(第17章)命を狙われる洋子と長野先生

(第17章)命を狙われる洋子と長野先生

「ヤバイぞ!早く逃げろ!」
しかしナメクジ怪獣はジャンプして巨大な牙を剥き出し、野獣
の様な唸り声を上げて7人に襲いかかった。
すると誰かが
「ああ……だから!言わんこっちゃない!」
と言うのを最後に絶叫と銃声が響き渡った。
 病室の窓から凛と友紀と山岸はその様子を見ていた。
山岸は「なんなの?あのナメクジは??」
凛は「いや!違うわ!あれは!」
すると
ハダカカメガイだな!」
と声がした。
2人が振り向くと蓮が凛と山岸の病室のドアの前で腕組をしな
がら立っていた。
山岸は衝撃のあまり口を半開きにして
「ウソだろ!クリオネの体長は1cmから3cmの大きさしか
ないのに……あわわわ……!大変だ!」
とつぶやいた。
凛は
「あの人達!吹雪で何も見えないんだわ!」
友紀は「あのままじゃ……」
山岸は「すぐに地球防衛軍に連絡しないと!」
友紀は左手に持ったカメラを吹雪の舞うビルの屋上に向けながら
「いないわ!どこに行ったのかしら?」
山岸が「さっきビルの屋上にいた女の人?」
友紀は
「どこに行ったのかしら?」
しかしその女性はいくら探しても見当たらなかった。
 しばらくして何かを見つけた様子で蓮は友紀の肩を叩き、
「早く逃げよう!」
と走り出した。
友紀は何だか分からず一度机に置いてカメラの録画を骨折していない
左手でボタンを押して一時停止にしてまた左手で持ち直すと
「何なの?どうしたの?」
蓮は
ゴジラの背びれがさっき海からチラッと見えた!
すぐに他の人達に伝えて地下に避難しないと!」
と言った。
 本当に避難誘導用のアナウンスが流れ始めた。看護婦やその
他大勢の医師達が、その病院内に流れる避難誘導アナウンスの
ガイドに従い、車椅子やベッドを使い、入院患者達を地下の避
難所に避難させようと周りはごった返していた。
 その大勢の人混みの中から原田先生と数人のクラスメイトが走って来た。
 大きな爆発音が聞こえ、全員振り返って窓を見た。窓にはあ
の凛のクラスが乗っていた網走の流氷観光砕氷船「おーろら号」を襲った巨大生物が現れた。
 その巨大生物は「おーろら号」で見た姿形とはずいぶん違って見えた。
全身に半透明の青緑色のゴジラに類似した鱗を持っていた。
脇腹の左右にゴジラの背びれの形をした巨大な翼足があるのがビルの間からチラッと見えた。
 両腕は「おーろら号」で見た時よりもずっと巨大で、
頸椎にあったコブラに似たフ―ドは退化して無くなっていた。
頭部はコブラに似た形では無く、むしろ胸部の核と
思われる部分が巨大なクリオネに似た頭部に変化していた。
 巨大生物が咆哮を上げると、クリオネに良く似た8本の赤黒
い吸盤のある触手が口から飛び出し、周りのビルや建物をなぎ倒した。
8本の触手の中心には円形の巨大な牙が内側に沿ってびっしりと並んでいた。
下半身にはヒグマのごとく太くがっしりとした巨大な両足を持ち、ゴジラに類似した尻尾が生えていた。
原田先生は
「なんなんですか?……あのヒグマとクリオネゴジラを掛け合わせたような生物は!」
山岸は
コブラの部分は退化したのかな?蜘蛛は口の部分じゃないかな?」
隣にいた凛は
「何を呑気な事を言っているの!ほら!非常ドアが開いたわよ!早く逃げましょ!」
 看護婦や医師達は順番に重病の患者を優先的に非常階段から
避難させた。
 その一番後ろから凛と他の数人のクラスメイトと原田先生が続いた。
階段で友紀は
「あれ?洋子ちゃんは?」
更に山岸が
「蓮君もいない!どこ行っちゃったんだろう?」
凛は
「探しに行って来る!」
というと2人を振り切り、人混みの中に紛れて見えなくなった。
原田先生は
「危険ですよ!戻って下さい!待ちなさい!」
と言うと凛の後を追った。
山岸や友紀も続こうとしたが人混みに流され、2人は仕方無く、非常階段から避難して行った。
 洋子と蓮は、エレベーターがちょうど2階で緊急停車したの
で、仕方が無く一般の階段を駆け下りていた。階段を息荒く駆
け下りながら蓮は洋子の手を掴み
「待つんだ!避難用の階段から!避難しないと!」
洋子は蓮の手を振り切り
「離して!狙いはきっとあたしよ!」
蓮は
「長野先生も命を狙われているんだ!長野先生は皆と一緒に避
難した!君もそうしろ!一人で動くんじゃない!」
洋子は「でも!」
その時、「ガシャーン!」とガラスが割れる大きな音が響いた。
洋子は「何なの?」
続いて男たちの声で
「早く逃げろ!エレベーターは?」
「駄目だ!動かない!」
「階段で避難だ!」
更に獣の唸り声と銃声が聞こえた。
悲鳴や絶叫、火炎放射機の音、獣の断末魔の声、何かが破裂す
る音が下の階から聞こえた。

(第18章に続く)

では♪♪