(第62楽章)神と悪魔と人間と

(第62楽章)神と悪魔と人間と

 

再び秘密組織ファミリーの本部に当たる大きな屋敷。

ファミリー構成員専用の喫煙室でテレビを見ていたジョンは

「コンコン」と言うノック音と「失礼します」と言う声を聞いた。

「やはり君か?魔人フランドール君!気になるのだろう?

魔導ホラーの肉体から解放された大量の魂と尊師の魂がどうなったか?

安心したまえ!僕は唯一絶対神YHVAや大天使や天使とは違って

邪魔な敵を完全に排除してすっきりと言う感覚は君と同じで好きでは無い。

だから全てこちら側(バイオ)の世界のニューヨーク市内の純粋な人間のお腹に宿った

赤子に全て送り、転生させたよ。彼らはまた純粋な人間として人生をやり直せる。

僕達、魔獣新生多神連合や僕はどんな理由があろうと唯一絶対神YHVAと同じ

思考レベルではいけない。でなければ僕の理念や信念が全て嘘になる。」

「ありがとうございます!さすが!大君主様!」

「フッ!僕は神に近づく男さ!万能の力を持つ僕にはたやすい!」

大喜びしていた魔人フランドールは思い出したようにジョンにこう言った。

「あっ!そう言えば!大分前からあの神殺しのアイドルの

山田真帆を利用する為に色々調べていましたね」

「ああ、昔からファンだったからね。大体の近況は知っていた。

相変わらず運営の対応は酷いままだ!」

「そう、どうしてなの?実際に被害があったんでしょ?」

「そうだね。しかもネットではほかのファンや暇潰しに考察している

良からぬ憶測や推測。更に彼女の訴えによって他のメンバーが自宅情報を

漏らした事実が不特定多数の人々がネットで嘘か本当か全く分らない情報や

ゴシップニュースの動画が連日、動画サイトでアップされて、

他のメンバーも辛い目に遭っているんだ。

しかも運営もちゃんとした事実を公表せずメンバーとファンの間で

不適切な関係があったのかどうか分からない。

最近では彼女のツイッターアカウントのプロフィールから

『NYK48』の表記が消えていてな。

しかも幾つかのCMもメンバーの起用を見合わせている。

広告業界もかなり影響が広がっている。

挙句には中傷コメントをネット上に乗せる人間達が現れる始末だ。

そして極めつけは肝心の『第3者委員会』が全く機能せず

今でもこの問題の原因は何なのか?対策すべきなのに何もしない。

あの『showroom』と言うアーティストやアイドル、

タレントの配信が無料で視聴できる

サイトで山田真帆本人が配信したあの映像がネット上で

公開されて以降、何の進展もないこの映像を見てくれ!」

ジョンは自分が持っているスマートフォンで映像を見せた。

それはあの山田真帆本人自身が暴行にあった事実と暴行をした犯人のメンバー

や他のメンバーが住所を漏らした事、更に一か月待った事。

運営が一か月待っても何も対処しなかった事を涙を浮かべて必死にしかも

『自分が殺されていたら?』『生きた心地がしなかった』

とも告発していた。さらに『でももう……私以外にも……』

と言うところでいきなり画面が真っ暗になり放送が切れた。

「噂だと運営が止めたのではと言う話もあるが真相は不明さ!

