(第45章)原子(アトム)

(第45章)原子(アトム)
 
実はトリニティもアリスもさっき本物の心霊番組を見た影響により
一人で眠るのが怖くて堪らない為、今日は母親のジルと一緒に寝た。
「おやすみ」とお互い挨拶を交わし、電気を消し、ベッドの上で眠った。
翌朝、ジルはいつも通り、アリスを幼稚園に送った後、
BSAA北米支部に向かった。
ジルは欠伸を噛み殺しながらBSAA北米支部
中央エントランスに入った。
そして中央エントランスの大きな噴水の近くに
どこかで見覚えのある女性が見えた。
「あれ?」とジルは寝ぼけ眼で目を凝らして見た。
するとツインテールのピンク色の髪にマイク付きの
銀色のヘルメットをかぶっていて、5の青い文字の付いた
銀色の服を着た奇妙な格好をした女性だった。
「あーっ!!貴方!宇宙放送局の!」
その奇妙な格好をした女性はジルを見つけると
マイクを持って慌てて、ジルの元に駆け寄った。
「はい!お久しぶりです!ジルさん!」
「あら!久しぶりね!春野うららさん!何故?ここに?」
すると春野うららはえへへと笑った。
「実はステルス機能を付いた宇宙船で来ました!!」
「今日は何の取材?あたしに何か用なの?」
「はい!実は……」
春野はそう言うと懐から未来のスマートフォンを取り出した。
「実は宇宙移民局の宇宙船から送られた映像ですが……。
この映像にあの……信じられないんですが……」
春野は急に明るい表情から信じられない表情に一変させた。
そして未来のスマートフォンの映像を再生させた。
スマートフォンの画面には。
広大な星達の輝く宇宙空間が映し出された。
更に目の前には地球の環境に良く似た惑星が見えた。
それから場面が変わり、その地球の自然に良く似た
美しい木々や川や石のある風景が見えた。
やがて木々の間から謎の建造物が発見された。
調査隊は謎の建造物に潜入した。
間も無くして目の前に巨大な女神像が見えた。
またスマートフォンの調査隊の隊員のやり取りによると。
「この女神像の人物が創造主ではないか?」と推測した。
ジルはその巨大な女神像を見て気付いた。
そう、20代のこの巨大な女神像の人物はかつてラクーンシティ
の脱出に奔走していた23歳の若い頃の自分自身だった。
更に壁画には彼女が巨大な椅子に座り、大きな球体を破壊する姿。
大きな卵が孵化する様子や大きな種の絵が幾つもあった。
しかもその自分自身そっくりの女性像の姿は両頬まで伸びた短髪に
バイオ3でお馴染みのカジュアルコスチュームに身を包んでいた。
それから春野うららは説明を続けた。
「それでこの謎の建造物を捜索していた調査隊が……
恐らくこの惑星に生息する宇宙怪獣に襲われて通信が途絶したんです!」
「何故?宇宙怪獣がその惑星に?」
「分りません!現在!救助隊の宇宙船が向かっているとの事で……。
既に多くの乗組員が犠牲になっているらしく。
果たして救助隊の宇宙船が間に合うかどうか……。
それでジルさん!もしかしたらこの宇宙怪獣について
何か知っているんじゃないかと思って……。」
春野うららは心配の余り、茶色の瞳を震わせた。
「残念だけどあたしには分らないわ……。
何故?その惑星に自分そっくりの女神像があるのかも。
全く分らないわ!ただの偶然かも知れないし!私は何も関係ないわ!」と。
そこに白い眼鏡と赤いスーツを着た男がいきなり現れた。
「やあーおはようございます!初めての子もいるようだね!」
マツダ・ホーキンスBSAA代表!」
「あのー貴方がBSAA代表?」
春野はマイクをマツダ代表に向けた。
「はい!BSAAの代表を務めています!
ところでスペースチャンネル5のレポーターさんの春野うららさんですね!
どうやら生命に起源を探る宇宙船と乗組員の人間達のアトム(原子)
が可能性の世界に触れてしまった様だね。」
「可能性の世界とは何でしょう?」
「その言葉通りだよ春野うららさん!
この世界には無限の可能性を持つ世界で溢れている。
そして彼らが触れた可能性の世界もほんの氷山の一角でしかないのさ!」
春野うららはポカンとした表情を浮かべた。
「可能性の世界とは具体的にどのようなものでしょう?」
マツダ・ホーキンス代表はふっと穏やかに笑った。
「残念ですが、ここで少なくとも公表は出来ませんし
BSAAの公用の場では語れません!
個人のプライパシーにも関わる事かも知れませんからね!」
マツダ代表はチラリとジルの方を見た。
ジルはフッと何故かチラリと笑った。
「そうですか……分りました……」
春野うららはがっかりした様子で肩を落とした。
「ですが!ここ以外の場所で公表しない事を約束
してくれるならば話しても構いませんが……」
春野うららの表情は少し明るくなったがうーんと大きく唸った。
「公表出来ないか……でも……個人的には……」
春野うららはしばらく考え込んだ。
間もなくして決意した。
「分りました!オフレコと言う事で!公表しません!」
「そうですか?じゃ!別室へ!」
マツダ代表は春野うららを別室に案内した。
その様子をジルは微かに笑みを浮かべ、見送った。
 
