(第40章)群体

(第40章)群体
 
バイオの世界・クイーン・ゼノビアの大ホール。
クエント、パーカー、烈花は大きな星型の
模様が付いた床の中央に立っていた。
そして彼らは時空の歪みを通り、向こう側(牙浪)の世界から
無数のカラクリがこちら側(バイオ)
の世界に侵入してくるのを今か今かと待っていた。
クエントは烈花に赤いバンダナを見せた。
彼女が見ると赤いバンダナには
『宇宙海兵隊』のロゴマークが書かれていた。
「これは宇宙海兵隊のバンダナです。」
「おい!宇宙に兵隊がいるのか?」
「エイリアン2って映画に登場します。」
そう言いながらクエントは烈花の額に赤いバンダナを巻いた。
「ありがとう!生きて帰れたら……
創聖のアクエリオンって言うアニメを見ような……。
パーカーは羨ましそうな表情をした。
「全く、ジェシカの前では大違いだな。
いつからそんなプレイボーイになったのやら。
だが、確か創聖のアクエリオンは全26話あったな。
あいつまた自分のPCで全話、見せるつもりかやれやれだぜ……」
クエントが烈花の額に赤いバンダナを巻き終えた。
その直後、天井の巨大なシャンデリアの照明が
バチンと大きな音を立てて消えた。
同時にクイーン・ゼノビアの大ホールは真っ暗になった。
「おい!一体どうなってる!」
「また真っ暗ですか?勘弁して下さいよ……」
「おい!天井から客人だ!」
烈花は素早く真っ暗になった天井を鋭い茶色の瞳で睨んだ。
パーカーとクエントは烈花の視線に釣られて天井を見た。
天井には無数の時空の歪みが生じていた。
無数の時空の歪みの奥には緑色に輝く瞳が無数に見えた。
やがて無数のカラクリ達はそれぞれの
無数の時空の歪みの中をきちんと隊列を組み、
こちら側(バイオ)の世界にまるで
ゴキブリの様にガサガサと四つん這いに接近して来た。
「うっ!うわあああああっ!」
クエントはたちまち顔が真っ青になった。
同時に天井に現れた無数の時空の歪みに向かって黄金に光る
矢尻の形をした装飾品『鋼の牙』を張り付けたマシンガンを乱射した。
バババババッ!バババババッ!
そしてそのマシンガンの連射が戦闘開始の合図だったかの様に
無数のカラクリ達が時空の歪みから次々と落下し、地面に着地して行った。
「やっつけろおおおっ!」
烈花はすかさず大きな声を上げ、魔導筆を構えた。
パーカーはグレネードランチャーを両手で構えた。
クエントは連射力が高いマシンガンを両手で構えた。
最初にクエントが素早くマシンガンの引き金を引いた。
バババババババッ!
マシンガンの大きな銃音と共に連続で発射された弾丸は
目の前にいたごく少数のカラクリの身体をハチの巣にした。
ごく少数のカラクリ達は苦しみ出し、爆四散した。
しかしまるで大きな津波の様に無数のカラクリの群れが
烈花、クエント、パーカーに押し寄せて来ていた。
「おいおい!こんなに大量なんて!」
「向こう側(牙狼)の世界で白夜の結界が形成されたんだろう。」
「と言う事は?こいつら白夜の結界が
あればカラクリ群体は無限湧きですか?」
「そう言う事だ…」
烈花は魔導筆を振り、赤い光線を何度も放ちつつもそう言った。
そして赤い光線の直撃を受けたカラクリ達は
次々と爆四散した後、消滅して行った。
「冗談じゃねぇ!これでも食らえ!」
パーカーは両手でグレネードランチャーを構え、引き金を引いた。
無数のカラクリの群体に向かって発射された弾は
地面に落下するや否や凄まじい音を立てて爆発した。
同時に爆発に巻き込まれた多数のカラクリ達は一気に粉砕され、消滅した。
気分が良くなったパーカーはもう一度、
グレネードランチャーの引き金を引いた。
無数のカラクリの群体に向かって再び発射された弾は地面に落下後、
また多数のカラクリを爆発に巻き込んで、粉砕し、消滅させた。
「畜生!駄目だ!数が多すぎる!」
「退避しましょう!」
そしてパーカーとクエントは無数の
ラクリ達に応戦しつつも徐々に後退して行った。
烈花も魔導筆を構え、法術を発動し、
応戦しつつも彼女も徐々に後退して行った。
烈花は魔戒竜の稚魚の法術を使い、
一気に大量のカラクリ共を封印したかった。
しかしホールの床一面は既に足の踏み場も
ない程の無数のカラクリに覆われており、
彼女の法術を発動させるのに必要な運動を
するだけの十分なスペースが確保できなかった。
故に烈花は早くも苛立ちの声を上げた。
「ああ、もう!うっとおしい奴らだ!
いい加減少しは減ったらどうなんだ?」
 
