(第37章)黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)

(第37章)黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)

 

エアを先頭に鳴葉とエイダは彼の後に続いて歩いていた。

3人は無言で細長い上り坂の一直線の道を黙って歩き続けていた。

3人の内、エイダとエアは全く平気だったが鳴葉だけは慣れない

上り坂を昇っているせいか少しハアハア息を切らせていた。

その時、また上り坂の地面にメモが置いてあったので

再びエアは屈んで拾って読み始めた。

「天魔イロウル、『静かなる丘』の土着神に使える天魔よ。

天魔の古き本に記述されたもの。我が神の使いよ。

汝は我が友人にして仕えた外なる神のトリックスター

這い寄る混沌(ニャルラトホテプ)よ。

協力を感謝する。友人としてお礼に知識を与えようぞ!

千の仮面と『オペラ座の怪人』の仮面に。」

「外なる神トリックスター?まさか?あーいつまでいるのか?」

「ちょっと!どうなってんのよ。確かそいつって・・・・」

「今じゃ確かめようが無いし、彼には関わらないようにしましょ」

「賛成!賛成!正気を失いたくないもん!」

エイダと鳴葉はメモの内容を忘れる事にした。しかしエアはメモをしまった。

エアとホワイトフランドールだけはそのメモの内容を忘れないようにした。

3人は長い上り坂を昇り終えると白いタイルに覆われた歩道と電灯の付いた柱。

そして茶色の木が何本かあった。周囲は白い霧に覆われて分かりにくいが。

どうやらかなり広い公園らしい。間も無くしてエアの持っていた

ポケットラジオのスピーカーから激しいノイズ音が聞こえ始めた。

エアは両手でマシンガンを構えて目の前の白い霧をじっと見ていた。

やがて白い霧を左右に手で払い退けて人型のクリーチャーが現れた。

しかもそいつは黄金の三角頭だった。黄金の三角頭は。

彼の素顔は誰にも分らなかった。そして医名性があった。

全身は黄金に輝く装飾品の付いた円形の鎧。胸部は分厚い真っ赤な鎧に覆われていた。

両腕はオレンジ色に輝く分厚い鎧に覆われていた。

両脚には三角形の装飾の付いた靴を履いていた。

更に背中から真っ赤に輝く巨大な無数の剣が集合して出来た翼を4対生やしていた。

しかしすぐに必要無いとでも言うように背中へあっと言う間に全て閉じて収納した。

更に黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)は

まるで何事もなくしかも余裕なのか?

