(第79章)怪獣工作員

畑内です。
ゴジラの自作小説です。

(第79章)怪獣工作員

凛はふと昔から抱いていた疑問を語り始めた。
「そう言えば!一つ疑問だけど……沈んだアトランティス大陸は何処へ行ったの?
アトランティスの住民は開発途中のコウモリの様な怪獣に食べ尽くされた可能性も考えられるけど……
アトランティス大陸の存在自体、色々な説があるけど……
はっきり言ってそれらしい遺跡は地球上、何処の海底にも見つかっていない……」
ウリエル・バラードは二ヤリと笑い、
「……アトランティス大陸は現実の海底に沈んだのでは無いとしたら?」
凛は思わず両手を振り、
「待って!待ってよ!だったら?アトランティス大陸
空想と現実の狭間に沈んで行ったとでも言うの?」
「その通り!アトランティス大陸は無限に巨大な怪獣世界を漂っているのだ!
『朱雀』とコウモリの様な怪獣の群れは『玄武』によって肉体を滅ぼされた。
生き残った住民は大陸の外へ避難した。
しかしその時死んだアトランティス大陸の住民達の魂のある部分は、
大陸が怪獣世界に沈み込んだときに取り込まれて、
今でも続々と誕生する怪獣達の高エネルギー源として利用されている!
それは彼らの怨念のようなものだ。
彼ら自身は転生しても、その因縁は付きまとう。
第3の堕天使はそのエネルギーを用い、
生まれ変わった者たちの所に次々と関わってくるのだ。
怪獣世界にそのエネルギーがある限り、第3の堕天使も現れる。
洋子、お前もその一人だ。残酷な話のようだが!神を越えようとした彼らには当然の報いだ!」
「でも……小美人はその事を話してくれなかった……」
凛はつぶやいた。
「小美人やモスラは確かにその残酷な真相は知っていた!
しかしあの『デストロイアの戦いの時に話すべき事で無いと思い』君には話さなかったのだろう!」
とどこか悲しげな声で答えた。
「まるで……ミツバチが集めた蜂蜜みたいね……」
「お前の肉体に宿っている『朱雀』の魂がそれだけ非道な事を
してきたのだ!アトランティス大陸の住民を死に追いやった大罪をお前は償わねばならぬ!」
と洋子の顔を赤い恐ろしい目で睨みつけた。
洋子は心痛な表情のまま
「でも?どうしたら?」
「お前の身体には『朱雀』の巫女の魂と
ゴジラの血が流れている!」
「えっ?あたしにゴジラの血が?ウソでしょ?」
「いや!嘘じゃないわ!あなたには確かにゴジラの血が混じっているの!
あなたはあたしと同じ『モンスター・キャリア』なのよ!」
洋子は怪訝な顔をして、
「『モンスター・キャリア』まさか?このあたしが?」
と自分の胸を指さした。
ウリエル・バラードは
「お前の任務は朱雀の魂を持つガイガンと同化して、
『第3の堕天使』に身体を乗っ取られたジラごと怪獣世界へ隠滅させる事だ!
そして、お前が原因で封じ込められた怪獣世界の怨念を消し去れ!」
「えっ?『第3の堕天使』は倒せないの?」
「倒す事は不可能だ!だが邪悪な力は正しい力に近づけない。
自らの罪を償い、自らの存在を正しくする事で地球の安全や秩序は守られる!
それが朱雀の巫女の魂を持つお前の任務だ!」
凛は真剣な表情で
「つまり!現実の仕事に例えるとあなたはあたしと同じように怪獣工作員になるのよ!」
洋子は怪訝な顔で
「怪獣の工作員??」
ウリエル・バラードは
ゴジラの血と『朱雀』の巫女の魂を持つお前には、
彼女と同じように怪獣工作員の素質がある!」
と凛と洋子の顔を交互に見た。
洋子は決意した表情で
「分かったわ……やってみる!」
と青緑色の輝く勾玉を強く握りしめ、答えた。
「気付けて!」
と凛。
「失敗したらどうなるの?凛ちゃん?ついて来てくれるの?」
と洋子は決意した表情から不安な表情に変わった。
「罪は自分一人で償わなければいけない!私も怪獣世界でしか本体を現せない状態だ!
失敗すれば……私達はどうしようもない……待つのは『破滅』あるのみだ!」
ウリエル・バラード。
その間にも洋子の目の前に眩しい程の
青緑色の光が差し込んでいた。
やがて洋子の目の前が青緑色の光に包まれ、ウリエル・バラードと凛の姿は陽炎のように消え、
洋子の目の前は青緑色になった。

ガイガンのモノアイの赤いモニターには
「謎の……再起動。原因不明」
しばらくしてピーッ!と警報が鳴り、
赤い画面の前に3つの光が点滅していた。
「不明。人間?ノスフェラトゥとミュータントのハーフ?」
「1人体格一致!音無凛?怪獣?モスラ?不明。
もう一人はノスフェラトゥとミュータントとハーフの女性?」
やがて3つの光の内、2つは消失した。
ノスフェラトゥとミュータントのハーフの女性? ゴジラらしき高エネルギー確認!」
と表示された。
一方、ゴジラは痛々しい胸の傷を片手で押さえ、ウッ!と吐血するとようやく立ち上がった。
ジラも怒りの咆哮を上げ、辺りの木々をなぎ倒し、
暴れ狂う闘牛の様に猛然と吐血し、ようやく立ち上がったゴジラの方へ向かって行った。
ジラは涎を垂らし、大口を開け、サメかワニに似たナイフの様な鋭い牙を向き出し、
吐血したゴジラをさらに追い詰めようと首筋に深く噛みついた。
ゴジラは痛みで悲鳴を上げつつもジラの首筋に同じく噛みつき、反撃した。
その時、「ドカーン」と言う爆発音が響き、ジラとゴジラ
驚いて爆発した方に顔を向けると、青緑色に輝き、
木々をなぎ倒して起動したガイガンが立っていた。

地球防衛軍本部。
A群溶血性レンサ球菌により、どれもどす黒く全身が変色して
死んでいる2人のミュータントの遺体と現場を調べた所、
ボイラー室の灰色の床に注射器らしき物が落ちているのを蓮が見つけた。
すかさずニックは手袋をして、慎重に自分に針が刺さらないよう拾いビニール袋に入れた。
ニックは蓮に
「とにかく!隔離される前にジェレルのいるカウセリングセンターに戻ろう!」
2人が話している時、ボイラー室の戸口にグレンが現れ
「今度は凍りつけの警備員の死体が見つかった!」
「何人ですか?」
と蓮。
「3人!そちらの死因は?」
とグレン。
「M塩基破壊兵器のA群溶血性レンサ球菌による感染死だ!
どうやら注射器で感染させたらしい!」
ニックはビニール袋に入った注射器をグレンに見せた。
さらに蓮が、死んだ警備員のドス黒い腕を捲ると小さな針の跡が見えた。
それから2人はグレンと共に、凍死した警備員の遺体のある現場へ向かった。
食糧倉庫の冷蔵庫の中に下腹部が裂けた凍死した警備員が一人、
もう一人はその冷蔵庫から1m離れた冷たい床の上に転がっていた。
3人は先へ進むとその一番奥の壁に同じく下腹部が裂けた
警備員の死体が座り込んだ姿勢で死んでいた。
そこに数名の医療スタッフが現れ、
それぞれ3人の警備員の死体は白いタンカに乗せられて行った。

(第80章に続く)

では♪♪