返しているのにレッドフランドールは気付いた。

どうやらメリーゴーランドはまるでエレベーターのように

下へ下へ下へ深く深くどんどん降りて行っているようだ。

「これは?エレベーター?地下に教会の入り口が??」

「へえー大した仕掛けね。何処に降りるのかしら?」

「分からないけど!地獄の底である事は確かよ」

鳴葉とエイダは床に描いてある真っ赤な血文字を見つけた。

どうやらシェリル刑事の前世のアレッサ・ギレスピーが残したメッセージのようだ。

2人は屈んでそれを読み始めた。

「私は死ぬべきだ。それを恐れる事はないのに。

あの子が・・・・あの悪魔が孵り、永遠の苦しみに囚われる事を思えば。

あの病室の日々よりも深く残酷な・・・・。安らかな終わりも私は私に与えたかった。

何故?それを拒み進もうと願うのか愚かな私・・・・。」とあった。

「アレッサ!本当は優しい子」とエイダは

残留思念を何故か読み取れたのでそう呟いた。

鳴葉も彼女の残留思念を読み取ったのか何故か切ない気持ちに駆られた。

「こんなに優しい子なのに!周りの教団の大人達は酷い連中!!」

鳴葉は怒りを感じて両拳を僅かに握った。

そう!あの反メディア団体ケリヴァーの大人達の一緒なんだわ!

更にエイダはアレッサが残した

赤い血文字の床の近くの床にビデオカメラが落ちていた。

しかもビデオテープが一本落ちていた。

エイダはビデオテープの蓋を開けて空の中にビデオテープを入れて再生させてみた。

それはアメリカ大学の女子大学生サークルの

『オズ』のメンバーの1人が残したもののようだ。

ビデオ画面には荒々しく獣のような息遣いと甲高く喘ぐ声が聞こえて来た。

しかし音声は聞こえるがしばらく画面は真っ暗なままだった。

 

(第56章に続く)