黄金の三角頭は何処からか白い細長い棒を取り出した。

やがてジュッ!と先端にオレンジ色の火が付いた。

黄金の三角頭は右腕の肘に曲げて、右手の指に挟んで持っている

煙草を頭部の黄金の三角形の巨大な兜の下部から差し入れた。

そして黄金の三角頭は多分、咥えてスーツ!と息を吸った。

ジュッ!と音を立てて煙草の先端がオレンジ色に輝いた。

黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)はまた右腕の肘をゆっくり

と伸ばして煙草を下部の口から離した。

そしてゆっくりと口からフーッ!と息を吐き、煙を吐き出した。

とても旨そうに煙草を吸っていた。

更にエアは良く観察すると三角形の兜は計十四面体の複雑な三角錐状で

一見すると左右対称に見えるが兜の側面は瘤の様に隆起していて下面右下と右下の頬に

当たる部分には天秤の模様があった。

またエアの事前の情報によれば本来『赤い三角頭』

の怪物はかつてトルーカー刑務所で行われた刺殺刑の際に槍で受刑者を

刺殺する処刑執行人だったらしい。

でもあの黄金の三角頭は一体?何故?僕の前に姿を現したのだろう。

こいつはまた煙草を吸った後。

指でピンと煙草を遠くへ弾き飛ばした。

それからゆっくりと右腕を降ろした。

続けて黄金の三角頭はエアと真正面から向き合った。

エアは直ぐにエイダと鳴葉、ホワイトフランドールを

できるだけ遠くの木の陰にでも隠れさせた。

そしてエアは一人で黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)と対峙した。

その時、エアは黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)から

途轍もない威圧感と自分の賢者の石の力を軽く上回る程の凄まじい強大な力を感じた。

そしてただ対峙して正面から向き合って見ているだけなのに無意識の内に心の底から

『勝てる気がしない』と言う感情が沸き起こった。

エアは凄まじい賢者の石と威圧感に圧倒されて思わず一歩二歩と後退した。

無意識の内に黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)が異常に巨大に見えた。

明らかに自分はビビっていた。エアはその感情をまるで誤魔化すように

再びあのアルミケラ病院のツーバック戦のように大きく獣のように吠えた。

同時に胸部の中央からバリッ!と音を立てて真っ赤に輝く両刃の長剣が現れた。

エアは右手で剣の柄の部分を掴んだ。それから瞬時に引き抜いた。

真っ赤に輝く両刃の長剣は自らの心臓の筋組織で作られている為、

剣全体がドクンドクンと脈打つように動いていた。

その様子を木の陰で見ていた鳴葉は目を丸くしてぽかんと口を開けて茫然と見ていた。

エイダも木の陰から鳴葉に「あれは心臓の筋肉で出来ているの」と説明した。

「まさか?本当に噂通りね」と驚いた表情で

ホワイトフランドールは木の陰から呟いた。

エア・マドセンと黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)

との一対一の対決が始まろうとしていた。

黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)は武器を一切持たず

素手で彼と戦おうとしていた。エアは「舐めやがって!」と精一杯の声で

黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)に向かって叫んだ。

しかし黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)は無反応だった。

特に何の感情もリアクションも返さなかった。

ただただ静かにその場に佇んでいた。エアは「クソっ!」と舌打ちした。

彼はミカエルソードを構えた。続けてエアはドン!と両足で左右の

地面の土を蹴り飛ばした。エアは全速力で前進した。

黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)は回避する素振りを一切見せず

ただ不気味にその場に佇んでいた。なんせ何の防御もしなかった。

両腕を組んでガードさえも。エアは『ミカエルソード』の鋭利な先端を

黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)の腹部に向かってドスッと

鈍い音を立てて深々と突き刺した。

しばらく辺りに沈黙が長い間、流れていた。

何も起こらなかった。

あのアルミケラ病院の時のツーバック戦のような

フラッシュバックも黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)の

記憶すら自分の頭の中に流れ込んで来なかった。

目の前で腹部にミカエルソードを突き刺したまま何事も

起こらなかったように立っていた。エアは激しく戸惑い、動揺した。

そして間近で黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)の

あの途轍もない威圧感と凄まじい賢者の石の力を全身で感じ、大きく怯んだ。

そしてミカエルソードを引き抜いてエアは後退しようとした。


Kamen Rider Kuuga OST [CD1] 20. Hakugeki M-100

黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)はゆっくりと右手でガシッ!

とミカエルソードの真っ赤に輝く刀身を黄金の5本指でしっかりと掴んだ。

黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)は「小癪な!」とつぶやいた。

黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)はミカエルソードの

賢者の石の力を封殺していた。

右手にグッ!と力を込めた。

同時に真っ赤に輝くミカエルソードの刀身は全体に

一気に幾つもの蜘蛛の巣状のヒビが入り、やがてバリイン!

とガラスが割れる音と共に粉々に砕け散った。

黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)の腹に刺さった

ミカエルソードの刀身は完全に消滅して無残にも剣の握る柄だけが残された。

「あ・ああ・・・・うわっ!わっ!あっ!」とエアは初めて言い知れぬ恐怖を感じた。

エアは無残にも柄だけ残されたミカエルソードを目を丸くして額から冷や汗を流し、

真っ青になった。これは!ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!

エアは思わずミカエルソードの柄を投げ捨てて後退した。

勿論、ハンドガンやマシンガンで攻撃を何度も試みた。

しかし黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)に撃ち続けた

全ての弾丸は分厚い真っ赤な鎧と皮膚に弾き返されて傷一つも負っていなかった。

エアは恐怖のあまり悲鳴を上げた。

そしてついうっかりハンドガンをマシンガンを全てからに

なるまで撃ち尽くしかけて寸での所で我に返った。

「ヤバい!こいつに銃弾は効かないのに!」とつぶやいた。

銃も全く効かないのに打ち尽くしてどーするよ!とエアは心の中で叫んだ。

黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)はゆっくりゆっくり歩を進めて前進した。

エアは距離と保つ為、黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング))

から後退して行った。

すると黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)は

「武器はこう使え!」と言った。

「武器とは?」とエアが訪ねた。

すると黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)はこう答えた。

「賢者の石の力だ!」と答えた。

次の瞬間、黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)のあの黄金の分厚い鎧に

覆われた両脚と三角形の装飾の付いた靴に強大な賢者の石の力が集束した。

バリバリと言う電気音と共に賢者の石の力を帯びた真っ赤な電撃が

黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)の黄金の分厚い鎧に

覆われた両脚と三角形の装飾の付いた靴を包み込んだ。

更にそれはどんどん強くなって行った。

そして電撃が強くなる度にパリパチ!と電気音がより一層大きくなった。

 

(第38章に続く)