また前支配人が辞任して新体制を世間に発表したが、肝心な事はなんにも不明さ」

「確かに酷い対応ね!」

魔人フランドールは『肝心な部分を隠蔽しようとする運営の対応』

に少なからず憤りを感じ、両拳を固く握りしめた。

しかし間もなくして握りこぶしを解いて再び口を開いた。

「それで大君主様はそんな彼女に手を差し伸べたんですね」

するとジョンもスマートフォンの電源を切り、黒いスーツのポケットの

内側のポケットにしまいつつもこう返した。

「そうだよ。僕は彼女に手を差し伸べた。

そして彼女に僕の全ての力を与え、その対価として

彼女には唯一絶対神YHVAや大天使、天使達を殺す為に『神殺し』になって貰った。

それを聞いていた魔人フランドールは少々顔を曇らせた。

「それは勿論。山田真帆さんにも大君主様が人間だった頃の

元恋人のシルクさんのいとこの女の子にも。

魔王ホラー・ベルゼビュートの正体を見せたのでしょうか?」

ジョンはそんな魔人フランドールの質問に僅かに動揺しつつも冷静沈着にこう答えた。

「ああ、明かしたよ。捕食や魔戒騎士と

魔戒法師に追い詰められて止む負えず闘う以外。

本来の姿にも捕食する為に口を変化させる事以外は決して人前ではやらないが。」

やがてジョンは急に頭の中である記憶が甦った。

それはやはりシルクのいとこの女の子の目の前で

魔王ホラー・ベルゼビュートに変身して正体を明かした時の記憶だった。

あの時、僕は自分の大きな屋敷の地下から人が無闇に立ち入らない場所で

たった一分間だけ本来の姿に戻った。

僕は本来の姿を見せた後、「自分は人食いの怪物であり。

魔獣ホラーだと言う事、こちら側(バイオ)の世界の住人では無く

真魔界と呼ばれる全く別次元の世界から来た闇の住人だと言う事を

口頭で分かりやすく丁寧に説明した。

彼女は絶叫し、腰が砕けて床に尻もちを付いていて。

顔を真っ青にしてまるで生まれたての子鹿のように全身を激しくブルブルと

震わせて僕の本来の姿を茶色の瞳で見ていた。

彼女はしばらく蛇に睨まれた蛙のように全く動けなくなっていた。

彼女はようやく立ち上がったが、長い間僕に怯えて近づこうともしなかった。

そう!これでいいんだ!これで彼女は安全だ!こうしておけば!

しかし怯えと同時に彼女はそんな僕でも受け入れようと心の中で足掻き続けた。

僕はつい泣きたくなったがようやく堪えた。

それでも人間の姿に時、自然に両眼から涙を流していた。

彼女はあくまでも僕の人間としての心を信じようとしていた。

しかし残念ながら僕はその気持ちに応えられない。

信じようとする僕の想いは僕の魂は。もう!

そこで場面が変わり、同じ場所に今度は別の日本人女性でこれから

僕と契約しようとしている山田真帆の目の前で僕が変身しても全く怯えた表情も

絶叫する事も無くただただ茶色の瞳で僕の本来の姿を見て口元を緩ませて笑っていた。

それから人間の姿に戻り、自室に連れて行った。

自室内で僕は真帆に「自分の名を名乗れ」と声をかけた。

彼女はすんなりと「山田真帆です」と名乗り契約は成立した。

僕そこで我に返ると丁度、魔人フランドールが

ファミリー専用の喫煙室から出て行くところだった。

 

ニューヨーク市内のチェルシー地区のとある日本の焼き肉店。

「ちょっと!御免なさい!仕事場から!」

ジルは焼き肉店の中に設置されているBSAA連絡専用の個室で仕事場に電話した。

「はい!ジル・バレンタインです!まさか?

また魔獣新生多神連合の襲撃事件が?やはりターゲットは……」

「はい!次のターゲットは悪質なアイドルグループG会が

集まっている廃ビルが恐らく魔獣新生多神連合と関係のあると思われる

HCF(ハイ・キャプチャー・フォース)によって全ての出入り口が封鎖され、

更に新型ウィルス兵器の散布が確認されました。

その結果、メンバー達は新型ウィルス兵器に感染した事でプラントデッド(植物ゾンビ)となり、生存中のメンバーを食い殺す酷い状態になっていました。

現在、BSAA特殊部隊とブルーアンブレラ社の特殊部隊が突入し、

プラントデッドを倒し、生存者数名を救出しました。

しかし部屋の奥から魔獣ホラーが出現しました。」

「魔獣ホラー?どうして?まさか?HCFが所有を?」

「不明です。もしかしたらどこかにゲート(門)があったのかも?

