(第8話)時空

(第8話)時空
 
クエントとパーカーは最初に見つけた時空の歪みがある、
豪華なホールからカジノのドアを開け、中に入って行った。
どうやら電源が落ちているらしく辺りは真っ暗だった。
カジノと書かれた看板も回転せずに停止していた。
パーカーはクリスに無線でこう報告した。
「さっき船内を見て回ったが、どうやら時空の歪みは
船内の至る所で出来ているようだ。
主に船員居住区、上階と下階の客室、ソラリウム、プロムナード、
ホール、展望台にも10個から20個にかけて時空の歪みを確認した。
そうだ、あと食堂も。」
「パ―カーさん、パーカーさん、」
「なんだ?今、通信中だ!」
「なにかいますよ……」
「はあ?」
パーカーはなんだ?とクエントの指を指す、暗闇を見た。
2人が見た先には暗闇に不気味な緑色の光が
何個もまるでライトの様に暗闇を照らしていた。
「なっ?なんだ?あれは?」
「まさか?宇宙人!」
すかさずパーカーのチョップと突っ込みが入った。
「そんな訳あるか!」
パーカーは無線を耳に当てた。
「こちら!カジノ内にて!謎の緑色の光を確認!
繰り返す!こちらカジノ内にて!謎の緑色の光を確認!」
 
牙浪の世界。
「なんだって?緑色の光?」
クリスはそう言うと鋼牙を見た。
「貸してくれ!」
クリスは直ぐに無線を鋼牙に渡した。
「クエント!パーカー!落ち着いてよく聞いてくれ!
恐らくそいつらはカラクリと言う敵だ!早く逃げろ!そいつらは危険だ!」
「うわあああああっ!」
クエントの悲鳴とマシンガンの連射音が聞えた。
そして何故かノイズ音と共に通信が途絶えた。
「クエント!パーカー!おい!聞いているだろ?」
「どうした?」
「通信が途絶した。」
「なんだって!」
その時、鈴が部屋の中に入って来た。
「烈花さんを知りませんか?」
「どうしたんだ?」
「実は2つの時空の歪みを見つけて『調べて来る』
と行ったっきり、帰って来ないんです!」
「なんだって!」
「まさか?彼女はカラクリを追って!」
 
バイオの世界。
クイーン・ゼノビア船内のカジノ。
パーカーとクエントはそれぞれ武器を構えた。
やがて暗闇に浮いていた緑色の光の正体が
謎の生物の両目だと2人は気付いた。
今度は暗闇から10個も白い仮面が何処からともなく現われた。
「なんなんだ……」
「あれが?カラクリ?」
さらに暗闇に浮いていた10個の仮面の周囲の風が
包まれるようにヒュンヒュンと音を立て、蠢いた。
やがて黒い服と赤い装飾品の付いた人型の奇妙な生物が次々と現れた。
「うわああああっ!」
「叫び過ぎだ!クエント!」
暗闇から出現した10体のカラクリ達は徐々に
2人を取り囲むように円形に接近して来た。
さらに1匹が両腕の剣を振り回し、大きくジャンプし、襲い掛かった。
パーカーはうおおおっ!と声を上げ、
ラクリの一匹にマシンガンを連射した。
ラクリはそのまま蜂の巣になり、仰向けにひっくり返った。
そしてポーカーをする台の上に落下した。
暫くしてビョンと全身をバネにして起き上がった。
「くそっ!なんで倒れない!」
「さっき倒れたじゃないですか?」
「こまけぇこた!いいんだよ!」
パーカーは左右にマシンガンの向きを変え、引き金を引き続けた。
ラクリ達は次々とハチの巣になった。
しかし不可思議な挙動を繰り返し、倒れても、倒れても起き上がった。
「ええい!どうなってやがる!」
クエントもマグナムを構え、引き金を引いた。
マグナムの弾はカラクリの頭部を破壊し、スイカの様に弾け飛んだ。
「やった!1匹倒しましたよ!」
クエントが喜んだのも束の間。
頭部を失ったカラクリは闇雲に剣状の両腕をブンブン振り回し、
クエントに接近して来た。
「うわああああああっ!こっち来るなあああっ!」
クエントは頭部を失ったカラクリの胸をドカッと蹴り飛ばした。
ラクリは床の上を転がり、スロットのある台に衝突した。
「ちょっと!EAの最恐のホラーゲームの
エイリアンみたいじゃないですか!」
「畜生!これでも生物か?薄気味の悪い身なりをしやがって!」
パーカーとクエントはカジノに入る前につけた電灯の明かりを頼りに
次々と何度も執拗に襲い掛かるカラクリを撃退しようと躍起になった。
しかし倒れないばかりかさっきクエントがマグナムで吹き飛ばされた個体は
破壊された頭部から黒い塊のような物が吹き出し
元通りに仮面の付いた頭部に再生した。
「ひいいっ!再生した!」
「畜生!なんだって言うんだ!」
そしてとうとうマシンガンやマグナムの弾は切れた。
彼らが幾ら引き金を引いてもカチカチと乾いた音しか鳴らなくなった。
「あああっ!もう無理です!」
パーカーは諦めず太った巨体を生かし、大きく前進した。
同時に彼は両腕で2匹のカラクリに向かってラリアットを炸裂させた。
彼の両腕のラリアットが直撃した2匹のカラクリは吹き飛ばされた。
「畜生!畜生!救援が!救援が!」
そんな中、突如、カジノの反対側にある
VIPルームのドアがバタンと開いた。
現われたのは女性の人影。
「それが電気です!レバーを上げて下さい!」
咄嗟にクエントは声を枯らし、叫んだ。
女性の人影は近くにあった機械のレバーをガチャッ!と上げた。
パッとカジノは明るくなったので2人は眩しさで目をつむりそうになった。さらにカジノと英語で書かれた看板が噴水の柱の上で
グルグルと回転し始めた。
続けて女性の人影もはっきりとした。
黒い服に両脚を露出したセクシーな若い女性。
「烈花さん!」
烈花は魔導筆を取り出していた。
ラクリ達は烈花を見つけると一斉に彼女の方に向かって行った。
 
(第9話に続く)