(第86章)現実と空想の狭間に取り残された怨念達

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第86章)現実と空想の狭間に取り残された怨念達

ガイガンは青緑色の帯状の烏に似た翼をなびかせて再びジラに向かって行った。
ジラは
「こしゃくな!」
と言う様に吠えると8本の細かいノコギリ状の棘で覆われた触手を振り回し、
再びガイガンの身体を切り裂こうとした。
しかしガイガンの背中の翼で触手を逆に受け止め、弾き返した。
それから尾の先端のアサルトライフルから青緑色の光線を放ち、
 ガイガンの放った青緑色の光線はジラの下腹部の
8本の触手の中央に見事当たり、大爆発を起こし、
8本の触手は四方に全て千切れ飛び、
その千切れて飛んだ触手は全てドス黒い塵となり、消滅した。
 やがてジラの下腹部の抉れた皮膚は新しい皮膚が形成され再生したが、
あのノコギリ状の細かい棘に覆われた8本の触手は二度と生えて来なかった。
 そこにたたみかける様にガイガンは巨大な鉤爪を振り回し、
再生したばかりの下腹部の新しい皮膚をバッサリと切り裂いた。
 ジラは下腹部からドス黒い塵と血をまき散らし、
怒り狂ったジラは耳まで裂けた大口を開け、ガイガンに噛みつこうとした。
ガイガンは尾の先端にあるアサルトライフルを向け、
口の中に青緑色の光線を撃ちこもうとした。
 その時、「ボキボキ!」と音を立てて、ジラの舌に人の顔のような物体が何個も浮かんで来た。
しかもまだ人としての個人の意識があるらしく
「助けてくれ―っ!」
と男の声でガイガンと同化している洋子の意識に訴えた。
赤いモニター画面でガイガン
「多数の人と思わしきエネルギーを確認!個人特定不可!」
一方、洋子の意識は
「まさか?あれが……」
とつぶやいた。
しかもジラの口の中でまだ
「助けてくれ!俺達は取り残されたんだ!」
と洋子の意識に訴え続けた。
洋子の意識は思わず、光線を放とうと尾の先端の
アサルトライフルにエネルギーを充電している最中のガイガンのコンピューターに
「待って!」
と訴えた。
ガイガンは尾の先端のアサルトライフルをジラの口に向け、充電したまま、その場に静止した。
ジラは
「馬鹿め……」
とつぶやくと口を閉じ、そして尾の先端の青緑色の
アサルトライフルをサメかワニ似た牙により、
「バキッ!バキバキ!」と音を立て、真っ二つに噛み砕くと、
死神のカマに似た鋭いかぎ爪でガイガンの胸を切り裂こうとした。
 すかさずガイガンは胸、腹から股間にかけて
装備された巨大な回転カッターを高速回転させ、
ジラの鉤爪を「ギュウイイイイン!」とドス黒い塵を辺りにまき散らしながら切断した。
 切断された鉤爪は地面に落ち、ドス黒い塵と化し、跡かたも無く消滅した。
 そこに再びゴジラが身体を回転させ、ジラの腹に尾を叩きつけ、宙へ弾き飛ばした。
 ジラが宙返りをして別の場所に着地した途端、足元が突然爆発し、木々や土埃を巻き上げた。
 ジラはもんどりうって地面に倒れた。
 どうやらオニール軍曹率いる米軍の戦車部隊がジラの進行ルートに地雷を仕掛けたらしい。
それからオニール軍曹は
「よし!ジラを倒せ!一斉攻撃開始!」
と号令を掛けるとアサルトライフル、ロケットランチャー、
グレネ―ドランチャーでジラを集中的に攻撃した。
 ジラは再び怒り狂い、口から火球を吐き、戦車部隊を次々と破壊した。
その様子をオニール軍曹は双眼鏡で観察していた。
「チッ!火の球まで吐けるようになったのか?大した奴だ!」
それから森の上空にはV字型に組んだステルス戦闘機の一隊が到着し、
ジラとゴジラガイガンがいる一帯に巨大なクラスター爆弾を一気に落とした。

 覇王圭介と音無美雪、そしてキエフ隊長率いる
「ウラヌス部隊」は地下研究所から脱出しようと
暗い陰気な廊下の先を歩き続けた末に、
研究用の怪獣の飼育室と思われる強化ガラスが張られた部屋のドアの前に辿りついていた。
それからキエフ隊長は後方の美雪と覇王に
「いよいよ!部屋の中に入ります!足元に気を付けて下さい!」
と注意を促した。
覇王と美雪は無言で頷いた。
キエフ隊長は「突入」の合図を送り、強化ガラスのドアをこじ開け、
部屋の中へ突入した途端、酷い刺激臭に襲われたので、
全員、激しく咳込み、皆それぞれ思い思いに黒い布やジャンバーの袖で鼻を覆った。
 それから部屋の隅に懐中電灯の明かりを向けると
そこに鉄クズや鉄の切れ端と何か巨大な生物の内臓を集めて作ったと思わ
れるすり張り状の物体が見えた。
「なんじゃこりゃ?」
プーチン
「多分……何かの巣じゃないかしら?」
分子生物学者の美雪は小さい声で意見を言った。
「一体?どんな怪獣がこの地下でこしらえたんだ?」
キエフ隊長。
「信じられない……」
とキレンコフ。
「芸術的だな?」
と覇王。
「時間が無い!爆弾を設置して早くここを出よう!脱出口はもう目の前だ!」
それからキエフ隊長は隊員にテキパキと爆弾を設置させ、
部屋と巨大なすり鉢状の巣の周りに爆弾を3時間後に爆発するようセットした。
 間もなくキエフ隊長と6人の隊員と覇王と美雪は、天井の排気口へ通じる白い梯子を見つけた。
 しかし美雪は急に自分と娘と友達が途中で行方不明になった事を思い出し、涙ながらに
「彼女達を探さなきゃ!」
と覇王やキエフ隊長と6人のロシア人の隊員達に訴えた。
しかしキエフ隊長は
「しかし!もう時間はない!実際!あなたの娘さんと合流する前に、
既にこの地下研究所一帯に爆弾を仕掛けてあるんです!
全て3時間以内に必ず爆発します!この広い地下研究所を
3時間以内で彼女達を探し出すのは無理です!もう!諦めて下さい!」
と美雪を説得した。
しかし決して美雪はキエフ隊長の言葉に耳を貸さず、隊員達を振り切り、
さっき聞き通って来た強化ガラスのドアの方へ息を切らせ、走り、戻って行った。
その時、キレンコフは腰から拳銃を抜き、銃口を掴むと美雪に近づき、
思いきり、「バキッ!」と拳銃の持ち手で美雪の頭部を殴った。
 彼女はまるで糸が切れた操り人形のように気を失い、その場に倒れた。
それを見ていた覇王は
「何をするんだ!死んだらどうするつもりだっ!」
と凄まじい剣幕で怒鳴り散らした。
キレンコフは悪びれた様子も無く
「とにかく……3時間以内にここから脱出しないと……」
と言うと美雪を抱きかかえ、白い梯子を登り、天井の排気港の中へ入って行った。
 その後にキエフ隊長と5人の隊員と覇王は続いて梯子を登り、天井の排気口へ登って行った。
 ちなみにその脱出口となる天井の排気口は大人2人が通れる位の大きさだった。
 一時間かけてようやく全員は地上に通じるマンホールの蓋を開け、
青空と太陽の光が差し込む地上へ脱出した。

(第87章に続く)

では♪♪