しかも魔獣ホラーは『ライゾン』と呼称される大型個体です!

そいつによってパーカとクリス隊長と数名の隊員を除いてほとんどが捕食されました。

両部隊危うく全滅しかけましたがそこに聖ミカエル病院から

脱走したと思われるシェリー・バーキンが現れまして。」

「アシュリーじゃなくてシェリーが?」

「はい!彼女は依然別の個体と戦っていたアシュリー・グラハム

黒い縞模様の赤色の異形の戦士と同様に変身して黒い縞模様の

青色の異形の戦士に変身してパーカとクリス隊長と

協力してライゾンを封印したそうです。

そしてライゾン撃破後、元の人間の姿に戻り意識を失いました。

現在!聖ミカエル病院からBSAA北米支部の医療施設に転院し、

本人にとって不本意でしょうが厳重な監視と軟禁状態にあります。

マツダBSAA代表はジルBSAAの端末機のスピーカーを通して話を続けた。

シェリーさんの血液サンプルから体内に微量に残っているGウィルスと

A型T-エリクサーが遺伝子融合を果たして新種のウィルスとなっていました。

更に詳しく調べています。完全な調査報告が出来たら明日にでもお渡しします。

以上です!せっかく楽しい娘さんや息子さんFISCHRRS(フィッシャーズ)の

皆様の時を邪魔してしまい。すいません。」

「いいんです!これが仕事をする事ですから。それで?

クリスとパーカの特殊部隊はどうやって封印を?」とジル。

「とにかく死傷者は出てしましましたが『ライゾン』の弱点が口内だと

狙撃手のジェフリーさんが見抜き、パーカーとクリス隊員と残り数名の

隊員の一点集中砲火によって口内と腹に致命傷を負わせて弱った隙に

シェリーさんの賢者の石を集束させた鉤爪の一撃で爆死四散しました。」

「そう!じゃ!どうも!」とだけ答えてジルはBSAA端末機の電話を切った。

そしてジルは気分を変えてから戻ろうと外のバルコニーに出て、

夜の空の星空の多数の星々を眺めた。

そこにまた顔を赤くして酒に酔っているシルクのいとこの女の子が出て来た。

シルクのいとこの女の子は真剣な茶色の瞳でジルの青い瞳をしっかりと見た。

やがて彼女は静かに口を開いた。

「ジョン・C・シモンズ。いや魔王ホラー・ベルゼビュートですけど。

彼はその魔王ホラー・ベルゼビュートに憑依されたんですよね?

だから?あの人はあたしと必要以上関わろうとしなかったんですか?」

「そうね……。もう!彼は普通の人間じゃないから……」

「もう!元の人間には戻せないんですか?あの映画の『エクソシスト

みたいに悪魔を追い払えば元の人間に戻るんじゃ?ほら!テレビでもエクソシスト

悪魔を追い払う様子をテレビ番組のスタッフが撮っていたじゃないですか?

彼は本当は優しくて善い人なんです!彼は人食いの怪物になる筈なんかないんです!

きっと人間に戻りないと!本人は思って……」

ジルは徐々にシルクのいとこの女の子の心から流れ出て来る彼への

強い想いに耐えかねてとうとう黙って適当に受け流すつもりがついつい

彼女に魔獣ホラーに関するある残酷な真実を話してしまった。

何故なら彼女の想いに自分は答えられないのだから。

ジルは決意を胸にこう話した。

「それはあくまでもテレビや映画の作り話なのよ。

全てが世間をテレビに食いつかせる為のただの作り話なのよ。

ただのパフォーマンスなの。つまり宣伝なのよ。」

 

(第63楽章に続く)