牙浪の世界・奇巌石のある広場。
「レギュレイス!鷹燐の矢は此処だ!」                     
鋼牙は白いコートの赤い内側から
銀色に輝く細長い短い槍を白夜の空に掲げた。
そして鷹燐の矢を見たレギュレイスは歓喜の声を上げた。
レギュレイスは早口で旧魔界語で鋼牙に話しかけた。
何故かジルだけは日本語で
「一族復活の時だ!早くその鷹麟の矢をよこせ!」と聞えていた。
レギュレイスは巨大な斧の形をした湾曲した
長い両足で硬い地面を蹴り、宙へ飛んだ。
同時に背中から生えた無数の棘に覆われた
巨大な三角形の翼を大きく広げた後、
右手の巨大な剣状の5本の鋭利な長い爪は同化し、
両刃の巨大な長剣に変化した。
そして両刃の巨大な長剣の先端を鋼牙の顔面に向けた。
鋼牙は右手で白いコートの赤い内側から
銀色に輝く両刃の長剣の魔戒剣を構えた。
ちなみに鷹燐の矢は左手に持っていた。
レギュレイスは高らかに咆哮を上げ、
両刃の巨大な長剣を振り、鋼牙に切り掛った。
鋼牙は冷静に片手で魔戒剣を振り、その巨大な長剣の刃を受け止めた。
「おおおおおおおっ!」
鋼牙は雄叫びを上げ、そのまま跳躍した後、
躊躇なくレギュレイスに突進した。
レギュレイスはそのまま鋼牙に圧倒され、
背中が大きく反り返り、体勢が崩れた。
鋼牙は僅かに怯んだ隙を逃さず、そのまま右脚を振り上げた。
そして黒い靴の靴底でレギュレイスの顔面を
真正面から勢い良く蹴りつけた。
レギュレイスは激痛の余り悲鳴を上げ、
そのまま一直線に身体を吹き飛ばされた。
レギュレイスの身体は近くの大岩に激しい轟音を立てて、衝突した。
「すげえ……あんなでかいやつを……蹴り飛ばした……」
「ちょっと。強すぎ……」
クリスとジルは驚きの余り、空いた口が塞がらなかった。
しかし唖然としている暇は無かった。
白夜の空に浮かんだ巨大な円形の白夜の結界は青白く不気味に発光した。
さらに白夜の結界から青白い落雷が次々と地面に落下したと
同時に大地が大きく裂けた。
大きく裂けた大地の裂け目から、
無数のカラクリの群体が深い地下から這い出て来た。
クリスは両手で改造ペイルライダーを構えた。
そして次々と襲いかかって来るカラクリの群体に
向かって引き金を引き、発砲した。
ペイルライダーから放たれたホラー封印の法術が込められた銃弾は次々と
ラクリの仮面や黒い服を基調に黒い帯の装飾が付いた胸部を打ち抜いた。
やがてカラクリ達は苦しみ悶えた後に次々と爆四散した。
それでも倒せたのはほんの僅かな個体だけだった。
まだまだカラクリ達は無数の群体となっていた。
鋼牙も右手に魔戒剣を構え、それを左右に振り、
次々とカラクリ達の身体を切り裂いた。
あるカラクリは上半身と下半身を真っ二つにされ。
あるカラクリは両腕を切り裂かれた後、首を撥ねられ。
あるカラクリは真っ二つに身体を切り裂かれた。
だがそれでもカラクリ達は無数の黒い不気味な群体となり、
次々と休む事なく鋼牙に向かって剣状の両腕を振り回し、
襲い掛かり続けた。
それはまるでゾンビの大群の様だった。
「こんなに……地下に眠っていたのか?」
クリスは歯を食いしばり、両手でペイルライダーの引き金を引き続けた。
ジルは肘を曲げて、上腕を顔の横に付けた。
ジルはソウルメタル製の棒を手の甲に乗せ、
サーッと手を後ろ側に引っ張った。
鋼牙に教えられた大河の太刀筋通りに上下左右に振り回した。
そして襲い掛かるカラクリ達を殴り倒し、消滅させた。
しかし幾ら3人が多数のカラクリ達を倒しても無駄だった。
何故なら前方でカラクリが倒された時に出来た穴を埋める様に
後方にいたラクリが入れ換わり立ち替わり、
3人を執拗に襲い続けているからだ。
「完全にキリが無いぞ!」
「数が多すぎるわ!」
翼はレギュレイスに向かって白夜槍を突き付けた。
レギュレイスは再び冷笑した。
「うおおおおおおっ!」
雄叫びを上げ、翼は大きく飛翔した。
そして白夜槍をレギュレイスの銀色に光る頭部に向かって振り降ろした。
すかさずレギュレイスは右手の両刃の巨大な長剣を水平に構えた。
ガキイン!と大きな金属音と共に白夜槍の矢尻の刃は受け止められた。
バチッ!バチッ!とオレンジ色の火花が撥ねた。
続けてレギュレイスは左手の巨大な剣状の
5本の鋭利な長い爪を左右に振り回した。
巨大な剣状の5本の鋭利な長い爪は翼が纏う白夜騎士ダンの
白い分厚い鎧を何度も火花を散らし、切り裂いた。
「ぐっわああ!がはああっ!」
翼は鎧の中で激痛の余り悲鳴を上げ、顔を歪ませた。
レギュレイスは翼の鎧を纏った身体を掴んだ。
追い打ちをかける様に細長い両腕を白夜の空に掲げた後、
地面に向かって振り降ろした。
ドゴオオン!と大きな音と土煙が立ち上った。
白夜騎士ダンの鎧を纏った翼は地面に叩きつけられていた。
 
(第41章に続く)