(第29章)研究

 (第29章)研究
 
一本の試験管に貼られたラベルには『T-エリクサー』と書かれていた。
「これが?あの賢者の石とT-ウィルスを組み合わせたって言う。」
「ここにもT-エリクサーに関する研究資料が……」
クエントは近くに銀の机に置いてあった研究資料を手に取った。
「T-エリクサーについて。
御月製薬はアフリカのキジュジュ自治区でン・バヤ族の許可を得て
太陽の階段の伝説の花『始祖花』が植えられている土壌
(しかもスペンサー、ウェスカー、アンブレラ社、エクセラ、
そしてトライセル社ですら気付かなかった土壌の奥深く)
に真っ赤に輝く未知の細菌を発見した。
そして真っ赤に輝くあの細菌からかつてアンブレラ社が
悪用していた始祖ウィルスが含まれていた。
そして未知の細菌から抽出した始祖ウィルスと
新しく手に入れたTウィルスを遺伝子交配させ、
製造した新型のTウィルス。
『T-エリクサー』を生み出した。
しかしまだこの新型のT-エリクサーは
未知の部分が多く更なる研究が必要である。
更に未知の最近の内部にある始祖ウィルスの遺伝子をT-ウィルスの欠陥
(具体的にはゾンビ化であると推測)が修復されたらしい。
御月カオリ社長によれば
『あのT-エリクサーは不老不死の夢を叶える唯一のものである』
今後も取り扱いに注意し、研究を続ける事にする。」
「もう一枚あるな。こっちはあのM―BOW(魔獣生物兵器)のものだな」
鋼牙の周りにジル、烈花、クエントが集まった。
「M-BOW(魔獣生物兵器)リスト。
(1)魔獣ホラー・パズズ
(2)魔獣ホラー・メリー。
(3)魔獣ホラー・シェイズ。
(4)魔獣ホラー・姑獲鳥。
(5)軟体ホラー・クラーケン。
(6)死肉ホラー・ゾルバリオス
(7)魔獣ホラー・メルギス。
(8)プラントE44
(9)ハンターEY。
(10)究極の破壊の神。(外神ホラー)
研究開発は御月製薬北米支部
地下極秘研究所ハイブの科学者や研究員が行う。
安値な生物兵器では無く独立した殲滅兵器としての開発研究の為、
8体の生きた魔獣ホラーとハンターY(ガンマ)
とプラント42を使用する。
しかしジョンとアナンタにより、真魔界から魔獣ホラーが
現世に出現しなくなった為、
全10体の試作を持って研究開発は中止された。」
「成程!全部で10体か?」
「それなら後は楽だぜ!」
「そうね!」
「じゃ!ハンターEYと究極の破壊の神を倒せば!」
「全滅よ!これで少なくともM-BOW(魔獣生物兵器
を利用したバイオテロはこれで防げる筈よ!」
「では!さっさと封印してしまおう!」
「ああ、そうだな!早いところ生物兵器保管庫に行こう!」
烈花に促され、鋼牙、ジル、クエントは最高機密物保管庫を出た。
ジル、烈花、鋼牙、クエントは
最高機密物保管庫前の分厚い扉の前に立った。
「扉の先にホラーの気配だ!」とザルバ。
「この扉の先にホラーの気配よ!」とジル。
「やはりここにハンターEYがいるんだな!」と鋼牙。
「クエント!頼んだわよ!」とジル。
「了解!」
クエントはすぐさま生物兵器保管庫の分厚い扉の正四角形の
マークがついた差し込み口にまた端末から伸びたコードを入れた。
クエントはめまぐるしくキーボードを叩き、
厳重なセキュリティの解除を試みた。
しかしセキュリティは予想以上に厳重でなかなか扉が開かなかった。
「まだか?」と鋼牙。
「はい!まだです!ううっ!厳重すぎる!」とクエント。
「これじゃ!地下の究極の破壊の神のいる所も!
セキュリティを解除するだけで一日が終わるかも?」
ジルが思わず小さくぼやいた。
それから生物兵器保管庫の厳重なセキュリティの
解除作業を始めてから一時間後。
ようやくクエントが持っていた端末画面にようやく
『ロック解除』の表示が出た。
「開きます!」
クエントが言うと生物兵器保管庫の分厚い扉は音も無く開いた。
分厚い扉が音も無く開いた後にすぐさま
鋼牙、ジル、クエント、烈花は生物兵器保管庫へ侵入した。
クエントが見ると確かにそこは円形のコロシアムの形をしていた。
更に中央には大きな分厚いコンテナが一つ置かれていた。
その時、突如、生物兵器保管庫の天井に備え付けられていた
スピーカーから御月カオリ社長のキンキン声が聞えた。
「ハロー愚かな裸の猿共!あたしが御月カオリよ!
この地球に優秀な遺伝子が暮らす千年王国の女王になる者よ!」
「裸の猿?俺様は猿じゃないぞ!」
ザルバはカチカチと歯を鳴らし、不満を露わにした。
「ダーヴィンの進化論の事か?」
「多分そうじゃないか?確か人間は元々……」
「御月カオリ社長!貴方の企みはもう終わりです!」
「M-BOW(魔獣生物兵器)は全て破壊します!」
「さあー観念するんだ!」
するとカオリ社長はクスクスと笑い声を上げた。
「そう!じゃ!全部!殺してみなさいよ!今頃は!
アナンタって奴も究極の破壊の神に殺されているだろうから!」
「やはり?アナンタもここにいるのね……」とジルはそう呟いた。

