(第1章)静かなる消失。

注意!!
この短編小説には!!
メタルギアソリッド3スネークイーター
メタルギアソリッドファントムペインのネタバレが多々含まれます!
この短編小説をお読みになる方はゲームのプレイ
もしくはプレイ実況動画等を見てからお読みください!!
 
MGS(メタルギアソリッド)外伝。(第1章)静かなる消失。
 
アウターヘブン最深部の代理AI『GW』の中枢ネットワークの
ライフライン管理機能のみ残し、破壊、この世界から愛国者達を消滅させ、
リキッドオセロットを倒したあの事件から3年後の2016年。
その目的を達成させたビックボスのクローン、ソリッド・スネーク
白い髪と白く口髭をたくわえ、以前よりも更に老いていた。
故に既に腰も曲がり始め、猫背になりかけていた。
それでもまだまだ元気だった。
ソリッド・スネークはまたあのビックボス(イシュメール)、
ザ・ボス、リボルバーオセロットが眠る墓の前に足を運んでいた。
自分は既にこの墓で決着を付けた。
そう、3年前に既に死んだ筈のビックボス
(イシュメール)の口から全ての真実が語られた後、
新型のFOXDIEの発作で死に逝くビックボス
(イシュメール)を看取り、彼の為に葉巻に
ライターで火を付けて最後まで見守った。
だからこそソリッド・スネークはこの墓の前に全く未練などなかった。
ただ時々、ザ・ボスやビックボス(イシュメール)
が愛したオオアマナの花束を置いたりしていた。
今回は別に墓参りの予定は無い。
しかし彼は何と言うか虫の知らせと言うべきか?
ソリッド・スネークはそこに今この時間に行かなくては
いけないと言う奇使命感のようなものを感じていた。
彼はビックボス(イシュメール)、ザ・ボス、
リボルバーオセロットが眠る墓の前に急行したのである。
黒いスーツと黒いネクタイ、白いシャツの紳士服を着た
彼はしばらくビックボス(イシュメール)、ザ・ボス、
リボルバーオセロットが眠る墓の前に黙って立っていた。
だが何事も起こらなかった。
彼はフフフフッと笑った。
なんだ!結局何も起こらないじゃないか?
彼は赤く焼けた右側の頬に左手を付けた。
ふーつと彼は溜息を付いた。
帰ろうかな。サニーの昼飯の目玉焼きを喰わなきゃ!
彼は直ぐに墓石に背を向けた。
ビックボス(イシュメール)、
ザ・ボス、リボルバーオセロットの墓に。
「んっ?」
ソリッド・スネークは目の前に若い両頬まで伸びた茶髪の若い女性と
機械仕掛けの車椅子に乗った中年女性が現われた。
その若い女性と中年女性が誰なのか分からなった。
両頬まで伸びた茶色の若い女性は車椅子を押し、
ソリッド・スネークの前に立った。
「君達は?」
「はじめまして。私の名はホープです。こちらはあたしの母です」
ホープ?希望か?いいセンスだ!」
ソリッド・スネーク機械仕掛けの車椅子に座っている中年女性を見た。
そして記憶を何となく探って見たが誰なのか思い出せなかった。
「いいですか?」とホープが声を掛けた。
つい思い出話で頭がボーとしてしたソリッド・スネークは我に返った。
「おっと!すまない!」
ソリッド・スネークは慌てて彼女達に道を開けた。
ホープ機械仕掛けの車椅子に乗った
中年女性はまずはビックボスの墓の前に立った。
「お母さん!ビックボスよ!さあー」
ホープが母親の耳元でそう囁いた。
次の瞬間、母親の目元に黒い隈取りの模様が浮かんだ。
途端に目にも止まらぬ速さで立ち上がった。
両手に持っていたオオアマナの花束を
ビックボス(イシュメール)の墓の前に置いた。
ザ・ボス(イシュメール)の墓の前にも置いた。
それから母親の目元に浮かんでいた黒い隈取り模様はふっと消えた。
母親は急に全身の力が抜けた様にドサリと機械仕掛けの椅子に座った。
「君の母親は一体?まさか君のお母さんの身体には
メタリックアーキアが?」
ソリッド・スネークの質問にホープは暫く黙っていた。
だが決意した様に口を開いた。
「はい!1984年、ソビエト連合国のアフガン侵攻によって
東西冷戦が最終局面を迎えたあの時代。
あたしの母はXOFのリーダーだったスカルフェイスと言う男が
率いるサイファーの隠密部隊の沈黙の暗殺者だったらしいです。
私の祖母はかつてビックボス(エイハブ)
を暗殺しようとしたのですが失敗したんです。
それで可燃性の液体を浴びせられた後に火を付けられて。
全身や呼吸器や消化器にまで重度の火傷を負いました。
でもスカルフェイスによって母は寄生虫補完(パラサイトセラピー)。
それと声帯虫の第3の英語株を喉に宿されていました。」
「んっ?声帯虫?聞いた事がある。確か特定の言語に反応して
喉内の声帯で交尾、産卵をする事で
大量に幼体が繁殖し、やがて肺機能を破壊し、
特定の言語を話す宿主の人間を大勢殺す究極の生物兵器。」
「そうです。母はビックボス(エイハブ)達の暗殺の為に
運び屋として送り込まれました。でも……。
祖母はビックボス(エイハブ)が好きになり、
暗殺実行に迷いが生じたんです。
そして母はビックボス(エイハブ)の傍に居たいが為に
英語を一切、喋らない様にしていました。でも……」
ホープは大きく深呼吸するとまた話し始めた。
「しかし声帯虫の突然変異種が現われた事で
母は自らの喉に宿した英語株が突然変異し、
ビックボスや仲間達に災いをもたらす事を恐れて、失踪しました。
そして母はソ連に捕まり、ビックボス(エイハブ)に命を助けられました。
母は毒蛇に噛まれたビックボス(エイハブ)の命を助ける為に
自ら禁じていた英語を喋り、彼の命を救った後、英語株が活動する前に
ビックボス(エイハブ)と仲間達の元を去りました。」
そのホープの説明はずっと黙って聞いていた
ソリッド・スネークは白い髭を動かし、口を開いた。
「その後は君の母さんはどうやって生き延びた?」
「それは母が不思議な体験をしたからです。」
ホープは自分の母が遭遇した不思議な体験を語り始めた。
それはまた過去に遡り。
 
