(第38章)宇宙

(第38章)宇宙
 
御月製薬北米支部地下極秘研究所ハイブの最下層の巨大コロシアム。
鋼牙とジルはアナンタの千の咆哮を聞いても一切動じず、
巨大な花弁に似た形の頚部を広げたコブラの頭部の周囲に
花弁の様に千の頭部を持つコブラ状の頭部を持つアナンタの
千のオレンジ色の輝く眼を鋭い視線を向け、睨みつけた。
鋼牙は片手で持っていた赤い鞘を改めて両手で構え直し、
素早く赤い鞘から銀色に輝く魔戒剣を引き抜いた。
赤い鞘を白いコートの赤い内側にしまうと魔戒剣を両手に構えた。
アナンタ再び大きく咆哮した。
「キイシャアアアアアアアアアアアアアアッ!」
アナンタはオレンジ色に輝く細長い尻尾を真上に振り上げた。
同時にオレンジ色に輝く細長い尻尾を真上に振り降ろした。
ズドオオオオオオオオオオオオン!
大きく巨大なコロシアムの床が上下に大きく激しく揺れた。
鋼牙はつい、体勢を崩しかけた。
そして鋼牙が左右によろめいた一瞬の隙を付き、
アナンタは一斉に千の口をガバッと開いた。
再びアナンタは巨大な花の形をした頚部を広げた
コブラの頭部の首の部分を伸ばした。
しかし鋼牙は咄嗟にコロシアムの床を
蹴って大きく真上にジャンプして回避した。
ドゴオオオオオオオオオオオオオン!
また巨大なコロシアムは地震の様に上下に大きく揺れた。
そして空高く飛び上がった鋼牙は再び両手で魔戒剣を構え、
アナンタのオレンジ色の頭部目掛けて振り降ろした。
ガキイイイン!と大きな金属音がした。
銀色に輝く両刃の魔戒剣からオレンジ色に輝く無数の火花が散った。
しかしアナンタのオレンジ色の分厚い鱗に覆われた頭部により、
銀色に輝く両刃の魔戒剣では一切傷つけられなかった。
それどころか逆にアナンタはブンと空を切り、首を真上に持ち上げ、
頭部を振り上げるだけで魔戒剣は軽々と弾き返され、
鋼牙は真上に吹き飛ばされ、コロシアムの
分厚い天井に身体を叩き付けられた。
その後、鋼牙は高所からコロシアムの分厚い床に身体を叩き付けられた。
そこにジルが駆け寄った。
「鋼牙!しっかり!」
鋼牙は歯を食いしばって両膝を床に付いて
どうにか身体を支え、立ち上がった。
隣でジルは心配そうに見ていた。
すると鋼牙はジルを安心させる為にこう言った。
「心配するな!こんな事は俺達の仕事じゃ日常茶飯事だ!」
「あたしも闘うわ!」
「だが、あんたにはお腹に子供がいる!ここは俺一人で!」
「でも……貴方一人じゃ……」
「心配するな!俺は一人で平気だ!」
鋼牙は穏やかに微笑んだ。
するとジルと鋼牙と対峙していたアナンタがこう口を挟んだ。
「そうだね!僕も妊娠した女性をいたぶるのは趣味じゃないし!
父が子を殺すのもナンセンスだね!」
アナンタは再びオレンジ色に輝く
細長い尾の先端をとある分厚い壁に向けた。
「あそこに緊急用の脱出エレベーターがあるよ!」
鋼牙とジルは分厚い壁の方を見た。
「パスワードは1781さ!」
「本当か?」
「押して見ましょう!」
ジルは分厚い壁に設置されている
小さなパスコードを入れる機械にパスワードを入力した。
カチャッと音を立ててロックが外れた。
エレベーターは上のみであり、下はもちろんなかった。
「いいのかしら?」
「安心しろ!必ず地上に戻る!」
自分だけエレベーターに乗るのを
迷い続けるジルに対し、鋼牙はそう答えた。
続けて彼は地上へ続く上のボタンを押した。
エレベーターのドアが左右に開いた。
勿論ドアは分厚い壁に偽装されていた。
ジルはエレベーターに乗り込もうとした時、
アナンタは最後にジルにこう語り出した。
