(最終章)査問委員会

(最終章)査問委員会

 

リー・マーラの余りの迫力に気圧されてブレス保安部長は一歩二歩後退した。

ブレス保安部長はとうとう何も言い出せなくなり、黙り込んでしまった。

「では!それでは公式の取引をしましょう!セキュリティは

今後強化の役に立てましょう!AI(人工知能)アポロとHCF上層部に報告します!

そしてウルフをクラウンジラ復活計画の母親の被検体として提供しましょう!」

「いいぜ!いいぜ!これが公式の取引ってやつさ♪♪」

ミルトンは弾むのような声で答えた。それから取引が成立し、彼はご機嫌になった。

やがてミルトンは反メディア団体ケリヴァーの男女を積んだ大型トラックに

乗り込むよう仲間に指示した。すると仲間のピエロ型宇宙人達は大型トラックに

乗り込むと例のピンク色の先端にパラボラが付いた奇っ怪な銃の引き金を引いた。

そしてトラックの長四角の逃げ場の無い場所でまずは反メディア団体ケリヴァーの

男達を次々とピンク色の綿菓子の繭に変えた。

女性達は黄色の光線を受けて次々と赤い球体が幾つも付いた黄色の恐竜のような

卵の形をした風船に閉じ込めた。トラックの中ではピエロ型宇宙人とゲラゲラと笑う

声とヒャッハーと言う掛け声や「よし!運ぶぞ!」と言う声も聞こえて来た。

そしてトラックの荷台から一列に並んで哀れにもピンク色の綿菓子の繭に男5人を

両手で抱えたピエロ型宇宙人を先頭に赤い球体が幾つも付いた黄色の風船の

中に閉じ込められた女5人が次々とサーカスの

テント型のUFOの中へ運ばれて行った。

「おーっと!忘れるところだった!返すものは返さなきゃな!」

ミルトンは残りのピエロ型宇宙人に命令した。

残りのピエロ型宇宙人はサーカスのテント型のUFOの中に戻った。

残りのピエロ型宇宙人達は黒い球体の付いた赤い風船と緑の球体の付いた黒い風船。

茶色の球体の付いた紫色の風船をサーカスのテント型のUFOの中から運び出した。

それからブレス保安部長はミルトンの指示通り、全ての風船を銃で割った。

すると風船の中に拘束されていたベディズ、アンナ、レイナ、メイが仰向けに

軽く地面に落ちた。全員共通して下腹部が

大きく膨らんでいて妊娠しているようだった。

間違いなくミルトンの可愛い子供達がいるのだろう。

直ぐに運んでちゃんと処置しないと面倒な事になる。

そして直ぐにアッシュ博士率いる医療チームを無線で呼び出した。

ブレス保安部長は無線で彼女達を大至急、HCFセヴァストポリ研究所の

医療施設へ搬送するように頼んだ。駆け付けたアッシュ博士と

医療チームは直ぐに妊婦となったベディズ、アンナ、レイナ。

メイ隊員を白いタンカーに乗せて救急車の中へ運んだ。

女性隊員達を乗せた救急車はHCFの

セヴァストポリ研究所へ向かって走り去って行った。

ミルトンはもう一本のエクレア型の葉巻を口に咥えて金色のライターで火を付けた。

そしてエクレア型の葉巻から白いスモークがモクモクと空へ昇って行った。

ミルトンはゆっくりと手に取り、口から離すとふーつと息を吐いた。

吐き出された大量の煙は空気中をふわふわと漂いゆっくりと消えて行った。

更にミルトンはブレス保安部長にあのマルフォス隊長が持っていたと言う

特殊部隊専用のCOCカメラを投げて寄こした。それはマッドが無くした物だった。

その証拠にちゃんとCDCカメラに『マッド』と言う名前が刻印されていた。

「あの女性隊員を俺がどうしたかはそれに映っているぜ!えーと名前は何だっけな?

レオナ・ポートマンかな?なかなかの上玉だったぜ!久しぶりに最高だった!」

ミルトンは楽しそうに口元を緩ませて下品に笑って見せた。

ブレス保安部長は歯を食いしばり、両拳を固く握りしめた。

鋭い茶色の瞳でミルトンを激しく睨みつけた。

するとブレス保安部長はミルトンの右手の甲に奇妙な赤い模様が見えた。

それは以前、隊員達の間で噂になっていた『静かなる丘』の教団のシンボルで。

確か太陽の聖環だったか?彼は湧き上がっていた怒りを忘れて首を傾げた。

ブレス保安部長はマッドに無言で手渡した。

マッドはブレス保安部長から自分のCDCカメラを受け取ると

また彼が忘れていた怒りが戻って来ない内に胸ポケットにしまった。

「さて!俺達はそろそろ行くぜ!いつもあんがとなー!いつも!

いつもよ!また次の取引の日時は通信で話し合おうじゃないか?

それでは人間想いのブレス保安部長もリー・マーラさんもごきげんよう

松田悠亜さんが産んだクラウンジラ(道化王)の子供の成長の様子を

次に教えてやるぜ!次の取引に楽しい報告が出来るといいなあーつ!!