1984年の冷戦。まだソ連が国家として存在していた時代。
ホープの祖母だった女性はビックボス(エイハブ)を助ける為に
自ら禁じていた英語を話し、英語株の声帯虫が目覚める前に。
ビックボス(エイハブ)を仲間の元を去った彼女は太陽が照りつける
見渡す限りの荒野のど真ん中に立っていた。しかもたった一人で。
目の前には山岳地帯。
もう自分の居場所はどこにも無い。
既に最後の言葉はカセットテープに残した。
私はクワイエットでいたかったわけではない。
私は復讐の為に彼に近づいた。
私に与えられた言葉は『報復』だった。
だが私は彼らに『感謝』と言う言葉を使い。
また静寂に還る。
クワイエットと言う暗号名だったホープの母は膝を折った。
流れ出る涙が頬から首筋を伝い、胸に落ちた。
私はクワイエット……私は言葉では無い。
彼女は胸に手を当てて「御免ね」と詫びた。
クワイエットは何処からか取り出したポリタンクを取り出した。
そして決意し、頭からポリタンクの液体を掛けようとした。
その時、シャーと何処からか声がした。
次の瞬間、クワイエットは右膝に激痛を感じていた。
全身の神経や筋肉が全身の寄生虫が第三の英語株の
声帯虫が麻痺して一人荒野に倒れ込んだ。
 
(第2章に続く)