(第46章)戦慄

(第46章)戦慄
 
大戸島の無人島。
大きく吠えた後、旧支配者クトゥルフはドスン!ドスン!
と地響きを立てて、初代ゴジラに接近した。
同時に初代ゴジラのクローンの背びれも真っ白に何度も発光を繰り返した。
僕は旧支配者のクトゥルフ同族を再びオレンジ色の白い眼で見据えた。
同時に僕の背びれも真っ白に何度も発光を繰り返した。
口を大きく開け、そして。
背びれの真っ白な発光がさらに一段と強くなった時、
口から純白の放射熱線が放たれた。
しかし、旧支配者の旧支配者のクトゥルフ同族は
巨大な右腕のぶよぶよとした鉤爪を大きく一閃した。
そして白い放射熱線はぶよぶよとした巨大な5本の鉤爪の先端に直撃した。
だが、大きな爆発音と共に白い放射熱線はいとも
簡単に巨大な5本の鉤爪の先端に弾き返された。
弾き返された白い放射熱線は大きく右にねじ曲がり、右にあった大岩に直撃した。
大岩はそのまま高温で溶け、液体となった。
旧支配者のクトゥルフは容赦しなかった。
旧支配者のクトゥルフは巨大な右腕のぶよぶよ
とした鉤爪で初代ゴジラクローンの右胸を切り裂いた。
僕は切り裂かれた鋭い激痛で悲鳴を上げた。
さらに巨大なドラゴンに似た右足で初代ゴジラの下腹部を蹴り上げた。
僕は下腹部に大型のトラックではねられたような強い衝撃が走り、
意識が遠くなるのを感じた。
やがてどうやら内臓のどこかに痛手を負ったらしく、口の中が血の味で満たされた。
僕は気持ち悪くなり、その場に両膝を付き、口から大量の血を吐いた。
旧支配者クトゥルフはさらに僕の首を掴んだ。
旧支配者のクトゥルフの両手のぶよぶよとした感触を感じ、戦慄を覚えた、
僕は息がつまった。
やがて旧支配者クトゥルフは僕の身体を軽々と持ち上げ、投げ捨てた。
僕の身体は宙を浮き、砂しぶきを上げ、砂浜を1m滑空した。
僕は自分と旧支配者クトゥルフと圧倒的な力の差を感じた。
初代ゴジラのクローンは旧支配者のクトゥルフの容赦ない攻撃により、
完全に意識を失いかけた。
僕はオレンジ色の牙を強く噛みしめ、フラフラと立ち上がった。
僕は生き残って、アドノア島に行って!愛する妻や息子を残して
僕の必ずお前を倒して!目の前で散ったあのゴジラの代わりに残された
妻や息子達に『死んだゴジラは貴方達の事を愛していた』と伝えるんだ
 
大戸島近海・轟天号
スノウの必死の説得でようやく自分の言葉を思い出して正気に戻ったジェレルは
アヤノの頭部に向けていたメ―サ・ハンドガンを腰のホルスターにしまった
直後に轟天号のブリッジ内に警報が流れた。
「なんだ?何が起こったんだ?」
ジェレルは直ぐに椅子に座った。
「マズイ……轟天号のエンジン起動プログラムに謎の電気信号が侵入しました!」
「恐らく旧支配者のクトゥルフの同族が放つテレパシーです!」
スノウが言った直後、轟天号のモニター画面には次々とこう表示され始めた。
轟天号のエンジン起動プログラムの停止』
『第1エンジン停止』
『第2エンジン停止』
『総員退避せよ』
「ふざけんじゃねえっ!ここで墜ちてたまるかよ!」
グレンはそう叫ぶと直ぐに自分席に座り、キーボードを慌ただしく押し始めた。
ガタンガタンと轟天号が大きく上下に振動した。
「マズイ!マズイ!墜ちる!墜ちる!」
「駄目です!エンジンの機能は停止しました!」
「なんだって!畜生!大事な時なのに!復旧できないのか!」
「駄目です。エンジンも!冷凍メ―サ砲の機能と
プロトンミサイルの機能は機能停止状態です。」とジェレル。
「計器も滅茶苦茶だぞ!どうなっているんだ!」とグレン。
しばらくして半ば腫瘍に覆われた人型の両腕がナイフに
変形した異形の怪物の幻覚を見て、
正気に戻らず、とうとう瞼を痙攣させ、
失神していたニックが奇跡的に正気になって目覚めた。
「おい……どうしたんだ……何があったんだ?」
「二ック!良かった正気に戻ったか?」
「早く!墜落しちまうぞ!」
尾崎は目の前の大きなレバーを上に力の限り、上に上げた。
「高度がかなり低い!墜落するぞ!」
「計器がイカレてやがる!二ック頼むぞ!」
二ックはあっちこっちのボタンを押し、
幾つかのつまみをカチッカチッと音を立てて上に上げた。
轟天号の船体は大きく傾き、やがて大戸島の海面に大きく水柱を上げて着水した。
「皆!大丈夫だな!けが人はないな……」
ダグラス・ゴードン上級大佐は全員無事を確認した。
「修理できそうか?ジェレル!」
「かなり時間がかかりそうです。
計器もエンジンも通信機能のあらゆる機能が停止しています。」
「くっそ!轟天号の機能システムが滅茶苦茶だ。」
「そうか……すまないゴジラ……」
ゴードン上級大佐は助けられない悔しさと申し訳ない表情でそうつぶやいた。
 
大戸島近海の無人島。
僕はその場から再び立ち上がり、3列に並んだ背びれを純白色に何度も発光をさせた。
僕は口を大きく開き再び純白の放射熱線を放った。
だが、すぐにあのぶよぶよとした5本の鉤爪に弾き飛ばされた。
僕は諦めずもう一度純白の放射熱線を放ったがほとんど効果はなかった。
更に悪い事に旧支配者クトゥルフの全身の
無数の青い腫瘍は今にも破裂しそうな程、巨大化していた。
旧支配者のクトゥルフは大きくおぞましい
奈落の底から響く様な笑い声にも似た鳴き声を上げ続けた。
まるで私の勝ちだと言っているかのように。
もう時間が無い!早く倒さないと!
僕は旧支配者クトゥルフが倒せない事に徐々に焦りを募らせた。
旧支配者クトゥルフの同族は徐々に
焦りを募らせる初代ゴジラをさらに追い詰めようとした。
旧支配者のクトゥルフは両手のぶよぶよとした
5本の鉤爪を初代ゴジラのクローンの胸部に叩き付けた。
僕は胸部に凄まじい激痛を感じた。
同時に僕は胸部の何本かの肋骨の一部が砕ける音を微かに聞いた。
そのまま初代ゴジラは吹き飛ばされ、近くの岩場に叩きつけられた。
旧支配者クトゥルフはさらに追い詰めようと仰向けに倒れている
初代ゴジラのクローンの身体を何度も蹴り上げ、踏みつけた。
僕は全身の激痛で力が入らずしばらく起き上がれなかった。
だがようやく起き上がった。
僕は負ける訳にはいかない!
初代ゴジラのクローンは再び起き上がった。
 
(第47章)