御月製薬北米支部地下の極秘研究所ハイブの迷路のような廊下。
その迷路のような廊下のど真ん中で一人の男が困った表情を浮かべていた。
先程、御月製薬北米支部強制捜査が始まった時に地下の駐車場の
ダクト(通気口)から侵入したジョン・C・シモンズである。
「困ったな……最初に侵入した普段の生活区域は分りやすいが。
問題はその生活区域を離れた時!つまり!外へ出た瞬間!
僕は迷子だ!畜生!僕は魔王だぞ!権力者だ!」
ジョンはポリポリと茶髪の頭をかいた。
クソっ!御月カオリめ!大金を懸けて
こんな複雑なアシナガバチの巣を作りやがって!
まるで僕やここで働いている人間達は虜因じゃないか!
ああ、このままじゃ!あの女の逮捕の瞬間と悔し涙を浮かべた
顔を拝めないじゃないか!このまま抜けてやる!
しかしどこでどう間違ったのか?
ジョンは一度も通った事もない通路に
出て同じ通路をグルグルと歩き続けた。
どうやらこの極秘研究所ハイブは各部署がそれぞれ
小さな多角形の区域に分断されており、
相互の連絡が複雑で迷路状の構造になっている。
こうなった理由は働いている職員達がそれぞれの生活区域を
勝手に離れないようにする為である。
ジョンも見事にその策に嵌り、普段の生活区域
(つまり簡単だった部屋の構造)を出た瞬間、
たちまち迷ってしまったのである。
そして通路の右から右、左から左、左、左からの
右、右から左、左から右、端から端へグルグルクネクネ
と迷路のような通路を歩き続けた。
しかし一向に迷路から抜け出せないでいた。
仕方無く、ジョンは無線で自分の屋敷にいる芳賀真理に連絡を入れた。
すると真理はクスクスと笑いを堪えつつも
ジョンの端末に極秘研究所ハイブの見取り図を送信した。
それからジョンは真理が送信した極秘研究所ハイブの見取り図を確認した。
「成程!分った!ありがとう真理!」と答えた。
「じゃ!また!帰ったら!たっぷり!セックスをしましょう!」
真理は「うふふふふっ!」と笑った後に無線を切った。
ジョンはやれやれと首を左右に振った後、こう呟いた。
「確かにフランシスの言う通り、
金よりも権力が尊いと言うのまま違いないな。」と。
ジョンは真理から送信して貰った
ハイブの見取り図を頼りに一時間余り迷路を歩き続けた。
しかし幾ら歩けども歩けども道に迷っているのは変わらず。
通路の右から右、左から左、左、左からの右、右から左、左から右、
端から端へグルグルクネクネと迷路のような通路を歩き続けた。
「ぬおおおおおおおおっ!出口は何処だあああああっ!」
ジョンの大声は迷路のような通路の銀色に輝く冷たい壁に虚しく反響した。
 
(第30章に続く)