ガッハハハハハハハハハハハッ!!ガッハハハハハハハハハハッ!!」

ミルトンはまるで悪魔の様に豪快に笑って見せた。

そして踵を返して残り10名のピエロ型宇宙人の仲間達と

共にまた続々とサーカスのテント型UFOの中に乗り込んで行った。

やがて全員が乗り込んだ後、サーカスのテント型UFOは巨大な黄色に輝く

クリスタル型のUFOに変形した後、地上から空高く浮き上がった。

そしてクリスタル型のUFOは月の方角に向かって飛び去った。

ブレス保安部長はさっき湧き上がっていた怒りをようやく思い出した。

彼はリー・マーラや他の隊員が見ているのにも関わらず

足元のブロックをガンガンと八つ当たりに蹴り続けた。

「くそー本当に最悪なピエロ共め!」とブレス保安部長は叫んだ。

「仕方がないすっよ!保安部長!!」とマッド。

「もう!戻りましょう!ここで暴れてもどうしようも」とグーフィ。

「ああ、分かったマルフォス隊長には厳しく!」

「やり過ぎないようにね。きっと彼もショックを受けています!

そのーマルフォス隊長が自分の彼女のレオナを取られた事で!

きっと!それを知ったらー」とウースはマルフォス隊長を気遣うように頼んだ。

しかし頼まれたブレス保安部長は何も答えず不機嫌な表情で

保安部隊のドアを開けて運転席に乗り込んだ。

そしてマッドは保安部隊の車の中でエアにどうなったか報告した。

無線のスピーカーの先の自室からエアはしばらく黙って聞いていた。

「隊長は?明日のHCF査問委員会に招集されるの?」

「そういう事になるな。彼はもう応じているよ。さっき話していたぜ!

明日にはマルフォス隊長の処分が決まるそうだ!あと!

保護されたレオナ達はあのミルトンってやつの子供が全員お腹の中にいてな。

これからアッシュ博士が医療手術室で大急ぎで帝王切開手術の

準備を進めているそうだ。直ぐに始まるみたいだぞ!」

自室でエアは無線機のスピーカーからそれを聞いて顔を真っ青にした。

更に続けて無線からマッドの話し声が聞こえた。

「しかも俺のCDCカメラを使ってバッチリとレオナとあいつが

あれをしてんのを見ちまった。今ここにいる隊員全員が見た。

保安部長には音声が聞こえないように小さくしてね!今は見せない方がいい!」

「その映像は?ブラザー!俺も怒りを共有したい!」

エアの要求にマッドはとても残念そうに言った。

「残念だが。そのみんなで観た後にHCF技術分析班の連中が

CDCカメラを回収しちまって。今、手元に無い。

どうやらHCFの査問委員会の連中がマルフォス隊長の責任を問う際に利用する気さ。

これであいつの責任逃れを嫌でもさせないつもりだ。

今は問題の重要な証拠として厳重に保管されている。悪いが持ち出しはー。

勘弁してくれ!そんな事したら俺まで呼び出されちまう!!」

「そうか仕方がないな!ブラザー!!」

「実際はブレス保安部長がそう言う風に彼らに指示を与えた」

「成程!親父が!見せたくなかったんだなー。」

しかしエアは自分が保安部隊員として。男として。

他の隊員に何があったのか正確な情報を知りたいと彼に熱心に訴えた。

同じ仲間である以上は真実を知る権利があると熱心に主張した。

「まあーそうだろうが。見たところで最悪な気分かも知れんぞ!」

「今回の事件の物的証拠としてHCF技術分析班が押収しちまったのなら。

仕方が無いな。あの技術分析班の連中は全員、情報の管理に小うるさいからな。」

「でも彼らのおかげで大分前の話だが実際、裏切り者のライザー医師の

居場所の特定出来たしな。あいつらは本当に優秀なハッカー集団だ。

CDCカメラの情報はあいつらの扱うパソコンのデータボックスに

暗号化プロティクトで簡単に観られない様になっている。

勿論グーフィも無理だとさ。あれは聖域だからヤバいとか言っていた。

あとはあのミルトン達に被害に遭った女性隊員達のプライバシー保護と

女性の自由の権利だと何とかで男共。いやHCF内の不特定多数の

人物から情報を完全に保護されているようだ。

今じゃ!さっき見たCDCカメラの詳しい情報は口外禁止となっている。

まあー。大体のピエロ宇宙人の事をよく知っている連中なら想像が付くだろうが。

それにさっきマルフォス隊長の査問員会が始まったのと。

あとはミルトンと言うピエロ型宇宙人の子供を腹に宿した女性隊員4名は

アッシュ博士と医療チームで帝王切開が行われて全員無事にミルトンの幼生群を

綺麗に摘出して容態も安定していて、術後の経過も非常に良い様だ。

全員命に別状は無く息て元気だと言う報告をマッドから聞いた。

彼の報告を聞いたエアは安心して思わずベッドの上に座り込んだ。

 

(KILLER KLOWNS MILTON完結)