(第19章)殺人鬼クレーマータック

(第19章)殺人鬼クレーマータック
 
アークレイの森の呪われた洋館で『R型暴走事件』が発生する9カ月前。
ニューヨーク市内の秘密組織ファミリーの
本部に当たる大きな屋敷の地下室。
この屋敷の主にして秘密組織ファミリーの長である
ジョン・C・シモンズと一人の女性がいた。
その女性は黒味を帯びた茶色のポニーテール。
青い瞳にスレンダーな美しい身体をしていた。
その女性は地下室の一角の更衣室で着替えをしていた。
女性はジョンにプレゼントされたあの黒い革のレザースーツを着ていた。
女性は白い肌に覆われ、すらりとした長い両脚に
黒い革のレザースーツの脚を交互に通した。
女性は立ち上がり、金属のチャックをゆっくりと上へ上げた。
一瞬だけ紅潮した深い胸の谷間が見えた。
しかし直ぐに黒い革のレザースーツに覆われた。
女性は自分の大きな両乳房と大きなお尻が強く締り、圧迫するのを感じた。
女性は目をつぶり、深く息を吐いた。
女性は気分が高揚するのを感じた。
それから着替えを終え、女性は更衣室から出た。
ジョンは茶色の瞳でその女性を見た。
「良く似合うよ!ジル・バレンタイン!」
「そう?でも胸とお尻が少し、きついわ。」
ジルと呼ばれた女性は少し恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「理由は単純さ!君の女性としてのおしりやおっぱいが強く圧迫される事で
気分が高揚し!君の体内にある賢者の石の力がより活性化し!
外神殺しとしての君の力が増幅される。
そしてより神を殺す力が高まるからね!」
「ふーん、貴方の趣味じゃないんだ?」
「ハハハハッ!まさか……」
ジョンはニヤニヤ笑いつつもやや困った表情をした。
「ところで!時が来たら持ち上げさせてくれる約束でしょ?」
「おっと!そうだね!それじゃ!早速!」
ジョンはフフフッと笑い、そう言った。
「あの剣を初めて見てもう10年ね!」
「そうだね!でも持ち上げるのは今日が初めてだね!」
ジョンは更衣室から出た後、ジルを武器庫に案内した。
武器庫に入ると既にガラスケースは予め開けられていた。
そして黄金に縁取りされた台の上に漆黒に輝く両刃の長剣が置いてあった。
「黒炎剣」
そう呟くとジルは静かに手を伸ばし、黒炎剣の持ち手の柄を握った。
ジルは黒炎剣を静かに持ち上げた。
ジルは一瞬、だけグイッと重みを感じた。
だがそのグイッと言う重みは直ぐに消えた。
間も無くしてジルはあっと言う間に黒炎剣を持ち上げた。
ジョンは黒炎剣を納める黒い鞘を渡した。
ジルは黒炎剣を黒い鞘に収めた。
カチャッと言う金属音が武器庫に響いた。
更にジルは武器庫の奥の扉を見た。
武器庫の奥の扉は分厚い六角形をしていた。
「フフフッ!あそこの奥の扉の先の部屋!良かったわよ!」
「その先の部屋を気に入って貰って何よりだ!」
ジョンはフフフッと笑い、ジルの紅潮した右頬に優しくキスをした。
「あの六角形の扉!ガラスケースの中の黒炎剣の方が
気になって10年前は存在に全然気がつかなかったわ!
さっき!貴方に開け方を教えて貰って入ったけど
あの先は凄く面白いわね!」
ジルもお返しにジョンの白い肌をした左頬に優しくキスをした。
 
アークレイの森の呪われた洋館で『R型暴走事件』が発生した9カ月後。
『R型暴走事件』が発生したアークレイの森の呪われた洋館。
クエント、烈花、ゾイは『R型』によって気絶している間に
何者かに入れられたテープレコーダーを再生し、
お互い顔を見合わせ茫然としていた。
「これは?一体?なんなんだ?」
「私に聞かないで下さい!」
烈花とクエントは予想外の展開にかなり、戸惑っていた。
一方、ゾイは冷静に両腕を組み、何か考えていた。
間もなくしてゾイは静かに口を開いた。
「成程!この手口を私は知っている!」
「どうやら何か思い当たる節がある様だな!」
烈花がゾイの意見を聞こうと耳を傾けた。
その瞬間、クエントが何か思い当たったのか?
「あああああああっ!」と声を上げた。
同時に烈花とゾイはビクンと全身を震わせ、驚いた。
「おい、いきなり大声で叫ぶな!」
烈花は片手で耳を押さえ、大きく呻いた。
しかしクエントは幾分興奮した口調で話し始めた。
「思い出しました!11年前から被害が確認されている!あのーえーと?」
「落ち着け!確かえーと?」
何故か烈花も思い出せず考えていた。
「全くあんた達は……」
ゾイはやや呆れ顔で思い出した事を話し始めた。
「殺人鬼の名前はクレーマータック。
この殺人鬼は最初の事件から現在に至るまで
生存者13名。死者300名と出ている。」
「最初は確か『R型』暴走事件の9ヶ月前からですね。」
「そう、最初はキリスト系の福音派の男とその妻子が誘拐された。
キリスト系の福音派の男は妻子と
マイホームを手に入れて幸せに暮らしていたらしい。
でもある日突然、キリストが現われて神の王国へ行く為に妻と離婚し、
マイホームを捨ててキリストの弟子とやらになったらしい。
それでキリスト系福音派の男とその妻子は何者かによって
廃工場に監禁されていたようだ。
犯人のクレーマータックはキリスト系福音派の自称キリストの
弟子の男の頭部にトラバサミの逆の原理を応用した
ヘッドギアーを付けられ、それで床にはイエスキリストの
姿をした別の黒髭の男が仰向けに眠っていた。
テープレコーダーによれば。
「自分自身と妻子を助けたくば!目の前のイエス・キリストを殺せ」
と言う内容のメッセージが流れたらしい。
それからそのヘッドギアーを付けられたキリスト系福音派の男は
自分のヘッドギアーと連動している自爆装置から別の部屋に監禁された
離婚した妻子と自分自身を守る為、
イエス・キリストをサバイバルナイフで刺殺し、
鍵を取り出してヘッドギアーを外し、時限爆弾を止め、
自分自身と妻子を助けたそうだ」
「刺殺って?イエス・キリストの男は?」
「大量出血と激しい内臓の損傷によって死んだ。
しかも彼もキリスト系福音派で刺殺した男とは親友だったそうだ。」
「痛く無かったのか?苦しくは無かったのか?」
烈花は悲痛な表情でゾイに尋ねた。
「彼は過度の麻酔によって意識はあったが
痛みも無く、しかも動けなかったそうだ!」
「彼はイエスなのか?」
「まさか!でっち上げさ!イエスなんて最初から復活なんぞしていないさ!
彼が演じていただけ!信者を増やす為に!やらせの部類さ!」
「一般人、俺達と変わらないただの人間」
烈花は心の奥底から怒りが湧き上がって来た。
「だが犯人の言う事は一理ある。
しかし……私がその立場だったら……」
ゾイは不意に洋館の天井を仰いだ。
「私も想像したくありません!」
クエントもはっきりとそう否定した。
「とにかく犯人はまだ逮捕されていない!
あんた達も十分注意した方がいい!」
「ああ、分った!」
「気お付けます!」
烈花とクエントの返事を聞いたゾイはカペラ救出の為、
2人とは別行動を取った。
 
(第20章に続く)