「君は既に外神ホラーにして這い寄る混沌
ニャルラトホテプの化身・魔女王ルシファー
の神殺しであり、操り人形!つまり君の肉体と精神は彼女の所有物。
恐らく僕やベルゼビュート様が
君の肉体を操ったりする事は不可能だけど!」
「ちょっと!何が言いたいのよ!」
「言いたい事があるならはっきりと言ったらどうだ!」
「今回、僕が復活したのは君達の知っての通り、
T-エリクサーの脅威に晒された
真魔界のメシア一族のホラー達を救済する為だった。
でも次にベルゼビュート様が復活させて下さった時はね。
今度は真魔界から天界(真女神転生ⅣFINAL・ロウルート)
に現れ、天界に住まう人々の魂を大量に集めた後、
再び本来の姿『宇宙の卵』となり、
『宇宙の卵』が孵化すれば新宇宙が生まれるのさ!
その為にきっとベルゼビュート様は
君の心の中の魔女王ルシファーと交渉し!
自らの復讐の為に唯一絶対神YHVAを
討つのに協力して貰う事になるだろうね!
「では?自分はどうなるんだ?」
「僕は新宇宙の姿をした魔獣ホラーになるのさ!」
アナンタは得意満面な表情を浮かべ、そう言った。
するとジルの脳裏で脳裏で嬉しそうに喋る、
魔女王ルシファーの声が聞えて来た。
「成程!唯一絶対神YHVAを討ち、『宇宙の卵』を孵化させて!
新宇宙を創造出来れば!唯一絶対神YHVAが支配する天界
(真女神転生ⅣFINAL・ロウルート)
の人々の魂も!宇宙も!我々メシア一族!
もとい白痴の魔王ホラー・アザトースと
ホラーの始祖メシアのものになるのじゃな!
それも時が巡るまで考えて置こうぞ!フフフフフッ!ククククッ!」
ちょっと!勝手にそんな事を考えないで!
第一あたしは純粋な人間なのよ!」
その時、ジルの耳に機械的な女性のアナウンスが聞えた。
「緊急脱出エレベーターは間も無く作動します!」
ジルは慌ててエレベーターに乗り込んだ。
直後、エレベーターの分厚い扉はあっという間に閉じた。
その後、ジルを乗せたエレベーターは地上へ向かって高速で昇って行った。
鋼牙とアナンタはお互い向き合った。
「これで!君と僕の1対1の闘いが出来るね!」
「ああ、これで!あんたと俺の1対1だ!」
アナンタの言葉に鋼牙はいつもと変わらずぶっきらぼうに答えた。
続けて鋼牙は再び銀色に輝く魔戒剣を両手で構え直した。
すると魔導輪ザルバは鋼牙にこう言った。
「鋼牙!流石に生身で奴と闘うのはきついぞ!」
「ああ、そうだな!」
鋼牙はフッと空を切り、天空へ構えた。
続けて頭上でひと振りした。
彼の頭上に円形の裂け目が現われた。
やがて円形の裂け目から黄金の光が射した。
続けて狼を象った黄金騎士ガロの鎧が落下した。
ゴオルルッ!と獣の唸り声が巨大な
コロシアムの周囲の分厚い壁に反響した。
銀色に輝く両刃の長剣は黄金に輝く牙浪剣に変化した。
アナンタは千のオレンジ色の眼を一斉に
黄金騎士ガロの鎧を纏った鋼牙を威圧した。
しかし鋼牙は一切動じず、ガロの緑色の輝く瞳でアナンタの
オレンジ色の千の眼を黙って見据えた。
「さあー本気で戦おうじゃないか!君と僕!どっちが強いか?
今!ここで!共に競い合おうではないかあああっ!」
アナンタは千の口を一斉にガバッと開いた。
そして再び凄まじい声で咆哮した。
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
再び鋼牙の内臓が酷く撹拌される
不快感に襲われたが勿論、気にも留めなかった。
こうしてアナンタと鋼牙の1対1の闘いが始まった。
 
(第39章に続く)