BSAA北米支部の人通りの無い別室。
「さて!聞きたい事に答えましょう!」
マツダ代表は別室の椅子に腰をおろした。
春野うららもマツダ代表と向かい合う様に椅子に腰をおろした。
「可能性の世界とは具体的にどのようなもので?」
「つまり彼らが偶然、踏み込んだ可能性の世界。
それはかつて宇宙と人間達を支配していた大天使、
天使、唯一絶対神YHVAが全て討ち滅ぼされ!
そして!宇宙の卵が孵化し、旧宇宙は破壊され、
新宇宙が創世された可能性の世界です!」
マツダ代表の衝撃的な言葉に春野うららは驚きの度が過ぎ、
何も反応出来なかった。
「えーと、それで新宇宙を創世したのは?まさか?」
ジル・バレンタインの可能性があります!」
「ジルが人間を超えて神になるって!
まさか?あの宇宙怪獣も木々も川も岩とかの自然も?彼女が?」
「宇宙怪獣も木々も川も岩とかの自然も彼女が創造し、
地球に似た惑星を創造した可能性がありますね。」
春野うららは意味を理解するのにしばらく時間がかかった。
「どうして?ジルが?一体?ジルが?どうして?」
マツダ代表に聞く度に謎が頭の中で増え続け、
どう答え、質問していいのか分からなくなり、口を閉じた。
「君の今まで見て来た筈だよ!
あらゆる世界の可能性をね!君は過去にジルやクリス、
その他、大勢の別の可能性の世界の人々と交流している。そうだね?」
「はい、確かにそうですが……」
春野うららは己が身に余る衝撃の言葉にただただ何も言えず黙りこんだ。
それから帰りにBSAAのエントランスの
中央の噴水の前でまたジルと再会した。
「ねえ!また!ナナさん!イングリッドさん!シャオユウさん!
フェリシアさん!緋花さん!アリサさん!モリガンさん!チュンリーさん!
ワルキューレさん!さくらさん!ジェイミーさん!エリカさん!
シャオユウさん!千鶴博士に!エステルさんとか誘って
あのチキさんの温泉にまた行きましょうよ!楽しかったでしょ?ねえ?」
「そうね……でも今度は男性陣を抜きに……」
「ええっ!ヴァシュロンさんや大神一郎さんと……。
あとその他のスケベ男性陣を叩き出す
イベントとか楽しかったじゃないですか?
それに大神一郎さんは皆の裸を褒めてくれますし!」
ジルは春野うららの言葉に呆れかえった表情で「やれやれ」と呟いた。
 
(第46章に続く)